231話
*
ついに夏休みは最終日になった。
誠実は残りの夏休みを有意義にな物にしようと、朝から二度寝を決め込んでいた。
「はぁ……明日で夏休みも終わりかぁ……色々あったなぁ……」
誠実が夏休みの思い出を振り返りながら、ベッドの上でスマホを弄っていると、突然背誠実のスマホが音を立て始めた。
「うぉ! ビックリしたぁ……電話か」
誠実は音に驚き、スマホを落としそうになったがギリギリでキャッチした。
スマホの画面を確認すると、そこには恵理の名前が表示されていた。
嫌な予感がした誠実は、そのまま恵理の電話をスルーする。
「最終日くらいはゆっくり静かに過ごすんだ! あの人に振り回されて溜まるか!!」
誠実がそんな事呟いていると、誠実のスマホは静かになった。
後で用事で出られなかったと言っておけば大丈夫だろうと誠実は思いながら、再びスマホを弄り始める。
すると、再び恵理から電話がかかって来る。
「どんだけ掛かって来るんだよ……」
誠実は二回目の電話も無視する。
しかし、なぜか二回目の電話のコールは長かった。
誠実はもしかして何か大事な用事なのだろうかと、だんだん不安になってきてしまった。
「でも、あの人から何か大事な電話が来ることなんてあるか?」
冷静にそう考えてみると、恵理からそんな連絡が来ることはまずない。
家族や親しい友人ならわかるが、恵理から来る連絡はどうせろくでもない事だ。
「無視だな」
そんな事を考えているうちに電話は切れた。
もう流石に掛かってくることは無いだろうと誠実はそう思いながら、スマホを操作し始める。
しかし、誠実がスマホを操作して直ぐに再び恵理から電話がかかって来た。
「またかよ……」
三回も連続して電話が来るなんて、もしかしたら本当に何かあったのかもしれない。
誠実はそんな事を考えながら、観念して電話に出た。
「はい、もしもし?」
『あ、誠実君やっと出たぁ~、もうなんで出ないの!』
「いや、俺にも用事はありますよ」
(本当は無いけど……)
『まぁ、良いわ! お願い助けて!』
「急になんですか?」
『良いから来て! 来てくれたらお姉さんの胸を揉む権利をあげるから!』
「いらないっす。それじゃ」
『なんでよ!! 良いからさっさと来なさい! お姉さんの命令よ!』
「命令って……」
『来ないと美奈穂ちゃんに、誠実君がエロい目で私を見てくるのぉ~って言うわよ』
「すぐに行きます」
誠実は電話を切り、出かける準備を始める。
美奈穂にそんなことを言われた日には、何を言われるか分かったもんじゃない。
誠実は最低限の持ち物を持って恵理の家に向かった。
「しかし、直ぐに来いって何かあったのかな?」
誠実がそんな事を考えながら、恵理の家の近くにやって来ると、恵理の住んでいるアパートの近くに高そうなバイクが止まっていた。
この前は止まって居なかったので、おそらくこのアパートの住人の物ではなさそうだ。
誠実はバイクを横目で見ながら、恵理の部屋のインターホンを押す。
「恵理さーんきましたよぉー」
誠実がそう言うと、恵理の部屋のドアが勢いよく開いた。
「い、いらっしゃい!! よく来てくれたわ!」
「突然呼び出すのやめても……」
「良いから入って!」
「え? うわっ!」
誠実が文句を言っていると、恵理は言葉を遮って誠実を部屋の中に引っ張りこんだ。
「なんなんすか……って……えっと……誰ですか?」
「貴方こそ誰よ」
誠実は恵理の部屋に入って驚いた。
恵理の部屋には恵理の他にもう一人、綺麗な黒髪のショートカットの女性がいた。
「あの……恵理さんこれはどういう状況なんでしょうか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます