235話
結局誠実は恵理に昼ご飯を作る羽目になってしまった。
「なんで俺がこんな事を……」
「まぁまぁ、良いじゃん良いじゃん、女子大生の部屋なんてそう簡単に入れるものじゃないぞぉ~」
「女子大生……ねぇ……」
「おやぁ~? なんだいその目は」
「いえ……別に……」
「もう、こんなに美人なお姉さんと部屋で二人きりなんて滅多にないわよ」
「自分で自分の事を美人って言う人初めて見ましたよ」
「冷たいなぁ~、そこは美人ですよとか言ってくれても良いじゃん!」
「まぁ、容姿だけは良いんじゃないですか?」
「え、他は?」
「………」
「黙らないでよ!!」
誠実と恵理が昼ご飯を食べ終えると、既に時刻は13時を回っていた。
もう半日が終わってしまった。
誠実は食器をかたずけながら、そんな事を考えてため息を吐く。
「ん? どうした少年? ため息なんて吐いて」
「いえ、貴重な夏休み最後の日に俺は一体何をやっているんだろうなって、思っただけですよ……」
「夏休みねぇ~、大学に入ればもう一カ月あるから、それまでは一カ月で我慢しなさ~い」
「羨ましいなぁ~俺も早く大学生になりたいです」
「まだ高校に入ったばっかりでしょうが。私からしたら高校生の方が何倍も羨ましく思えるわよ?」
「そうですか?」
「えぇ、放課後に友達と遊んだり、体育祭とか文化祭とか! それに好きな人と一緒に過ごしたり!」
「言っておきますけど、そんな夢みたいな楽しい学園ライフなんて絶対にありませんから」
「そうなのよね……だから後悔が無いように遊んでおくべきだったのよね……」
「リアルに凹まないでください」
高校時代に何かあったのだろうか?
そんな事を考えながら、誠実は食器を洗い終える。
「さて、じゃあ俺は流石にもうそろそろ……」
「え、帰るの?」
「午後くらいは家でグダグダさせて下さい」
「まぁまぁ、よいではないか~、お姉さんと映画でも見ないかい?」
「なんでですか、一人で見て下さいよ」
そう言って誠実が恵理の部屋を出ようとすると、誠実の腕を恵理が掴んだ。
「……なんですか?」
「暇なのよぉ~! いくら休みが多くてもやることがないのぉ~、私の暇つぶしに付き合ってよぉ~」
「……俺は最後の休みなんですが?」
「私のベッド貸すから、そこでグダグダすれば良いじゃない?」
「いや、それはちょっと……」
そう言って自分のベッドを指さす恵理。
誠実は顔を赤らめながら、恵理から視線をそらしてそう言う。
「あ、もしかしてお姉さんとのエッチなイベントを期待してるなぁ~。もう、しょうがないなぁ~パンチラとブラチラくらいは約束してあげてもいいぞ~」
「帰ります」
「あぁぁぁ! ごめんごめん! 冗談だからぁ~!」
結局誠実は恵理と一緒に映画を見る事になってしまった。
「んで、何の映画を見るんですか?」
「これ! 殺戮の晩餐!」
「……ホラーっすか……」
「およ? もしかして誠実君……怖いの苦手ぇ~?」
「そ、そんなことは無いっすよ……まぁ、脅かし要素とかはびっくりしますけど……」
「ふぅ~ん……」
「なんですか? その笑みは?」
「怖かったらお姉さんに抱きついても良いよ」
「いらない気遣いですね」
誠実は恵理にそう言い、パソコンの再生ボタンを押して映画をスタートさせた。
映画の内容はこうだ。
とあるお屋敷に招待された7人の男性と女性、縁もゆかりも無いこの7人の男女がお屋敷で三日間過ごすというお話だ。
しかし、そのお屋敷では晩餐の度に化け物がお屋敷の人間を食べてしまうという恐ろしい出来事が起きていたという話だ。
一年前に上映されたB級映画らしいが、意外と作り込みがしっかりしている。
「あ、なんかこの男の人怪しい」
「そうですか?」
「うん、だって毎回この人が居ないときに化け物が出てきてるよ」
「あ、そういえば……」
誠実がそんな事を考えていると、急にバンッと大きな音がして、画面に化け物が写った。
「うぉっ!!」
誠実は驚きのあまり思わず、恵理の腕を掴んでしまった。
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