異世界の上空にて

 ・プロローグ

「お仕事お疲れ様です!」


 異世界の上。雲を突き抜け、空を突き抜けた先にあるそんな場所。

 オレンジの髪をした、見た目小学生の幼女に、青い髪をした二十歳ほどの女性が話しかけた。

 オレンジ色の髪は短髪であるが、青い髪はポニーテールになり、うなじがさらされる。


「あ、お疲れ〜」


 幼女ってねぇ〜すっごいんだよぉ〜(某五十嵐さん顔負けのロリ声で脳内再生)。なお、発言に語彙力は欠片かけらも無い。そして某五十嵐さんは作者が個人的に好きな……ぐはっ!(作者個人の話はなかった。いいね?)。

 も、もう一度言おう。語彙力は欠片もない。


???「何度もいう必要あるんですかねえ」

作者「重要ってことなんやで」

???「は?」

作者「すいません」


     *


 ちなみに何がすごいかというのは、この幼女、実はとんでもなく先輩なのである。

 年齢は非公開であるものの、ここいらの人で、近しい歳の人はいないらしい。青い髪のはたしかまだ二十とかだったろうか。

 平均が百五十歳であると考えると……。いや、これ以上関わるのはやめよう。命がいくつあってもたらなくなる。


「そういえば、今日どこへ向かわれていたんですか? やけに焦っていたようでしたが……」

「今日は下界で新しい人を迎えてきた。自分が死んだのを理解していないようで、めんどくさくなって逃げてきたけれどね」


 これはある種の戦術的撤退であり、単に欲望のまま逃げたわけではない。ここ重要です。

 決して面倒だったとか、帰りたかったわけじゃない。あ、面倒だったっていちゃった(口に出しちゃったから終わりだね!)。

 それからオレンジ色の髪を左右に揺らしながらバインダーを取り出して、おさむの情報を記入すると、記入された紙をバインダーに綴じだ。


「あーあ、今日はもう帰るかなぁ~。お疲れ様~」


 オレンジ髪の幼女は周りにお疲れ様でしたと告げ、足早にその場を去っていった。

 残された水色の髪の女性はというと――。


「なんだよ、あいつ。昔からいるって気取ってるんじゃねぇよ。マジ先輩ヅラすんなって感じ~」


 悪態をついていた。

 あ、まずい。悪口を言っているところに、幼女が帰ってきたぞぉ~(にやけづら)。


「忘れ物してしま、った……」


 話をちょうど耳にする。近くのデスクに座る人は、顔を見合わせて、残念そうな表情を作った。延々えんえんと続く独り言に、にこりと笑いかけて、若干嘲笑ちょうしょうしているようにも見えた。


「おい、今なんか言ってなかったか?」


 オレンジ色の髪の幼女は額に怒りマークを浮かべ、明らかにやばそうな剣幕を漂わせる。

 その表情は殺意に満ち満ちていて、二十歳の心をえぐりとるように、視線を尖らせた。


「え? 誰かなんか言いました?」


 逝ったーwwwこれは完全に逝きましたわwww

 違う。草はやしてる場合じゃねぇ(真顔)。

 まさかのとぼける形で、嘘をつく。言ってないですよと、お茶を濁すという定番の手段を使わず、敢えて鬼畜ルートを選ぶあたり、貴様っ、Mと見た!

