生徒会と学校行事
257話
*
夏休みが明けた二学期はイベントが盛りだくさんだ。
体育祭に文化祭、そして学園別には二年生の修学旅行、一年生の林間学校とイベント盛りだくさんである。
そんなイベント目白押しで生徒は浮足立っているが、生徒たちにとっても忙しい時期でもあった。
そんな中で一番忙しいのは、この生徒会役員である。
「あぁぁぁ!! 終わらない!」
「何を騒いでるんすか? 会長」
生徒会長を務める、三年の松山徹(まつやま とおる)は生徒会室の椅子に座って書類の山を前に叫んでいた。
ツンツンした頭に目は開いているのか閉じているのかわからない。
本当にこの人が生徒会長?
初めて徹を会長だと知った生徒はみんなそう言った。
そんな徹を呆れた様子で見ているのは同じく三年の宮田怜子(みやた れいこ)だ。
フレームの無い眼鏡を掛けた女子生徒で、長い黒髪をポニーテールにして束ねている。
宮田は会計を担当しており、また新しい書類を徹の前に出す。
「えぇ!? まだ増えるのぉ~」
「諦めて下さい会長、この時期は毎年大変なんです」
「うぅ~なんだよぉ~怜子ちゃんまで俺をいじめるのかよぉ~」
「これは会長の仕事なんですから、早くしてください。次の仕事が詰まってるんです」
「うぅ~」
徹と怜子が話をしていると、その様子を見て副会長である栞が笑みを浮かべる。
「ふふっ、お二人は本当に仲がよろしいですね」
「会長は宮田先輩がいないとダメだからな」
栞にそう返したのは、庶務の今川侑大(いまがわ ゆうだい)だ。
侑大は栞と同じ二年生で整った顔立ちをしており、身長が高い。
侑大は仕事を終え、スマホを操作しながら話に混ざっていた。
「二人とも、こんなのと仲が良いなんて言わないで貰える? アホがうつるわ」
「うつるか! はぁ~侑大~手伝ってくれよぉ~」
「もう半分手伝ったっすよ、後は先輩が自分でなんとかしてくださいっす」
「うぅ~じゃあ栞ちゃ~ん」
「うふふ、会長さん、早く終わらせないと、また新しい資料が来ますよ」
「そんなぁ~」
徹はため息を吐きながら、仕方なく書類に目を通す。
この学校の生徒会はこの四名で成り立っている。
真面目で優秀な会計に、次期生徒会長とも言われる副会長、更に仕事が早い出来る男と評判の庶務、これらの優秀な三人が一人のダメ会長を支えているのである。
「はぁ~そういえば栞ちゃん、明日から一年生の子が手伝いに来るんだっけ?」
「はい会長、彼には空席になっていた生徒会の書記に一時的になっていただこうかと思っています」
「あぁ、確か一年で有名な子だよね? 確か同じ女の子に百回近く告白したって言う」
「あぁ、それなら俺も知ってるっす、二年でも話題になってましたよ」
「それなら私も知っているわ、彼の噂は三年の教室まで広まってきていたから。でもそんな子を入れて大丈夫なの?」
「はい、私が保証します。誠実君はすごく良い子ですから」
「まぁ、栞ちゃんがそう言うなら問題はなさそうだけど……」
「ま、会長のアホさ加減についてこれるかが問題っすね」
「おい侑大、誰がアホだって?」
「貴方ですよ会長」
「冷静に言わないでくれよ……怜子ちゃん」
「ともかく、明日は誠実君が来ますし、体育祭もありますし、色々と忙しくなりますよ」
「確かに……はぁ~会長やめたい……」
「じゃあなんで会長になったのよ……」
生徒会室では、明日からやって来る一年生の話で盛り上がっていた。
あと数カ月で今期の生徒会は終わってしまう。
会長は明日からやって来る誠実に少し期待を寄せていた。
栞が紹介してきた一年生、優秀な生徒からの紹介に期待するのは当たり前だ。
しかし、会長の期待は少し違っていた。
それは一年生という、いままであまり生徒会に接点のなかった学年の生徒が生徒会に仮とは言え加入するという事への期待であり、新しい世代への期待でもあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます