現実世界の片隅にて

・プロローグ

「お願いします! お願いします!」


 俺は必死に頭を下げる。

 編集部の皆様、私を選んでください!


「なんでもしますか……ら…………」


 俺の背後にひとりの少女が立っていて、俺はその少女に後頭部を殴られ気絶した。

 とんでもねぇ話だな。


 俺、水飼 おさむはワナビ※1の中学三年生だった。

 小説を書いては友人に見せ、面白いねと言われ、ついつけあがって続きを書いてしまった。

 作家は毎日書いていればなれるなどともネットで目にし、たまになくした自信も、相手が羨ましがってるんだろうと勝手に解釈した。

 周囲に流されて(あわせて自分の頭の足りなさで)、完全に調子にのっていた。

 中学三年生にもなってそんなことも気づかないのかと思うかもしれないが、他人から褒められることなんて滅多になかったものだから、冗談なのか真剣なのかわからなかった。

 おいそこ、そんな雨で濡れても拾われない子犬を見る目をするな!

 悲しい……。


 そんなこんなで新人賞に応募し、応募先のレーベルに電話と迷惑をかけた。

 しかし、背後から忍び寄ってきた姉に気が付かなかった。

 姉は暴力的だが優しくて、理想の姉だった。周りには丁寧で、美人秀才で有名だった。身長や胸のせいで、高校三年生のくせに小学二~三年生に間違われることがあるのが、「ざまあ」とあざ笑える唯一の欠点だった。

 セミロングの茶髪を揺らして、俺から無理に電話を取り上げた。


「すいません。先方の姉です。どのようなご要件でしたでしょうか?」


 姉は丁寧によそいきの声で言った。まったく。外っ面だけはいいんだから。


「……え? ……。はい。そうですか。うちの弟が本当に申し訳ありません」


 ねーちゃん。頭を下げても電話先の人は見えてないよ。

 ん? なんだよ近づいてきて……。

 いや、あの。その。どうかその拳をおさげくださいいぃぃ!


 姉は理に拳を振り下ろして


「はい……。はい。……わかりました。私のほうから厳しく言っておきます。はい。……わかりました。失礼します。」


 なに? 「はい」の回数が多いだって? 知ったこっちゃねえぜ!

 姉の拳が俺の頭に突き刺さった。実際につき刺さったわけではないが。

 知ってるって? あっ、はい。

 そして、姉は電話を机の上に置いていう。


「あんたさあ……。もう何も言えないよ」

「知らんがな」

「知らんがなじゃないよ! なんでそんなに必死なのさ!」

「ネットでアピールしたら新人賞通りやすいって言われたもんで……」


 馬鹿じゃないの?! と言って姉は出て行った。

 と思ったら、扉が開かれてうるさくすんなよと言った。


     *


 俺は結構うるさかったらしい。自分では気づいていなかったが、部屋の外まで漏れていたらしい。

 そう。俺は部屋の中にいた。

 レーベルの編集者たちはどう思ったのだろうか。俺はすこし怖くなった。

 なんでねーちゃんが出るんだ。不細工な声でいきなり出られたら、相手がかわいそうじゃないか!

 絶対にそこじゃない。でも、人のせいにすることしかできなかった。自分のせいにしたくなかった。


     *


 中学校三年生の夏。俺は新人賞に応募していた。昔から小説家にあこがれていた。といっても俺の好きな小説はライトノベル。読み始めたのは中学一年生のときだった。

 周りからオタクだのキモイだの言われたが、ドルオタ※2にオタク扱いされるのがとても嫌だった。裏切られたような切なさが心に残る。

 そしてあの文字が思い出される。

「第一次考査に落選しました」

 もう何度も応募していたのに、一度も一次選考すら通ったことがない。どんなに研究を重ね、評価シートを見返し、物語やキャラクターを修正し、本を読み。でも、一次すら通過できない。今回で一次も通らなかったら、レーベルに迷惑だし、やめようと、そう思っていた。

 だからこんなにも必死だった。たぶん自分の限界がここで、ここで終わらなければ、もうどうしても一次には通過できない。そう思った。人生いくらでも残っているけれど、それだけじゃ足りない。そんな気がした。

 でもだめだった。

 中学三年生。ずっとこの気持ちを晴らせなかった。そうして、夏休み明けの学校へ向かう。重たい気持ちは足取りにも表れ、消せないものになっていた。

 制服が懐かしく感じる。どれほど着ていなかっただろうか。もう夏も終わる。何度も応募した小説の新人賞も今年で終わる。一年に二度応募してみて、何も達成できなかった僕には、終わる以外に道は残されていなかった。