 違うそうじゃない。特に最後。


「あっそう」

「ところでなんでまたここに?」

「あぁ、忘れ物しちゃったんだぁ~」

「へぇ~。優秀な人でも忘れ物するんですねぇ……」

「あはは、私は優秀でもなんでもないよ。でもありがとー!」


 オレンジ色の髪の幼女は、気にかける様子もなく、見事丸め込まれた。と思われた。そして。


「なんてな! 騙されたと思ったか。全部聞こえてんだよ。それに何、媚び売ってるんだ。見苦しいぞ!」


 青い髪の女性の首根っこを掴んでぶん投げた。

 女性は壁にあたり、デスクが何席か吹き飛んだ。壁にめり込み、女性は意識を失った。


「はっはっは! どうだ。圧倒的ではないか我がぐn……っ!」


 オレンジ色の髪の幼女は背後から来た上司に気が付かなかった。頭頂部を殴打され、泣き目をしたその日は、もう定時ですぐ帰った。


「何してるんだか。阿呆かお前は」

「ご、ごめんなさい。もうしません……」

「そういってこれで何回目になる。両手じゃ足りん」

「ごめんなさい……」


 ・プロローグが長すぎた結果

 オレンジの色の髪の幼女、帰宅。すぐさま服を脱いでベッドにダイブした。


「はぁ〜あ。今日も上司に怒られた……」


 涙を拭いながら、一日を振り返る。怖そうな上司の顔や、青い髪の女性の顔ばかり頭に思いつく。


「もうやだぁ〜」


 幼女の担うのは、下界に来た者の補佐や調査などを行い、研究するものだ。年は関係なく、すべて成績主義の民間企業であった。そのため、年齢がいったおばさんの……、お姉さんの幼女は、ある程度の地位の社員として働く。

 どれだけ人生経験をもってしても、高い評価を得られないってのが社会の闇。嫌だね。

 気分転換にお酒をあおろうと考えた幼女は、冷蔵庫にある缶ビールに手を伸ばした。

 ガチャ――。

 静かに扉が開かれる音がした。足音はない。まるで幽霊がでも入ってきたんじゃないかと思った。

 今、目の前にあるリビングと廊下をつなぐドアのガラスに人影が映った。ゆっくりとドアが開かれていく。

 そこにいたのは――。


「あぁ、いた! こらあぁ! ダッシュの乱用するんじゃねぇ!!」


 えぇ、そこおぉ?!

 というか、なに勝手に入ってきてんだ、こいつ。

 あたしの庭園(家の中)に無断で入ってくるとはいい度胸じゃねえか。


 そこにいたのは、朝に下界で出会った理という人だった。

 上下スウェットという寝に来たと言わんばかりの風貌≪ふうぼう≫は、ちょっとイラッときた。


「え? え? なんでいるの?」

「歩いてきた」

「はぁ?!」


 ここは天界。異世界の雲を突き抜けた先にある、不思議な世界。人を殺すことも、助けることも出来る。

 だが問題は、そんな世界に人がというのだ。さきほども述べた通り、天界は空高くにある。ジャックと豆の木現象でも起こらない限り上ってくることはできないはず。


     *


「というか、なに、ここ」


 と理は言う。

 部屋の中は散らかっていて、キッチンから酒を持った肌着一枚の幼女がいる。

 それにこっちが聞きたいわ。なんで来た。


「いや、帰れよ。疲れてんの!」


 と幼女は言う。

 こんな不思議な人間とひとつ屋根の下は危険だと、幼女の本能は言っていた。


「は? 何言ってんだ。天使なら疲れねぇだろ?」

「天使じゃねーですぅ〜」

「うわ、うざ。俺、天使以外に興味ねぇぞ?」

「お前の好みとか知るか」

「さっきから口調変わりすぎ案件は?」

「殺すぞ」


 殺伐としたこの部屋の中に、酒を持った幼女と、上下スウェットの寝る寸前の男がいる。ふたりは硬直したまま、会話を弾ませた。


     *


「今日はもう暗いしお家帰れない。泊めろ」

「おまえみたいなやつは泊めんよ。事務所いけ」

「俺みたいなやつってなんだ」

「キモオタクソヒキニート」

「うっせー! 殺すぞ!」

「どっかいけよ!」

「どっかいくわ! じゃーな!」


     *


 と理は言い、家の外出た。

 がしかし、出た瞬間思った。


 事務所ってどこだ?!


 ・家に泊めてくれなかった結果

 くそっ。あいつなんだよ。家に泊めてくれるくらいいいじゃねぇか。

 男一人、理は真夜中に路頭に迷っていた。そんな未来に不安を抱きながら、脚の蚊に刺されたところを気にしていた。

 真っ暗なのは、この風景だけでなく、自分自身の心と未来なのを思うと、なんだか無性に泣きたくなった。

 でも、すぐそんなことを思わなくなった。

 だって、真っ暗なのもう一つあったんだもんなぁ〜。そう。あなたの心です。指を常闇に向けたが、冷たい風が吹き付けるだけで、心と指が冷たくなった。


「ああ〜。どうすっかなぁ〜」


 そんなことをつぶやきながら、脚をかきむしっていた。

 道路にいた一人のスウェット男は、ここを異世界ということをあまり信じたくなかった。どう見ても現実世界と何も変わらない。ビルに光がともり、それが町明かりになっている。歩道の脇に立つ電灯も。その間隔に立つ木々も。そしてこの寒さも。なにもかも現実世界に近くて、自分が死んでしまったということを不思議に思うことしかできなかった。

 すると、正面から、ひとりのスーツ姿の男が歩いてきた。どこかはかの帰りだろうか。しっかりと着こなされた礼服だった。形は人間そのものだが、何分身長が大きそうに感じた。

 男は真剣な眼差しでこちらを見るもので、少し怖くなって目をそらした。

 すぐ横を通り過ぎる時、チラッと見てみた。男はじっとこちらを見つめていた。

 そんな熱い視線を注がれと、ゾクゾクしちゃう!

