103話



 そして、テスト最終日となった。

 誠実も武司も健もそれぞれに急ごしらえではあったが、対策をし勉強をしてきた。

 最終日のテストが始まり、既に十分が経とうとしていた。


(う~む、なんとかなりそうだが……やっぱり難しいな……)


 問題を解きながら、誠実はそんな事を考える。

 武司や健はどうだろうと、二人の席を見てみる。

 武司は、悩んだり書いたりを繰り返し、健はすらすらと問題を解いていた。


(あの様子なら、あいつらも大丈夫だろ……)


 テスト終わりの打ち上げをしたいものだと考えながら、誠実はテストに戻る。

 あっという間に一教科が終わり、残る最後のテストも終わり、ついにテストの全日程が終了した。


「終わたぁぁぁぁ!!」


「はいはい、良かったな」


「いやぁ~、俺にしてはまじめに勉強したぜ~」


「まぁ、それでもテスト前の数日だけな」


「誠実には言われたくねーよ」


 テストが終わり、武司がハイテンションで誠実の机に近寄ってくる。

 そんな武司を片手であしらう誠実。

 結果はどうにせよ、これで嫌なテスト勉強から解放され、誠実も武司も上機嫌だった。


「なぁ、帰りにカラオケ行こうぜ! 打ち上げだ!」


「言うと思ったよ、健! お前も行くだろ?」


「あぁ、いきたいんだが……」


 健は自分の席でなにやらプリントを見ながら、誠実達の言葉に生返事で応える。


「何見てんだ?」


「健! まさかお前、自己採点なんていう意識高い事しないよな?!」


「武司、自己採点は別に普通の事だと思うが……それより、これは良いのか?」


 健は誠実と武司に、一枚のプリントを差し出す。

 誠実と健はそのプリントをのぞき込み、一気に表情を曇らせた。


「お、おい……なんで第二弾が出てるんだよ!」


 健が持っていたのは、誠実・健・武司の三人がホモではないかという疑惑の記事の第二弾だった。


「おいおい、なんで写真部はここまで俺たちを目の敵にすんだよ…」


「武司か誠実に恨みを持つ奴でも居るんじゃないか?」


「お前も対象だろうが……」


 テスト前からばらまかれていた、このデマの校内新聞。

 校内新聞の発行は、新聞部が行っているため、犯人は明らかなのだが、なぜ新聞部が誠実達三人にこんなことをするのか、それがわからなかった。


「……てかよ、健も誠実も新聞部に知り合いっている? ちなみに俺はいない」


「俺は居ないな……誠実はどうだ?」


「俺も居ないけど? てか、新聞部の存在自体をこの事件で知ったし」


「じゃあ、恨まれる理由もないしな……どういうことだ?」


「直接行って見ればわかる」


 そう言うと、健は鞄を持って立ち上がる。


「お、おいどこ行くんだよ?」


「決まってるだろ? 新聞部に行って文句を言う。テストも終わって、部活も再会しているはずだ」


 武司の言葉に健はいつもの無表情で応える。

 健は以外と行動的な性格であり、何かあればとりあえず行動する性格なのだ。

 

「まぁ、確かにこのままってのも嫌だしな……いくか!」


「はぁ! そんなんいいから、今はカラオケに……」

 

「「よっしゃ! いくぞ武司!」」


「おいこら! 腕を持って引きずるな!!」


 健と誠実は、武司の腕を二人で片方づつ持ち、武司を引きずって新聞部に向かう。

 正直、誠実的には自分の悪い噂がかき消えたので、この件に関しては自然消滅するのを待とうと思っていた。

 しかし、なぜか健がやる気を出しているので、丁度良いと思いこれを機にこの問題を解決してしまおうと思ったのだ。


「ここか……」


「しっかし、こんな廊下の隅っこに部室なんてあったんだな…」


「あぁ、俺も知らなかった。よし、開けるぞ」


「え! そんないきなり!!」


 健は武司の言葉を無視して、部室のドアを開ける。


「失礼します」


 ドアを開けた部屋は、中央に机が固められ、それを囲むような形で椅子が並んでいた。

 そして、教室の奥で腕を組んで仁王立ちする女性とが一人いた。


「良く着たわね! 1組の三馬鹿!」


「お、お前は!!」


「健! 何か知ってるのか?」


「誰なんだ! この女は!!」


「いや、全く知らん初対面だ」


「「じゃあ、なんであんなオーバーリアクションをしたんだよ!!」」


 健のリアクションに声をそろえて文句を言う誠実と武司。

 部室にいた女子生徒は眼鏡を掛けて、腕には新聞部の腕章をしていた。

 背が低く、髪はショートカットの活発そうな女の子だった。


「来たわねって言ったことは、俺たちがここに来ると予想していたんだな……って事は、お前がこのチラシをばらまいた張本人って事で良いのか?」


「えぇ、察しが良くて助かるわ古沢健君」


「どこかであったか? 生憎と名前を覚えていないんだ」


「いえ、これが初対面よ、私があなたたちの事を調べて知っているだけ」


「し、調べるって……何の為に!」


 健と女子生徒が話しをしている間に、誠実が入って行く。

 すると、待ってましたと言わんばかりに女子生徒はニコッと笑って誠実に向かって応える。

「そんなの決まってるわ! あなたたちが最近この学校で一番注目されてる生徒だからよ!」


「「「はぁ?」」」


 誠実・健・武司の三人はそろって気の抜けた声で聞く。

 誠実は、この女性との言っている意味が理解出来なかった。

 なんで自分たちが注目されて居るのか、その意味もわからないし、自分たち以外にもこの大きな学校の中には注目を集めている生徒はいる。


「別に俺らは普通だろ? なぁ健、武司?」


「「一緒にしないでくれな?」」


「あっれぇ? なんでそんな事を言うの? 俺たち普通でしょ?」


「誠実、お前は山瀬さんに99回告白して結局振られた男だ、学校内でも有名になって当たり前だ」


「そ、それを言われると……否定出来ない…」


 健に無表情でそう言われると、確かに自分は注目を集めて居るかもしれないと自覚してしまう誠実。


「はは、誠実お前はもっと自分がどれだけ注目されてるか、自覚した方がいいぜ~」


「そう言う武田君も自覚が足りないと思うわよ?」


「いやいや、俺は至って普通の……」


「これ、作ったのは貴方よね?」


「そ、それは!」


 女生徒が見せて来たのは、とあるインターネットのサイトだった。

 そこには、デカデカと「N星高校美女トップ10」と書かれていた。

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