251話
「全く集まらないな」
「あぁ、興味も示さない」
「まぁ、部活に入るような奴は、もう部活に入ってるだろ」
この一週間、誠実達は勧誘活動を続けてきたが、成果は一切上がらなかった。
大抵の生徒で部活に入っていない生徒は、放課後にバイトをしていたり、他に用事があったり、それなりに理由がある生徒が多かった。
「もうこれで、帰宅部の生徒にはほぼ声を掛けたんじゃないのか?」
「あぁ、多分な」
「しっかし武司、お前のこのリストすげーな。情報が正確過ぎて逆にこえーよ」
誠実たちは生徒に声をかける際に、武司の作ったこの学校の生徒の一覧リストを見ながら声をかけていた。
このリストにはその人物の元の中学、所属する部活動、所属する委員会、誰と仲が良いかなどが事細かに記されていた。
「入学してから今までコツコツ情報を集めて作ったからな。まさかこんな形で使う事になるとは思わなかったが」
「よほど暇だったんだな」
「だろうな、その情報収集能力をなぜ他の事に生かさないのか……」
「うるせぇな! 別にいいだろ!」
誠実たちが放課後の教室でそんな話をしていると、エプロン姿の沙耶香が教室に入って来た。
「あれ? 誠実君たちまだ居たの?」
「あ、沙耶香」
「前橋は部活か?」
「うん、今みんなでアップルパイ作ってるの」
「あぁ、だから今日リンゴを持ってきてたのか」
「うん、皆も食べる?」
「皆? 誠実じゃなくてか?」
「え! あ、いや! 誠実君にはもちろん食べてほしいけど……武田君や古沢君も
い、一緒だよ!」
からかってきた武司に沙耶香は顔を赤くしながらそう言う。
「はぁ~いいねぇ~誠実はモテて……」
「う、うるせぇな!」
「前橋も大変だな、こいつが馬鹿なせいで苦労してるだろ?」
「うむ、誠実がアホなせいで苦労が絶えないだろう」
「まぁね、でも少し慣れてきた」
「あれ? 沙耶香さん?」
沙耶香は教室に忘れ物をしたらしく、取りに戻ってきたらしい。
誠実たちはそんな沙耶香にダメ元で新聞部に興味がありそうな子がいないかを聞いてみた。
「え? 新聞部?」
「あぁ、興味ありそうな子とか居ないか?」
「うーん……そういう子は居ないかな?」
「やっぱりか」
「まぁ、知ってたことだがな」
「もう諦めるべきかもな」
「そういえば三人共、最近新聞部の勧誘活動してるけど、なんでそんな事してるの?」
「あぁ、まぁ色々あってな」
「前橋の知り合いで興味があるやつがいたら教えてくれ」
「まぁいいけど……もしかして誠実君……」
「え? 何?」
「また山瀬さん絡みで何かしてるわけじゃないよね?」
「え!?」
ジト目でジーっと誠実を見つめる沙耶香。
そんな沙耶香の質問に誠実は冷や汗をかく。
流石に綺凛の写真目当てで勧誘活動を手伝っているとは言えない。
「ち、違うよ」
「本当に?」
「ほ、本当だよ……」
「そう……なら良いけど」
誠実の言葉に沙耶香はそうは言ったが、納得している感じでは無かった。
「そういえば前橋、戻らなくて良いのか?」
「あ! そうだ! 早く戻らないと! 三人共じゃあね! アップルパイは明日上げるからぁ~!」
沙耶香はそう言って、教室を後にしていった。
残された誠実たちも今日はこの辺にして帰ろうという事になり、誠実たちも教室を後にした。
「にしても、吉田先輩はなんで新聞部を復活させたいんだろうな」
「一人でも新聞作ってたし、正直部じゃなくてもよさそうだけどな」
「色々金がかかるから、部費が欲しいのだろう」
そんな話をしながら、三人が廊下を歩いていると突然武司が声を上げた。
「あ! やべっ!」
「どうした?」
「新聞部の部室に生徒リストの一部を忘れてきちまった!」
「あぁ、なんだ」
「どうせ一部だろ」
「アホ! 一部は一部でも女子のリストだぞ!!」
「「それは大変だ」」
女子のリストとは、この学校の女子生徒のリストなのだが一部男子とは作りが異なっていた。
それは、女子の方のリストにはランキングが付いているという事だ。
武司が独自の見解と男子からの意見を取り入れて作ったその表は女子にはバレていない。
バレれば女子から大顰蹙(だいひんしゅく)をかってしまう。
まさにパンドラの箱だ。
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