 俺はゲイじゃないから、そんなことを思ったわけではないけれど、なんだか、良くないように思っていたりとか、殺気(のようなもの)を感じた。

 逆にあいつはゲイなんだろうか? あ、振り返った。え? なんで走ってくるの? 超怖い……。ヒィ!

 ガシッと腕を掴まれて、顔と顔の距離が異常に近くなるように、引き寄せられた。


「お前、なんだ? さっきから。俺のことバカにしてんのか?」


 顔が近くなると、視線が泳ぐようで、その人はさらに俺のことを強く言った。俺は蚊に刺された脚を無性にかきむしりたくなった。不安で不安でいっぱいだった。

 男は続けて言う。


「俺は、ジョン。お前は?」

「お、俺は、まこと。水飼理だ」


 ジョンは不思議そうな顔をして、すぐに血色を変えた。態度もすぐ変わった。

 真っ青に染まった顔がなんだか、嫌いなものやまずいものを口に入れてしまったようだった。


「理さんでしたか。申し訳ございません。理さんとは知らずに。ご迷惑おかけしました」


 ペコペコとジョンが謝っている姿を見ると、なんだか身の毛がよだつ感じがした。背筋が凍って、筋肉が硬直するような。蚊に刺された脚はもうかかなくてもかゆみはとれていた。


「で、誰……?」

「あれ? 私が事務所から伺うことお聞きしていませんか?」


 いや知るかよ。って事務所? あのオレンジ髪の幼女が言ってたやつか?

 でも怖いよなぁ。本当についていいても大丈夫なんだろうか。いろんな不安が脳裏をよぎる。

 ジョンも不思議そうな表情をして、なにやらぶつぶつ呟いていた。

 そんなことを思っていると、ジョンの方から声をかけてきた。


「どうされました?」

「いや、誰がそんなこと言ったんだろうと思って」


 ジョンはすこし考えたように頭を下げると、抽象画を語るかのように話をはじめた。

 俺は息を飲んで、この人は大丈夫な人か見定める目を向けた。


「えっとですね。オレンジ色の髪の人型で、小学校1年生くらいの見た目なんですが。それに加えて、ちょっとバカっぽくて暴力的なところがあって……」

「オーケー。それ以上は言わなくてもいい」


 確実にあいつだった。


     *


 なんやかんやあって、俺はジョンと一緒に事務所にいた。

 事務所は結構広めで、総合商社だか、なんだか言っていた気がする。もう忘れた。

 忘れるのが早いって? 舐めるんじゃねぇぞ。俺は以前に3歩どころか、3秒で忘れる、鳥頭以下って言われたんだぜ。

 何誇ってんだ!

 称号って嬉しいもんだろ。

 ついてけねぇよ。

 それでオフィスらしき場所にはいくつものデスクがあり、ひとつひとつにパソコンや書類が載っている。天井から何か釣り下がっているが、文字らしきものは読めない。


「そういえば理さんはどうやってここまでこられたんですか?」


 ジョンは唐突に話を切り出した。

 俺は鳥以下の頭脳で思い出そうとする。


「いや、なんか。ここを見つけて、木を登ってきたらついてたんだ」


 なにを言ってるかわからねぇと思うが俺にもさっぱりだ。


「え……」

「そうそう、そういやあいつ誰なんだろ」

「なんにも聞いてないんですね。あの人らしいというか。馬鹿というか」


 刹那。たらいがジョンの頭めがけて降ってきた。

 ジョンは頭をヒリヒリとさせ、さすった。


「いてて……。あ、そうそう。話の続きでしたね。あの人は実は部長なんです」


 切り替えが鬼早い。実は痛くないのでは?