 別の道に歩んでいったプロになる作家たちが僕らを振り返って手を振る。

 なにがいけなかったんだろう。

 電車に飛び出す勇気もなく、この勇気の足りなさがいけなかったのかもしれないなんて、馬鹿なことを考える。

 学校につくいて階段を上って教室を見ると、別れの挨拶を告げる。僕は廊下を歩いて、階段をわざと踏み外し野垂れ死にをした。



・プロローグでこんなに時間を使うとは思っていなかった結果

 メールが一通来ていた。それで携帯電話の通知がけたたましくなっていたのか。

 耳が痛くなるほどうるさく、携帯電話を探した。どこだ……。

 やっと手が届いたような感触があり、いつものように携帯電話の通知を切ってからディスプレイに目を移した。

 JJ文庫編集部より。その文字を見るなり、興奮冷めやらぬままメールの中身を読んだ。新人賞に応募した作品に関してというサブタイトルで文字ははじまる。


「こんにちは。JJ文庫編集部の〇です。この度メールを送らせていただいたのは、以前新人賞に応募された作品ですが、第一次考査で落選という結果になっていました」


 やっぱりあの落選という文字は消えないらしい。と思っていたが、まだ続いている。そうでないとメールを送る意味はたしかにない。


「がしかし、この作品の担当をしたい。この作品を応援したいという編集部の者がおりまして、一報を述べさせていただきます。つきましてはお手数おかけしますが下記のメールアドレスまたは、電話番号にお問い合わせください……」


 絶望した。

 もしも、が今こんなところにいなければ喜んでいたはずなのに。せっかく担当がついてくれるというのに、僕はなんで死んでしまったんだろう。

 一人森の中で静かに泣いた。泣いた涙は土に含まれて草木になるのだろうか。


・目を覚まして、異世界を知った結果

 僕は異世界に転生された。意味がわからないが、とにかく生き返った感覚がした。目を覚まして、携帯電話を見る。そこにあった絶望的な内容が僕の心を病ませる。そんな気がした。

 天気はよく晴れていて、太陽がまぶしかった。うぅっとうなる。あたりを見回すと、森林に囲まれていて、どこか見覚えのあるようなないような。そんな気がする。

 とここで脳に振動が与えられる。


「なにブルーになってるんだよ!」


 痛い……。なんで痛いんだろう。わけがわからない。……え?

 後頭部に激痛が走り、頭を抱えた。

 それに、なぜか久々に聞いたような声で僕は正気を取り戻した。


「いいから起き上がれよ」


 僕は起き上がらないでいると、オレンジ色の髪の幼女に頭をぶん殴られた。

 意識が朦朧もうろうとしてこれは死ぬなと確信した。

 がしかし。


「あ、まずい。これじゃあ死んじゃう!」


 おい起きろ。そうして何度も声をかけられた。

 そしてついに、僕は起き上がり、第一声を放つ。


「うっせーぞ! 何度も耳元でわめくんじゃねえ!」

「うっさくしてんのは誰だよ!」

「お前だお前!」


 口喧嘩がはじまってしまった。こんなつもりなかったのになあ。幼女にそんなこと言われたくな……い…………。


 の頭にたらいが降りかかってきた。


「うわぁ。なんか変なこと考えてたんでしょ~。変態」


 今のがぞくっと来た。もしかしたら本当に変態なのかもしれない。

 んなわけあるかあぁ!!

