253話

 誠実たちはこの一週間の結果を踏まえ、帰宅部だけではなく、文化部に所属している二年生や一年生にも声をかけ始めた。

 

「え? 新聞部? いや、俺は生物部で……」


「どうせ生物部って言ってもそこまで大した活動してないだろ! なぁ、頼むよ!」


「頼み事をされてるのに、こんなに不快になったのは初めてだよ」


「てか、お前¥は幽霊部員だろ?」


「まぁ、一応在籍してるだけだけど……嫌だよ」


「なんでだ?」


「家に帰って僕は画面越しに第二の学園生活を送らなきゃいけないからね!」


「それ、ただの恋愛シュミレーションゲームだろ……」


「うるさぁぁぁぁい! 僕はそれで幸せなんだ!」


「わかるぜ、その気持ち」


「「おい」」


 思わず勧誘していた男子生徒に賛同する武司。

 そんな武司に誠実と健がツッコミを入れ、武司は我に返った。


「まぁ、そう言わずに名前だけでも頼むよ」


「いや、もう生物部に名前貸してるし、悪いけど他を当たってくれよ」


「あ、おいモブ!!」


「誰がモブだ!!」


 生物部の男子生徒はそのまま去ってしまった。


「仕方ない、気を取り直して次に行こう!」


「武司、お前もっとまともな勧誘できないのか?」


「え? 完璧だろ?」


「バカか、頼みごとしてるのに相手を貶してどうする!」


「え? 俺はただ事実を言っただけだろ?」


「これじゃあ、勧誘できないわけだ」


「そう言う件も大概だけどな……」


「む? なんでだ」


「自分も胸に聞いてみろ……」


 誠実たちの勧誘活動はやっぱりうまくいかなかった。

 武司は先ほどのような感じで、相手を怒らせてしまう。

 健の場合は女子に声を掛けるとあからさまに不機嫌になり、最終的には女子を貶して逃げられてしまう。


「お前ら……もっとまともに勧誘できないのか?」


「そう言うお前はどうなんだよ」


「そうだ、俺たちに散々大きな口を叩いたんだ。一人くらいは勧誘してくれるんだろうな?」


「仕方ねーな、見てろよ」


 誠実は二人にそう言って、別な男子生徒に声をかけ始めた。


「ねぇ君、新聞部に興味ない?」


「え? 新聞部? 僕、もう写真部に入ってるけど」


「じゃあ、丁度良い、新聞部で使う写真を君が撮ってくれないか? 記事は部長が書くから」


「新聞に使う写真か……少し興味あるな……」


「だろ! なんだったら部を掛け持ちでも良いし、暇な時に手伝ってくれれば良いからさ!」


「うーん……確かに写真部はあんまり活動もないし……君は新聞部の部員なの?」


「え? 違うよ」


「え? じゃあなんで僕を新聞部に?」


「それは、新聞部の部長に脅されて、部員を集めてるんだ。ゴシップ記事で脅されて、今ホモ疑惑が立っててさ、あははは困っちゃうよね?」


「ごめんやっぱりいいや、他を当たって」


 誠実が言い終えると、写真部の男子生徒はそのまま駆け足でどこかに行ってしまった。


「あれ? おかしいなぁ~」


「いや、おかしいなぁ~じゃねぇよ」


「おまえもどんな勧誘してんだよ、勧誘する気ある?」


「お前らよりはマシだろうが!!」


 こんな感じで本当に大丈夫なのだろうか?

 三人はそんな事を考えながら、勧誘活動を続けた。



「何やってるんだろ?」


 私、山瀬綺凛は放課後に廊下で騒ぐ三人の男子生徒を見ながら、そんな事を呟いていた。

 その三人は私の友人で良く知っている人たちだ。

 何やら最近、新聞部の勧誘をしていると噂で聞いたけど、なんでそんな事をしているんだろう?


「綺凛~! 帰ろ~」


「あ、うん。良いよ」


「あれ? 誠実君たちじゃん、またなんか馬鹿なことやってるの?」


「うん、新聞部の勧誘みたいだよ」


 この子は私の友人の笹原美沙。

 帰りの準備が整ったらしく、私の元へやって来た。

 ちなみにこの子はあの三人の中の一人に恋をしている。

 

「新聞部? なんで誠実君たちが勧誘なんてしてるんだろ?」


「あの三人の事だから、何か理由がありそうだけど……」


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