256話

「三人入部ってことでお願いします!」


「え?」


「え?」


 誠実の言葉に栞と暁美の二人は誠実の持っていた紙を受け取り、書かれている内容を読む。

 誠実達三人が栞に提出したのは、新聞部への入部届だった。

  

「え? 入部するんですか? 誠実君たちが?」


「はい、俺達部活入ってませんし!」


「どうせ文化部で楽そうだし」


「面接なんかでも聞かれるらしいしな」


「そんな感じで、俺ら三人が入るので新聞部は部に昇格できますよね?」


「あんたら……」


 誠実達の言葉に暁美は笑みをこぼす。

 栞は誠実達の入部届を受け取り、暁美に尋ねる。


「暁美、彼らを部員として認めるんですか? 入部届には部長のサインが必要ですけど」


「……ありがとう」


 暁美はそう言ってうなずき、三人分の入部届にサインをした。

 

「そうなると、部室はあのまま残すしかありませんね。まぁ、急ぎで必要なわけではないので、良いですけど」


「良かったっすねぇ! 吉田先輩!」


「これで新聞部は存続だな」


「まぁ、報酬をもらっちまったんだ。これくらいはする」


 これで丸く収まり一件落着。

 そう誠実が思っていると、栞が笑顔で誠実に言う。


「そういえば、誠実君を生徒会に貸して下さる件、会長も許可を出して下さいましたわ」


「え?」


「あら? お忘れですか? 二週間期間を延ばす約束と引き換えに、誠実訓を書記として貸していただくと言う話です」


「あ……」


「「「どうぞどうぞ」」」


「おい、お前ら!!」


「それでは、さっそく明日からお願いしますね」


「え……えぇ……」


 誠実はすっかり新聞部の事に夢中で、生徒会の件を忘れていた。

 まさか、新聞部の次は生徒会の仕事を手伝わされるなんてと思いながら、誠実は深いため息を吐いた。


「はぁ……」


 生徒会室からの帰り道、誠実たち三人と暁美は学校の校門前で話をしていた。


「そういえばそんな話になってたよな……」


「まぁ、お前も報酬につられて引き受けたんだ。諦めて行ってこい」


「約束は守らないとな」


「お前ら……他人事だと思いやがって……」


 誠実がそんな感じでうなだれていると、明美が口を開いた。


「ありがとうね、私の為に色々してくれて」


「え? あぁまぁ報酬もらいましたし」


「俺達も暇だしな」


「本物の部員が集まるまでだが、名前を貸しておく」


「まぁ、たまに手伝ってほしい時とかは言ってください」


「ありがとう……この恩はいずれ必ず返すわ」


「別に気にしなくていいっすよ」


「俺らも好きでやったんだし」


「三年間帰宅部よりはマシだしな」


「じゃ、俺たちはこれで」


「お疲れっすー」


 誠実たちはそう言って、暁美に別れを告げて帰って行った。

 三人の後姿を見ながら、暁美は一人言を呟く。


「騒がしいけど、頼りになる三人ね」


 暁美はそう言い、新しい記事のテーマを考え始めた。


「さぁ! 明日からバリバリ書くわよぉ~」


 暁美の中で新しい記事のタイトルは固まりつつあった。

 それはあの三人をテーマ―にした記事だ。

 

「題名はそうね……『意外と頼りになる三バカトリオ』にしておこうかしら」


 暁美は鼻歌を歌いがら自宅に帰って行った。

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