 この幼女め……。覚えとけよ……。


 俺はヒリヒリする頭をなでながら、幼女と会話を進めた。


「やっと目が覚めたのか。おせぇんだよ。手間かけさせんじゃねえ」


 姉貴、あんたはなんでそんなにもキャラが変わるんだい……。


     *


 正気を取り戻した俺は、会話と楽しむというよりも少しいらいらした口調で幼女と話をしていた。


「そんでどうなようじなわけさ」

「どんな”ようじ”だって?」

「ん?」

「おまえ、今ようじって言ったな?」

「ああ、言ったが。どんなようじなんだよ」

「てめえ! 私は”幼児”じゃねえ!」


 そういって幼女は俺に指をさすと、俺の頭の上にたらいが降ってくる。この幼女、あなどってはいけない。そう思った瞬間であった。


「ちげぇよ用事だ。馬鹿が」


 たらいでも、ストレスでも。そろそろ血管ちぎれそう。もうやめておくことにする。

 知能が足らず(たらいのせいで)記憶力の飛んでいた俺は、さっきの一瞬で幼女の怖さを忘れるのだった。


「なるほど。とくにねえぞ」

「なにそれ。異世界に来たら最強装備とかくれるんだろ?!」


 幼女は不思議そうな顔をして、俺の顔をのぞき込んだ。

 しばらくし、なるほどという顔で手を叩くと俺にバインダーを渡した。

 俺はそれを開くと目を見開いた。


「おい、幼女。なんだこれ」

「なんだこれって、どう考えても最強の装備でしょ?」

「はぁ?」


 目の前に突きつけられたバインダーの中身は、どうしようもないものばかりだった。

 手始めに中程から折れた本来なら刀サイズの剣。次に、ぼろぼろになった本。中身は読めなさそうだ。どうせ字も読めなかったわけだし。次に壊れたバイク。まだ使えそうだけれど、修理が必要なほど外装が破損していた。次に水・食料と……シンダライオン。とんでもない構成だった。


