223話

 沙耶香を加えて三人になった誠実達。

 誠実の隣に沙耶香は座ると、再び三人で話し合いが始まる。


「よし! じゃあ、あれだな……どうする?」


「なんだよ、決まってねーのかよ!」


「いやぁ、やりたい事とは言ったんだが……ありすぎてどうしたものかと……」


「そんなにあったのかよ……結構お前夏休み遊んでた気がするけど?」


「あぁ……蝉も乱獲したし、甲子園も見たし、夏祭りも言ったし……」


「じゃあ、後何するんだよ? 海も言ったし」


「あ!」


「あぁ、なんか思いついた?」


「蝉は捕ったが……カブトムシを取ってない!!」


「小学生か!!」


「よし! 取りに行くぞ!!」


「マジかよ……」


「虫除けスプレー持って行かないとね!」


「え、沙耶香も行く気満々?」


 誠実を取り残して、話しはどんどん進み誠実達はファミレスを後にし山に向かい始めた。

「なぁ……マジで行くの?」


「おう! オオクワガタを捕るまで家には帰らんぞ!!」


「馬鹿だ……本物の馬鹿がいる……」


 夏も終わりだというのに真夏日が続く。

 武司の行動をアホだと思いながら、武司の後について行く。


「沙耶香大丈夫か? 無理して馬鹿に付き合う必要はないぞ」


「大丈夫だよ! どうせこの後暇だったし!」


 暑さのせいか、沙耶香の顔が赤く染まっていた。

 虫かごと網を持ってあるく武司を見ていると、誠実はなぜだか無性に腹が立った。

 そんな時だった、曲がり角から見知った顔が歩いてきた。


「ん? 沙耶香? それに伊敷君に……あと……馬鹿」


「おいこら!! 馬鹿ってなんだ! ちゃんと名前で呼べ!!」


「……珍しいわね、三人が一緒なんて」


「聞けよ! 人の話!!」


 角から出てきたのは志保だった。

 武司を無視し、志保は誠実と沙耶香に尋ねる。


「こんな暑い日に何してるの?」


「いや……それが武司が……」


 誠実は志保にこれまでの話しをした。

 

「はぁ……これだからアホは……」


「おい! なんで俺ばっかりこんな扱い!?」


「アホなんだから仕方無いでしょ」


「アホじゃねーし! 仕方無くねーよ!!」


「こんなアホ放って、皆で図書館行かない? 涼しいわよ」


「あ、それいいな」


「な! おい! 勝手に決めるな!!」


「誠実君が行くなら、私も行こうかな」


「え! ちょっ!」


 武司を放って、誠実達は図書館に向かって歩き始める。

 

「お前ら! 俺を置いていくなぁ!!」


 置いて行かれた武司はそう叫びながら、誠実達の後ろをついて図書館までやってきた。

 

「はぁ……涼しいなぁ……」


「クソ……俺のオオクワガタ捕獲の夢が……」


「まぁ、良いじゃ無いか、図書館は涼しいしゆっくり出来る」


「俺はあんまり図書館好きじゃないんだよ!!」


 図書館に到着した武司は誠実に文句を言っていた。

 誠実は、そんな武司をあしらいながら本棚の本を見る。


「大体だな、図書館なんて夏休みじゃなくても来れるだろ」


「虫取りもだけどな」


「カブトは今しか取れないんだよ!!」


「あっそ……」


 なんでこいつは虫取りにこんなに熱意を燃やしているのだろうか?

 誠実がそんな事を考えながら、本を探していると、またしても見知った顔と遭遇した。


「あれ? 誠実君?」


「え?」


「ん? あ……美沙と山瀬さん……」


 声を掛けてきたのは、美沙と綺凜だった。

 どうやら二人来ている様子で、手には数冊の本を持っていた。


「誠実君! こんなところで何してるの? 私をデートにでも誘いにきた?」


「違うよ……はぁ……美沙はいつも通りだな……」


 告白を断ってから、美沙と話しをする時は少し緊張してしまう誠実だったが、いつも通りの美沙の反応に少し安心してしまう。


「二人は何してるの? 図書館なんて珍しいね」


「ちょっと涼みに来たんだよ、山瀬さん達は?」


「俺はオオクワガタを……」


「オオクワガタ?」


「あぁ、武司の話しは聞かなくていいから」


「なんだとぉ!?」


 誠実の言葉に武司は声を上げる。

   

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