249話

「そうですが、これは以前から決まっていた事なんです」


「でも、まだ吉田先輩は諦めてませんよ!」


「そ、そうだ! このまま新聞部が無くなったら……俺が女の子を紹介してもらえなくなります!」


「そこかよ」


 武司の言葉に誠実は思わずツッコミを入れる。

 栞は言葉の意味が分からず、首を傾げて言葉を続ける。


「そうでしたね、そういえば誠実君たちはまだ一年生、去年の新聞部を知らなかったんですね」


「え? 去年の新聞部?」


「一体何があったんですか?」


「新聞部は度重なる過激な記事の執筆をし、一部生徒からかなりの反感をかっていたんです」


「過激な記事?」


「一体どんな内容なんですか?」


「何を言ってるのよ! あの記事は私たちの汗と涙の結晶なのよ!」


 それまで一言も口を聞かなかった暁美が、急に口を開いた。

 一体どっちが本当の事を言っているのだろうか?

 誠実は栞の話の続きを聞く。


「まぁ、良く言いますね。私の事を記事したくせに」


「別に嘘は書いてないもん!」


「へぇ~それではどうして題名は『笑顔の裏には悪魔の笑み? 迫る! 学園一の美少女! 蓬清栞の淫らな学園生活!』だったのかしら?」


「良い題名じゃない」


「いや、どこがだよ」


「AVのタイトルかと思った」


 胸を張って言う暁美に誠実と武司はため息を交じりにそう言う。

 

「な! なんでよ! この記事、張り出した瞬間、人気で誰かが剥がしていったんだからね!」


「いや、そりゃあ栞先輩も怒りますよ」


「これは吉田先輩が悪いな」


「あったぞ、その時の記事だ」


 健は部屋の奥から過去の新聞部の記事をまとめた物を取り出し、誠実と健に見せる。


「見てもいいですが、真に受けないでください。新聞部の方々の情報はすべてデマですので」


「なんですって! そんな事無いわよ! 栞! あんたは昔っから私を目の敵にしてぇ~」


 いがみ合う栞と暁美。

 この二人は仲が悪いのだろうかと思いながら、誠実たちは記事を見る。


「えっと何々……蓬清栞は学園中のイケメンをたぶらかし、告白してきたところを振って快感を得ている……え、栞先輩……」


「せ、誠実君! 違いますから! 私はそんなことは致しません!」


 誠実は記事を見て驚ろき、栞の方を見る。

 栞は慌てた様子で誠実に誤解であると説明する。


「わかってますよ、先輩はそんなことをするような人じゃありません」


「誠実君……」


 誠実の言葉に頬を赤く染める栞。

 それを見た朱美は別な記事を持ってきて、誠実に見せる。


「伊敷君! この記事なんて面白いわよ!」


「え? なんですかこれ? 『副生徒会長に任命された美少女、蓬清栞の油断した姿』?」


「あ、暁美! なんでその記事をまだ持っているのですか! 誠実君! その記事を早く返してください!!」


「え? 何かあるんですか? この記事?」


「な、何もありません! 良いから早くコッチに渡してください!」


「伊敷君! 下の写真を見て!」


「写真?」


 暁美にそう言われ、気になった誠実は記事の下の写真に目を移す。

 すると、そこには机で眠る栞の写真が貼ってあった。


「あぁ……栞先輩も居眠りとかあるんですね」


「ち、違うんです! その時は少し疲れていて……」


 顔を真っ赤にさせながら、栞は誠実にブツブツ言っていた。

 誠実はなんだか栞が可哀想になり、記事を栞に渡した。


「も、もう怒りました……明日! 部室を明け渡していただきます!」


「そ、そんな急に!? 栞! あんたは毎回いきなり物を言いすぎなのよ!」


「私はずっと前から告知していました! 聞いていなかったのは暁美の方でしょ!」


「うぅ~……あんたらも何か言ってやりなさい!」


 暁美はそう言って誠実たち三人に助けを求める。


「いや、なんか潰れて当たり前な気がしてきた」


「考えてみれば、俺たちもこの人の書いた記事のせいでこんな目にあってるんだよな?」


「どうでも良いが帰っていいか?」


「あ、あんたらねぇ!! しかも一人帰ろうとしてるし!」

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