 すると俺の頭の上にもたらいが降ってくる。

 まじなんだよ。


「ははは。なにか変な事考えたんですね」


 陽気に笑ってるが、結構痛いんだぞこれ……。くそっ。幼女のくせに。

 あ、いてっ!

 たらいが降ってきて、ダイレクトヒット!

 you win!!

 しばらく縮こまって悶えていたが、立ち上がって思い出した。


「ん? ちょっと待てよ。あいつ課長なのか?!」

「ええ。あなたのような死んでしまった人達を保護する部のものです。私はその部に務めるものです」

「あんなのの下っ端とか大変だな……」


 俺にたらいが降ってくる。

 多分そろそろ、脳の血管1本くらいちぎれる。まずい。非常にまずい。

 もう考えたら負けだな。

 そう思いつつ、話を聞くことにした。


「大丈夫ですか?」


 ジョンは笑ってそう言った。


「あの人、結構働けるのに、なぜか昇進しないんですよねぇ~。こんなたらいの装置作ってるのが悪いんですよ」

「あっそう」


 興味無さそうに返す。たらいは降ってこない。

 あいつ何者なんだ。いいやつかと思えば阿呆だし。よくわからんぞ……。


「あいつあいつ言うので、一応名刺をお渡しいたしますね」


 名刺もあるのか。どれどれ。

 名刺にはあの幼女の顔写真とその横に名前が載っていた。やっぱり読めない。その下に斜体しゃたいで、なにか書いてあった。


「これなんて読むんだ?」

「あ。文字読めませんか?」


 完全にバカにしてる顔だ。文字読めないのはそんなにやばいのか。

 くそくぅ、めんどくせぇ。


「あのぉ~。文字読めないと、ここに居られないんですぅ~」


 早々に退社してください。ジョンはそう言った。

 それから俺の頬を叩いて、ぶつぶつ何か言っていた。


 ・展開が早すぎな結果

 俺は事務所の階段を降りていた。来た時はエレベーターに乗せてもらったが、今は非常階段で降りている。

 なにやらバレたらまずいらしい。

 非常階段は外に立て付けられているのだが、ガタガタゆれて怖い。それに風も強い。

 たった2階から1階に降りるだけだというのに、なんでこうも焦らばければならんのだ。

 多少イライラしつつ、一階の踊り場についた。

 そこで俺はとんでもないミスをしてしまった。


「視界が歪んで見えるんだけど……」


 階段からこけた。踏み外して、一番下まで転げ落ちた。

 一番下についた時点で意識は完全になくなっていたが、途中、ジョンがニヤニヤ笑ってこちらを見ているのが見え、気に食わなくなった。

 空は真っ暗で、脚がかゆくなった。


 ・エピローグ

 いてて……。ん? どこだ、ここ。

 森のような林のような、そんな場所に理は横たわっていた。景色に見覚えはなかった。

 起き上がると、体のあちらこちら痛くて、座り込んでしまった。

 天気はよく晴れていて、目の前にオレンジ色の髪の幼女が見える。

 え。オレンジ色の髪の幼女?





 あとがき

 こんにちは。夜に見ている人がいるかもしれないでしょう? じゃあ、こんばんは。朝に見ている人には? おはようございます。

 もういいじゃないか! 誰が見てようと「どーも」でいいじゃないか!

 どーもなんて言ってないじゃないか。

 おっ、そうだな。

 ということで、どーも皆様。小説を書こうとすると、度々空きが出来て、1話でガラッと印象が変わる里憂です。

 あとがきですが、なにも書くことが思いつきません。ですので、たこ焼きの中に入れると美味しものでも語りましょうかね。個人的にはベビースターが……。

 どーも皆様。抹茶パフェです。

 さて、前部は1日で完成させ、全力でノリと勢いに任せて作りましたが、本部も同様になってしまいました。他方面の作品制作に専念していたためですね。これからも新人賞にかけるつもりなのですが、やはりこちらも進めたいということで、2日~3日かけて(長い間の期間を設けてしまいました……)制作いたしました。1話間で中身が大幅に印象が変わるのは、期間を設けてしまい、作品全体の印象を忘れてしまったためです。作品を楽しんでくださっている皆様に置かれましては、大変ご迷惑をおかけしています。スケジュール管理をしっかりして今後も制作に励めるように頑張らせていただきます。

 長々と書いても面白くないので早々に切り上げさせていただきます。

          謎展開を繰り広げ続ける里憂&抹茶パフェ

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