248話
暁美の提案を全力で拒否する誠実達三人。
暁美は少し不服そうな顔をしながら話を続ける。
「手っ取り早く部員が欲しいなら、勧誘してきたらいいだろ?」
「でも、もう部活の勧誘ってとっくに終わってるだろ? 今更こんな辛気臭い部に入るやついるか?」
「というか、なんで春に先輩は勧誘をしなかったんだ? 勧誘すれば少しは興味を持つ奴が居ると思うが」
「私だって勧誘したわよ、でも一年生の多くはもう既に入る部を決めてるし、文化部に入る子も美術部とか写真部とかに行っちゃって、新聞部なんかっ見向きもされなかったわよ」
「うーん、そうなんだ……」
「一人くらい入部して来てもよさそうだけどな……」
「む? ちょっと待て、そもそも俺たちはこの一件で新聞部の存在を知ったよな? もしかして、もともと認知されてないんじゃないか?」
「まぁ、それもあるでしょうね、部と違って愛好会は部活動紹介とかさせてもらえないし」
「もしかしたら今から勧誘に行けば、一人二人は勧誘出来るかもしれないぞ!」
「でも、どうやって部活に入ってないやつを見つけるんだよ?」
「あぁーそれもそうだ……」
「一人一人聞いてくしかないな……確か部に昇格するには、あと何人必要なんだっけ?」
「部に昇格するには、最低でも部長を含めて部員が四人は必要だから、あと三人ね」
「まぁ、じっとしてても始まらないし、今からちょっと言って見るか」
誠実たちは相談し、さっそく新聞部の勧誘活動を始めた。
とりあえず校内に残っている、部活をしていない暇そうな生徒に声をかけてみることにした。
しかし、すでに放課後で何もない生徒は帰っているということもあり、興味を持つ生徒は全くいなかった。
「ねぇねぇ、新聞部とか興味ない?」
「いや、別に興味ないけど……」
こんな感じの流れで断られるばかりだった。
しかし、健が勧誘をすると。
「すまない、新聞部に興味はないか?」
「え! ふ、古沢君? 新聞部ですか? 興味あります! あと彼女は居ますか!?」
「………」
声を掛けた女子生徒にそう言われ、明らかに新聞部よりも健に興味がある感じだった。
それを見た武司は涙を流して悔しがっていた。
「なんでお前だけそんな感じなんだよぉ~! 俺なんてゴミを見る目で見られるぞ!」
「まぁ、お前は生ごみと大差ないからな……」
「酷い!!」
そんな感じで勧誘活動は全く進展しなかった。
何の成果もなく、誠実たち三人は新聞部の部室に戻った。
すると、そこには何故か栞が来ていた。
「あれ? 栞先輩?」
「あら? 誠実君? こんな所で何を?」
どうやら栞は暁美と何かを話している様子だった。
暁美が眉間にしわを寄せている様子を見ると、どうやらそこまでいい話ではなさそうだ。
「いや、ちょっと色々あって……」
(言えない……山瀬さんの写真の為に写真部を手伝っているなんて、口が裂けても言えない……)
誠実がそんな事を考えながら、冷や汗を掻いていると、後ろの健が栞に尋ねる。
「先輩は何をしにきたんだ?」
「あぁ、私はこれを新聞愛好会の吉田さんに持ってきたんです」
栞はそう言いながら健に紙を渡した。
そこには大きく『愛好会制度の中止について』と書かれていた。
「今年度からうちの学校は愛好会制度がなくなりました、理由は部活動が増え、部の活動をする場所が足りていないからです」
「な、なるほど……ってことはもしかして……」
「この新聞愛好会に愛好会としての活動停止と、この部屋の明け渡しをお願いにきました」
「「「え!?」」」
驚く誠実たち三人。
そんな話は全く聞いていなかった。
「ま、待って下さい! 新聞部って、それなりに歴史の長い部だったんじゃないんですか?」
「えぇ、学校創立からある部ですので」
「だ、だったらそんな簡単に潰さなくても……」
誠実と武司が栞にそう尋ねる。
暁美は難しい顔でただ話を聞いているだけだった。
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