「はい、じゃあ適当に選んでどっか勝手に行ってこい」


 これでどうしろというんだ、この幼女は。

 基本的にイラストと文章で構成されていて、文章は全く読めないわ、このあとどうすればいいかも思い付かないわで何を選べばいいかわからなかった。


「おい、幼女」


 俺が幼女にそう声をかけると心外そうにこちらを向いて、指を指した。案の定たらいが降ってくる。くそっ。


「なんだって?」

「おねーさん」

「なんだい」


 おねーさんでいいのか。頭まで幼いんだろうな。


「あの、どれ選べばいいんですか。これ」

「知るかよ」


 知るかよじゃねえよ! こちとら異世界人生がかかっとるんじゃ。

 このくそ役にも立たない幼女にバインダーを返す。


「お、決まったか」

「いんや」

「早く決めろよ」


 早く決めろよじゃねえんだっつうの。まじどうすっかなあ。


「これでいいだろ」


 そういってバインダーを覗くと、一番後ろのページにバッグが書いてあった。


「なんだ、これ」


 バッグなどあることすら気づかなかった。ちなみになんでこれなのだろうか。たしかに状態は一番良さそうだが。

 意味がわからなかったことを直接口に出してしまった。


「これどう見てもバッグだろうが。ほら、書いてあるだろ?」


 わかんねえよ。文字読めねえし。

 口に出すとさらに厄介ごとになりそうなので、口には出さなかった。

 がしかし。


「はぁ?! あんた文字も読めないの?!」


 この表情。余裕ぶった態度。めちゃくちゃ腹立つな。


「ああ、読めない」

「あははは!」


 幼女は腹を抱えてその場に倒れ込んだ。涙を流してまで笑っているようだった。

 まじでは腹立つな。


「悪いかよ」

「文字読めないのがどれだけ大変かわかってないの?」

「まだ使ってねえしな」

「今使ってんじゃん。わかんなくて困ってるんだろ?」


 ぐっ。たしかにそうだ。

 幼女にしては痛いところを突いてきた。そのため返答に困った。


「じゃあこれじゃね?」


 ぼろぼろの本を見せられる。

 あれ。日本語だ……。


「なんだよこれ」

「それ? よくわかんない。おまえみたいに昔きたやつが残したんだ」

「そいつはどうしたんだ?」


 すると幼女は口ごもった。俺は不思議がって、もう一度尋ねた。


「やつは……。やつは消えたんだ」

「は? 消えた?」


 なんだよ、消えたって。


「おい、どういうことなんだ……は?」


 俺の体から光の粒子があふれ出る。徐々に俺の体は薄くなっていく。

 混乱の中、幼女に尋ねても返答はない。


「おい! なんだよこれ!」


・永遠のときの中で。その結果

 気がつくと俺は、地面が真っ白で平坦なところにいた。視界を奪ったものはなにもなく、ただ気が遠くなるほど白が続いていた。

 まったくもって無機質なその世界は俺にとって辛すぎて、なにかを体現しているようで体を震わせる。


「なあ、あんた」


 どこからともなく声が聞こえる。変声期の途中の少年のような中途半端な声色で俺に話しかける。

 次の瞬間。


「ねえ」


 真後ろから声をかけられ、焦って振り返る。そこにはなにもなく、白いものがうめつくされていた。

 正面に顔を戻すとそこには、黒いコートに緑の瞳が特徴の、見た目十三歳程度の少年が立っていた。

 俺は焦って座っていた椅子から転げ落ちた。俺は椅子に座っていたのか。


「ああ、残酷だよね。年月って」

「何の話をしてるんだ」

「そんな怖い顔しないでよ。そんなに悪いやつじゃないって」


 俺はそんなつもりなかったが緊張で顔がこわばっていたようだ。

 頬を両手で触り手先の冷たさを感じると、手をパッと離した。


「なにしてるの?」

「緊張をほぐそうかと」


 正直に答えると、少年ははははと笑って、ばかっぽいと言った。

 俺はうっせーと応えた。


「それで、なにを?」

「知らん」

「あ! その本は!」


 そういって半ば強引に本を引きはがすと、ページをぺらぺらとめくる。


「これ日本語じゃないか」

「なに? 日本語わかるのか?」

「なにいってるのさ。君だって日本語話してるじゃないか」

「読み書きだよ」

「ああ、そっちか」


 どっちの話をしようとしていたんだか。皆目見当も付かん。


「そうだ。僕は日本語が読み書きできる。君も……そうらしいね」

「ああ、そうだ」

「『ああ』の乱用はよしなよ」

「ああ」

「だから馬鹿っぽいって言われるんだよ?」

「うっせ」


 少年は本を読みつつ俺に話をしてくれた。


「僕は竜哉りゅうや。僕は一度死んで異世界に来たんだ。クソだめ教会どもにやられてな」

「くちわる」

「黙れよ」


 急に切れ始めるものだからすこし驚いた。黙っておいたほうが良さそうだ。だが、こいつは教会についてもっと詳しく知っていそうだ。


「そんで、教会どもが僕にアイテムを渡して僕は消えたんだ。そして気がついたらここにいた」


 なんだ、こいつ。俺と変わらないじゃないか。教会について詳しそうだったのもなんとなくか。


「俺、理。同じことになってるんだな」

「だが、僕はかれこれ十年くらいここに居る」

「なんで見た目そんなに若いんだ」

「若く見えるか? 死んだ当時でも酒は飲めたぞ」


 うっそだろ……。

 あの幼女といい、こいつといい。見た目の年齢詐欺じゃねえか。


「なあ天使よ」


 少年が急にしゃべりだした。


「なんでしょうか」


 少年が急にしゃべりだしt……。ん? 違う?!


「誰だ?!」

「あ、気にしないでください。私は彼の所有物です」

「そうです。僕は教会にこいつを頼んだのです」


 なんだ、その話。概要からクソじゃねえか。天使って言ったよな? まず俺が選べなかった時点でこいつとの差は歴然。うらやましい。

 それにこの美貌ときたらたまらん。豊潤な胸。美形な小顔。露出の多い服(ビキニのようだが厳密には違う。たぶん)。


「あの。こいつはどうしたら良いと思う?」

「勝手に本奪って勝手に読んですっからかんの俺になにすんだよ」


 なにも出来るわけねえだろ。ド畜生が。


「その魔法。頂戴?」


 小首をかしげてこちらを見守る通称、天使。魔法だかなんだか知らんが、俺には無理だろ。


「なに言ってんだ。俺に魔法なんて――」


 通称、天使は俺のしゃべっている間に飛びかかってきた。

 俺は必死の抵抗を見せるがどうにもならない。

 どうにか……。なにか助かりそうなことは……。


     *


 俺に飛びかかってきた通称、天使。

 そいつは俺に殴り蹴りの暴行を繰り返し、俺の顔は血で汚く。染まっていた。

 なにか、助かる方法……。

 そうだ! 前にネットで見た気がする。魔法。


「エターナルブリザード!!」


 こんなようなものだった気がするが。


「おまえ! なぜそれを!」


 なぜそれをって、知らんがな。


「うわぁ~!」


 後ろに引きこもりなにもやっていないやつ(りゅうなんとか)は消えた。

 ガチで意味がわからんぞ……。展開が謎すぎるんだが……。

 そうだ、ネットに聞けばいいんだ!


「展開が謎な件」

1:名も無き名無し

 なんだ、俺にもよくわからんが、エターナルブリザード!! ってとなえたら人が死んだんだ。どうしたらいい?

