230話

 沙耶香はカードを回収し、再びシャッフルして四人分に分け始める。


(やっぱりまだやるのね……)


 誠実はため息を吐きながら、カードを受け取る。

 誠実は手札を確認する。

 今回は結構楽に勝てそうな出て一安心する。

 

(これなら大丈夫そうだ)


 誠実はホッと一安心をし、美沙を入れて再び大富豪を始める。

 結果は……。


「はい、革命です」


「え?」


「はい、3です」


「え? あ、パスです……」


「他の方も無いようですね、それでは5を二枚」


「パスです」


「私もー」


「お、俺も……」


「じゃあ、最後は3で上がりですね」


 まさかの栞が先ほど誠実が使った手を使い、いとも簡単に上がって行った。

 強いカードを最後の最後まで残していた誠実は、栞の策略にまんまとハマり、結果は結局最下位になってしまった。


「マジか……」


「うふふ、油断しましたね」


 ちなみに二位は美沙、三位は沙耶香だった。

 まさかあの手札で最下位になると誠実も思っていなかった。


「さて、それでは誠実君にはどんな罰ゲームをしていただきましょう」


「せ、先輩! へ、変なのは無しですよ!」


「うぅ~次は私が勝つ! そして誠実君を最下位に……」


(俺が最下位になるのは決定なの?)


 誠実はそんな事を考えながら、栞がの命令を待つ。


「では、私の頬にキスというのは……」


「「「絶対だめです!!」」」


「あらあら、唇じゃなければい良いと思いましたのに」


 栞の言葉にその場にいた栞以外の三人は思わず声を出す。

 

「では……手の甲というのはいかがでしょうか?」


「なんでそんなキスにこだわるんですか……」


「まぁ……手なら……」


「それくらいなら、別にいいでけど……」


「え!?」


(俺はキス事態に抵抗があるんだが!?)


「では、お願いします」


(しかも今かよ!!)


 栞は誠実の目の前に自分の手の甲を差し出す。

 しかも、美沙や沙耶香の見ている前で……。


「え、いや……あの……」


「仕方ありませんよね? 罰ゲームですし」


「は、はい……」


 誠実は三人の女子からの視線を受けながら、仕方なく栞の手の甲にキスをする。

 誠実は自分の頬が赤くなるのを感じる。


「フフフ、誠実君顔が真っ赤ですよ」


「これだけ見られてれなこうなりますよ!」


「大丈夫ですよ、欧米ではキスは挨拶みたいなものですから」


「ここは日本です!」


「では、気を取り直してもう一度行きましょうか」


「まだやるんすか……」


 正直もう終わりにしたい誠実。

 しかし、誠実以外の三人は既に次の勝負の準備に入っていた。

 誠実はため息を吐きながら、三回目の大富豪に挑む。

 そして、三回目の結果は……。


「あ、じゃあ最後2で上がりです!」


「むぅ~今度は沙耶香が勝っちゃった……」


「なかなかやりますね」


 今度の一位は沙耶香だった。

 誠実は最初こそ勝利したものの、二回目以降からはなかなか調子が上がらない。

 そして結果的には……。


「また……最下位だ……」


 またしても誠実は最下位になってしまった。

 誠実は勝ちを意識するあまり、集中して状況判断が出来なかった。


「じゃ、じゃあ、私が誠実君に命令しても良いんだよね?」


「頼むから変なのはやめてくれよ……」


「じゃ、じゃあ……今度買い物に付き合ってほしいな……」


「あぁ、まぁそれくらいなら……」


「ほ、本当?」


「さっきの命令よりはマシだよ」


「あら誠実君、それはどういう意味かしら?」


「人前で恥ずかしい事をさせられるよりマシって意味ですよ。あのそろそろやめませんか? もう時間も結構遅いし……」


「えぇ~! 私まだ誠実君に命令してないよぉ~」


「なんで俺が負ける前提で話が進んでるんだよ!」


「だって、どうせ負けるでしょ?」


「どうせってなんだ! お前は知らないかもしれないが、一戦目は俺が勝ったんだぞ!」


「じゃあ、証明して見せてよ」


「あぁ、良いだろう! やってやるよ!!」


「誠実君って時々単純……」


「うふふ、そこが可愛いんじゃありませんか」


 こうして迎えた四戦目、誠実は絶対に勝ってみせると意気込み、誠実は戦いに望んだ。

 しかし……。


「なんでこうなる……」


「やっぱりねぇ~」


 結果は誠実の惨敗。

 しかも今回の一位は美沙だった。


「あのさ……三人で打ち合わせとかしてないよね?」


「そんな訳ないじゃん」


「だよねぇ……でもなんでこんな絵にかいたようシナリオに……」


「負けたのは誠実君の実力でしょぉ~。さぁ~て私は何をお願いしようかなぁ~」


「頼むからまともなお願いにしてくれよ」


「じゃあ……頭撫でて」


「は? なんだよそれ?」


「良いから、早く早く!」


「ま、まぁそれくらいなら……」


 美沙は誠実の元にやってきて、頭を差し出す、

 誠実はそんな美沙の頭に手を置き、優しく撫でる。


「えへへ……」


「な、なんだよ」


「別にぃ~」


 美沙は頭を撫でられ嬉しそうに笑みを浮かべる。

 そんな誠実と美沙を栞と沙耶香はジト目で凝視していた。

 そんな二人の視線に気が付き、誠実は二人に尋ねる。


「えっと、あの……これは罰ゲームなので」


「別に……何も言ってないよ……」


「うふふ、私も何も言ってませんわよ」


 栞も沙耶香もそんなことを言ってはいたが、なんだかあまり機嫌は良くなかった。

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