229話
「そうですね……では、一番になった方は最下位の方になにか命令できるというのはどうでしょうか?」
「え!? あぁ、いやそれは……」
「わかりました! 私はそれで大丈夫です!」
「え? 沙耶香!?」
「では決まりですね、ゲームの内容は何にしましょうか?」
「いや、一人まだ納得していませんが!?」
「ババ抜きなんてどうでしょうか!」
「だから俺の意見は!?」
そんなこんなで誠実たち三人はトランプをすることになってしまった。
誠実の意見は結局通らず、何をするか悩んだ挙句、三人で大富豪をすることになった。
「3で」
「じゃあ私は5で」
「それならわたくしは1で」
こうして始まった大富豪だが誠実の手札は非常に悪かった。
誠実は手札を配られた瞬間、一瞬でヤバイと感じた。
誠実の手札の中にはほとんど2や1などの強いカードがなく、弱いカードばかりだった。
(まずいなぁ……このままだと負ける……しかもこのまま勝つのは先輩だし……先輩、俺が最下位になったら何をお願いしてくるか……はぁ……)
「誠実君? 誠実君の番だよ?」
「え? あ、あぁそうだな……じゃあ1」
「あ、私はパスで」
「私もパスでお願いします」
数少ない強いカードを捨て、誠実は主導権を勝ち取った。
(よし! ここからだ! 俺の逆転劇は!!)
誠実には考えがあった。
三人の中で手札が一番多いのは誠実、しかも弱いカードばかり。
しかし、誠実には逆転する手が残っていた。
それは……。
「ふっふっふ……やっぱり切り札は最後まで取って置くもの!! 5を四枚で革命!!」
「え!? 嘘!!」
「あらあら、どうしましょう」
「はーっはっはぁ!! もう二人の手札もは残り少ない! しかも5以下のカードが四枚なんてあるわけないですよねぇ!! この勝負、俺がもらいました!!」
「なんか誠実君ノリノリだね」
「なんか楽しくなってきて」
「正直だね」
自分がゲームで優位に立っていると、ゲームはやはり楽しいものだ。
結果、勝ったのはやはり誠実だった。
最後の最後で革命することが出来たのが大きな勝因だった。
そして最下位だったのは……。
「はぁ……まさか言い出しっぺの私が最下位なんて……」
まさかの栞だった。
誠実の予想では、最下位は沙耶香だと思っていた。
栞は頭が良く、ゲームも強いだろうと勝手に思っていた誠実にとっては意外な結末となった。
「そ、それで……誠実君は先輩に何を命令するの?」
「え!? いや……別に何も……無いんだけど……」
「はぁ……誠実君、一体私に何をする気ですか? やはり……私の体が目当てなのでしょうか?」
「え!? 誠実君! 先輩に何をする気!!」
「何もしねーよ!! 栞先輩も誤解を招くことを言わないでください!」
「あら? 私は全然良いんですけど?」
「良くないです!! じゃ、じゃぁ……今度勉強教えて下さい。夏休み明けにテストもありますし」
「うふふ、良いですよ。確かに前橋さんが居ては、私にエッチな命令は出せませんもんね?」
「ふ、二人きりだと出すの! ねぇ! 誠実君!」
「出さねーよ!! 先輩もこれ以上俺をからかうのはやめて下さい!!」
「うふふ」
栞に振り回され、誠実は一戦目から疲れてしまった。
もしも、順位が逆だったらと考えると誠実はすごく嫌な予感がした。
「勝ててよかった……」
「むぅ……これなら私が最下位になればよかった……」
「さて、気を取りなおしてもう一戦行きましょうか」
次も必ず勝たなくてはと誠実はそう思いながら、トランプをシャッフルする。
誠実が札を配り始めると、またしても誠実の家のインターホンが鳴った。
「また客か? 全く今度は誰だろう……」
誠実はそんな事を考えながら、玄関に向かう。
「はーい……って、今度はお前か……」
「お前かは無いでしょ~、自分に好意を持ってくれてる相手に対して」
玄関の外に居たのは、美沙だった。
誠実は今度はお前かと頭を押さえながら、ため息を吐く。
「はぁ……なんで喫茶店にいたメンバーが再集合しつつあるんだよ……」
「え? 他にも誰か来てるの!!」
「とりあえず入れよ」
「ありがと~優しい誠実君が私は大好きだよぉ~」
「あぁ、わかったわかった」
「おいこらぁ~少しはときめけよぉ~」
誠実は美沙をリビングに案内し、案の定麦茶を取りにキッチンに向かう。
「あれ? 沙耶香に先輩も来てたの?」
「あら、笹原さんも来たんですか?」
「美沙まで来るなんて……さっきまでは二人きりだったのに……」
「うふふ、前橋さん、人生とはそう甘くはありませんよ?」
「そうそう、恋は命がけなんだよ!」
遠くでそんな話をしている女子たち。
誠実はそんなんで命を掛けるな、もう少し命を大切にしろよ!
なんてことを考えながら、美沙に麦茶を出す。
「んで、何をしてたんですか?」
「先ほどまでトランプをしていたんですよ」
「へぇ~トランプですか」
「罰ゲームありのね」
「え、何それ面白い!」
(やめろ! 興味を持つな! お前まで混ざったら更にややこしい事になるだろうが!)
誠実そんな事を考えながら、自分のグラスの麦茶を飲んでいた。
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