 >>5

――

5:名も無き名無し

 とりあえず逃げろwwwwww


 おい、5。おまえのこと信じるからな!


「あのぉ~」


 なんだ、こちとら今ネットで忙しいのに。

 あ……。

 鳥頭以下の脳内では完全に忘れ去られていた通称、天使が声をかけてきてた。


「なんだ。まだやるのか?」

「あ、いえ。あいつ……あ、いえ。前マスターが死んだので、あなたがマスターになります。よろしいですか?」


 はあ?


・美人の天使とぼろぼろの本を手に入れた結果

「おかえりなさい」


 はあ? まずその人ことにつきた。

 今いるのは森の中。あの何度も悪夢のごとく見させられたあの森。

 そして、幼女。オレンジ色の性格がクソすぎるあまり、「やっぱり顔じゃなくて性格だわ~」という男性陣増えること間違いなしの、あの幼女だ。


 一体どういうことなのか。

 説明しよう!


     *


 俺はあの後、通称、天使に言われるがままに、抱きしめられ幸せな気持ちでいると、いつの間にか寝ていた。それで気がつけばここだったというわけだ。


「おい! どういうことだよ」

「あ? あれはあんたを試すやつね」

「ためすってなにをだ?」

「ヒ・ミ・ツ☆」

「圧倒的需要のなさ」

「おい」


 そろそろ脳の血管がちぎれたり、後遺症が残りそうなので、これ以上は言わないことにした。


「じゃあ行け」

「は? どこにさ」

「天使に聞けよ。これからパートナーだぞ?」

「そうなんですか?」

「ええ。マスター」


 これは勝ち申したわ。


・エピローグ

 なんでこんなことになっているのだろう。

 俺は、暑い砂漠の上を歩いていた。まだいい。

 隣には名前も知らない天使がいる。ここは完璧だ。

 本などの所持品を持って歩いている。まだいい。


「おい!」

「なんでしょうか」


 ごめんね~。天使ちゃんに言ったわけじゃないの。その隣。

 オレンジ色の髪の幼女がそこにいた。


「なんだ、はげ」

「はげじゃないですぅ~」

「どうせはげんだろ」


 なんだよ、まじで。


「教会から追い出されたのか?」


 俺は軽くその言葉を口走ってしまった。

 幼女は俺をにらむ。それどころか天使すらも。


「おい、その言葉どこで聞いた」

「は?」

「教会の人間って誰が漏らした」



(注1)作家を目指す人達の呼称・蔑称。

(注2)アイドルオタクの略した言い方。


・あとがき

 なんだか続きそうですが、ひとまず終了になります。ここまでご覧下さったかたはありがとうございます。どーも、作者です。なんだかんだ言って、三本書き上げることになりました。まあ、SSなんですがね(それも相当な短さ)。

 本作はスニーカー文庫編集S氏の題にございます、笑える話というものを意識して制作いたしました。実際にコンテストに応募するので、応援いただけると幸いです。それで、実際に笑える話になっていたのかと申しますとそんなことはありませんでした(自分でいうのもなんですが)。最後の方ではなんだか微妙な雰囲気になっていますね。他の新人賞との兼ね合いより、応募までのスケジュールが大変なことになり、ひとまず完結させようとなった結果です。

 編集のS様におかれましては是非とも担当になってくださればと思います。(ちゃっかりしてますよね。すみません)

 しかしながら、真の面白さとはなにかと。以前読んだ文章にこんなような言葉がありました(西尾維新先生だったような気がします。どこにあったかは不明です。申し訳ありません)。

「作品(小説)の真理なんてない。最もなんてない。もしそれらがあるのだとしたら、今の作品なんて面白くない」

 このような言葉でした。

 つまりはコメディ小説でさえ、本当に面白いと積極的に言える作品というのはないのではないだろうか。民衆からどれだけ好評であったとしても、「その作品が一番である」、「その作品を超えることはできない」と言えるのだろうか。それだけ多様化できるものであるのだと思う。

 私は、私の作品が私自身つまらなかったとしても、誰かには笑ってもらえてここまで読んでいただけるということを嬉しく思います。

 最後になりますが、ここまでお付き合いいただきありがとうございま……。

 うわっ! 私の文字数多過ぎ?! もうなんも言えねえ……。

             ジェットコースターの終点・里憂&抹茶パフェ

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超異世界ファンタジー 里憂&抹茶パフェ @Subelate

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