104話
「なんだ? アダルトサイトか? 初対面でこんな事言うのも何だが、女子が見るようなサイトではないと思うぞ?」
「違うぞ誠実!」
「なんで武司が答えるんだ?」
「あれは、俺が作ったサイトだからだ!」
「良し、通報しよう」
「ちょっと待て! なんでそうなる!!」
「アダルトサイト作っちゃアカンだろ……」
「だからアダルトサイトじゃないっての!!」
誠実の冷たい視線に、武司は声を上げて否定する。
武司は自分のスマホでもそのサイトを表示させ、誠実に説明する。
「これは俺が取った、この学校の美少女のデータを公開しているサイトだ! だが安心だ! 名前にはぼかしを入れている上に、顔も隠してある!!」
「その処理が余計にいかがわしさを出してるっての……」
「確かに、その美少女に関する情報の量なら注目されるな……」
武司のサイトを見て、健が武司に言う。
誠実は忘れ気味であったが、健はこの学校の女生徒に密かにランキングを付けている。
それを知る男子生徒も少なからずいるので、武司が注目されるのもわかる気がする。
「全く、俺はこんな奴らと一緒だった為に……」
「「お前が一番注目されとるわ!!」」
健は言わずもがな、学校一のイケメンと名高い上にアイドルオタクというギャップも持っている。
この中で一番知名度が高いのは健であると、その場の全員が思ったが、当の本人はそれを理解していない。
「何を言っている、俺こそが至って普通の…」
「お前は黙ってろ! イケメンドルオタが!!」
「武司……お前も人の事は言えない、変人だぞ……」
「元ストーカーには言われたくないね!」
「んだとぉ!!」
女子生徒を置いて喧嘩を始める誠実達、そんな誠実達に女子生徒は机を叩いて、喧嘩を中断させる。
「そんな事は今はどうでも良いの! 私の話を聞きなさい!!」
「「「どうでも良くねーんだよ!!」」」
「良いから聞きなさい!!」
女生徒はまた机を叩き、誠実達を黙らせる。
誠実達は、当初の目的を思いだし、女生徒になんであんな記事を書いたのかを尋ねる事にした。
「……じゃあ、話しを戻すけど、なんでこんなデマを流した!」
「やっと本題ね……フフフ、それはね新聞部を復活させるためよ!」
誠実の問いに、女生徒は胸を張って答える。
言われた誠実達は、その意味がわからず頭を悩ませる。
「えっと…それと俺たちの記事と何の関係が?」
胸を張る女生徒に、武司が尋ねる。
すると女生徒は、待ってましたと言わんばかりに、一枚のプリントを差し出して説明をし始める。
「これは今年の生徒会が提案した、今期の部活動の予算表よ」
「だから、それが一体何の関係が……って新聞部自体載ってねーじゃねーか!」
武司の持っているプリントを誠実と健ものぞき込むが、そのプリントの一覧に新聞部の文字は無かった。
「これって、部として認めてもらってないんじゃないか?」
「どういう意味だよ健?」
「入学の時に校長が言ってた。人数の少ない部は愛好会扱いになって、部費も無いらしい」
「なるほどね、じゃあ今は新聞愛好会って扱いな訳か」
「察しが良くて助かるわ、その通りよ……うちは今年から愛好会になってしまったの……」
先ほどまでの威勢は無くなり、女生徒は話し始める。
女生徒の名前は吉田暁美(よしだ あけみ)と言うらしく、学年は誠実達よりも一個上の2年生らしい。
元々少なかった部員が、3年生の卒業で暁美一人になってしまい。
今年の春から部として活動が出来無くなってしまったらしい。
「……事情はわかったっすけど、それと俺らのあの記事が何の関係が?」
武司が暁美に尋ねる。
年上と知ったからか、若干謙って尋ねる。
「さっきも言ったけど、貴方達三人は良くも悪くも目立つのよ。だから、そんな生徒の記事なら新聞部の新聞を面白がって読んでくれると思った、新聞を読んで興味を持った生徒が新聞部に入ってくれるんじゃないかと思った。……結果はご覧の通り、大好評だったわ」
「確かに……それは俺らが一番よく知ってるよな……」
「俺なんて、誠実にどんなプレイを強要してるのか、小野山先生にしつこく聞かれたよ」
「俺は、お前らにアイドルの衣装を着させていると思われているらしい……全く汚らわしい」
三人は一斉にため息を吐き、ここ最近の事を思い出す。
しかし、誠実に取っては悪いことばかりではなかった。
この噂のおかげで、誠実にとっての悪い噂が消えたからだ。
「テストも終わった今日なら、君たちが私のところに来るんじゃないかと思って、待ってたの………」
「もしかして、記事の事を……謝って……」
「お願い! 伊敷君の力で、副生徒会長に頼んで! 新聞部を部として認めてくれるように!!」
「「「謝れよ!!」」」
副生徒会長とは、栞の事だ。
暁美はおそらく、誠実達の身辺を調査したのだろう。
誠実が栞と知り合いだと知っていて、こうして頼んでいるのだろう。
「なんで俺が……まず俺たちに言うことがあるんじゃないっすか?」
「え? そんなの無いわよ?」
「謝れよ!! こっちはアンタの記事の生で迷惑してるの!!」
「学校の新聞部なんて、大抵は嘘しか書かないわよ!」
「威張るな!! 全国の健全な新聞部の方々に謝れ!!」
全く反省の色を見せない暁美。
こんな女の頼みなど誠実は聞きたく無いので、そのまま部室を後にしようとする。
「行こうぜ、どうせ噂なんて直ぐに消える」
「だな、俺らがここまでする義理はないよな!」
「失礼しました」
三人が部室を出ようとした瞬間、暁美はにやりと口元を歪ませ、誠実に言う。
「フフフ、私が何の報酬も準備せずに、あなたたちにこんなことを頼むと思った?」
ドアを開けようとした誠実の手が止まり、暁美の方を振り返った。
「どういう意味だ?」
「もしも、新聞部を部活として認めることに成功したら……これをあげるわ!!」
「こ、これは!!!」
暁美は誠実の前に一枚の写真を差し出す。
誠実はその写真を見た瞬間、その写真から目を離せなくなってしまった。
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