258話



 体育祭が近づくにつれ、学校内はどんどん体育祭ムードになっていた。

 体育祭の組み分けはクラスごとに三つに分かれて競われる。

 赤軍、青軍、黄軍の三つに分かれて行われる体育祭は毎年かなり盛り上がる。

 誠実たち一年生は初めての体育祭でわからないことも多い。

 そんな中、誠実たち一年二組の生徒たちはというと……。


「「「死ねぇぇぇぇぇ!!」」」


「クソッ! こいつら本気だ!!」


「なんでお前ばっかりぃぃぃ!!」


「このラブコメ漫画の主人公がぁぁぁぁぁぁ!!」


 男子達が誠実を取り囲み、今にも襲い掛かりそうな雰囲気だった。

 

「はぁ……うちの男子は……」


「アホばっかね」


 そんな様子を見て、女子たちは呆れていた。

 事の発端は、男女混合二人三脚の出場選手を決めていたところから始まる。

 息の合ったペアの方が良いのでは無いかという話になり、男女で仲の良い同士でペアを組むことになったのだが……。


「男子とペアなんて嫌よ! どうせどさくさで変なところ触る気でしょ!」


「はぁ!? 誰がお前らの貧相な体なんて触るか! 触るんならグラビアアイドルみたいな凹凸のはっきりした子が良いわ!!」


「なんですって!!」


「なんだよぉ!」


 こんな感じで喧嘩が始まってしまい、一向に出場選手が決まらなかった。

 そんな中、沙耶香が……。


「わ、私は……誠実君となら出ても……良いかも……」


「へ?」


 そう沙耶香が言った事により、教室内の男子生徒は誠実に嫉妬。

 クラスの男子全員で誠実を血祭に上げようという話になり、現在に至っている。


「「「「「「殺せ! 殺せ! 殺せぇぇぇぇ!!」」」」」


「待て! なんでそうなる!!」


「お前ばっかりがモテるからだよ!」


「我々はそれが憎い!!」


「俺達の前橋ちゃんをよくもぉぉぉ!!」


「お前ら人の色恋になんでそんな首を突っ込むんだよ!!」


「「「羨ましいからだよ!!」」」


(おい! お前ら正直すぎるだろ! 女子がすごい目でお前らを見てるぞ!!)


 誠実にじりじりと近づくクラスの男子達、そんな男子達の中には武司がノリで参加しており、一番ノリノリで誠実を血祭に上げようとしている。


「安心しろ誠実、骨は拾ってちゃんと埋めてやる」


「結局殺してんじゃねーかよ!!」


 一方で健だけはため息を吐きながら、スマホを弄って誠実の様子を傍観していた。


「お前ら、遺体はちゃんと片付けろよ」


「助けろよ!!」


 健は全く助ける気はなく、誠実の言葉には耳も貸さなかった。

 そんな中、担任である小形が教室に戻ってきたことで、誠実は一命をとりとめた。


「全く……お前らは何をやってんだか……」


 ため息を吐き、自分のクラスの惨状を見る小形。

 このクラスをあと半年見ていけるのか、少し心配になる小形だった。


「はぁ……ひどい目にあった……」


「ごめんね……私のせいで……」


「い、いや沙耶香のせいじゃないよ」


「そうだぜ、全部この馬鹿のせいだ」


「あぁ、前橋が気にすることは何もない」


「お前らが言うんじゃねぇよ……」


 昼休み、誠実の机の周りにはいつも通り武司と健に加えて、前橋が居た。

 先ほどの二人三脚の人選で起きた出来事に責任を感じている沙耶香。

 そんな沙耶香に誠実は優しくそう言うが、他の武司と健にはきつめに言う誠実。


「はぁ、体育祭もあるし……今日から生徒会の手伝いだし……勘弁してほしいなぁ~」


「あぁ、そういえば今日からか」


「まぁ、頑張れ」


「お前ら他人事だと思いやがって……」


「え? 生徒会の手伝い?」


「あぁ、沙耶香には言ってなかったか……実は色々あって生徒会の手伝いをすることになっちゃって……」


「生徒会って……ほ、蓬清先輩が居る?」


「え? あぁ……それしかなくないか?」


「ふーん……」


「な、なんだ? どうかしたか?」


「別に……」


 沙耶香にそう言うと、沙耶香は不満そうな顔で誠実の顔を見ていた。

 

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