第4話「けっせんち」


「うーん、うーん……やっぱり重たくって持ち上げらんないよ、イリエちゃん」



「あーっ、まるで私がデブみたいに、ひど!」



「違うよ〜、イリエちゃんの尻尾が大きくてそれが重くて……あーあ、私がもっと力持ちならなぁ……」



「そんな無理しなくていいよ、空の散歩なら、他の子に運んでもらったら空の散歩もできるじゃない」



「私は、イリエちゃんと2人っきりで空を飛びたいんだよぉ〜」



そんな思い出がイリエの脳内に蘇る。紛れも無い本当の思い出、嘘偽りの無い心の中の輝き。



「キンメちゃんの羽は、私を運んで空を飛べてるよ……! セルリアンの力をちょこっと奪ってやったら力が漲ってくるんだ、だから、また、キンメちゃんも私の体から引き剥がして、また一緒にお喋りしたかった、なのに」



地面に倒れ伏せるはかせ、イリエはそれを空から見下して睨みつける。



「私が、にせものの記憶を植え付けてるだけなんて、うそ、そんなの認めたら、私は、私は!」



イリエの巨大な羽根は光り輝き、そのまま雨のようにはかせへと降り注ぐ。羽根の一枚一枚が強力鋭利な刃というわけだ。



「おわりだ、はかせ! 私ににせものだなんて言ったことを、後悔しなよ!」



「う、ぐゥ」



はかせはその身を起こそうとするも力が入らず、避けることも叶わない。イリエに追いつく速度で飛行することで体にむちを打ち、さらにはイリエに面と向かって戦い、叩き落とされた負傷。じょしゅもイリエに力を吸われ墜落、リカオンもハシビロコウも、アードウルフに触れたことで動けない状態に。この場に居る誰も、はかせを守ることはできない。



「あああぁぁぁッ!!」



そこに、アードウルフが走ってきて、はかせの前に立ちふさがる。



「アードウルフ!? なにをしてるのですか!」



それはすなわち、イリエの羽攻撃を浴びてしまうことを意味している。その全身に攻撃を受け、アードウルフは背後へと吹っ飛んだ。



「あうゥッ!!」



「ばかなことはやめるのです!」



目の前に転がってきたアードウルフに、はかせはそう声をかける。アードウルフは目から涙を零し続け、自身の肉体から零れ落ちる、いくつもの立方体の結晶を見て、表情に影をつけた。



「私、セルリアンだから……! だから、フレンズがしんじゃうより、私が、しななくちゃ!」



「何言ってるの、ばか! どきなさいよ、私ははかせを消したいの! こんな、酷いこと言うやつ!」



イリエの叫びも、アードウルフには聞こえてないようだった。羽がいくつも突き刺さり、なのに痛みの一つも感じない自分の体を嫌悪しながら、イリエに向かって走り出す。



「私が……!」



アードウルフの決死の体当たりを、イリエは飛んで避けてしまう。



「いいよ、アードウルフには元々用があったし、私と同じ完全なカロ・セルリアンになりなよ! ハシビロコウもリカオンも、仲間にしちゃえ! そしたらアードウルフだけが怖がられたりしないさ!」



すると凄まじい速度で飛行、アードウルフへと突進し、その右手を光らせる。



「やめるのです!」



そのイリエの真横から、茂みに隠れていた「じょしゅ」が突撃。イリエの体を鷲掴みにして飛行の軌道を逸らし、共に川へと落ちた。



「じょしゅ!」



はかせが助けに向かおうとするも、既にはかせは瀕死、全く体が動かない。



「ヤバい……じょしゅも、泳ぐ体力なんて無いはずだよ……!」



リカオンが無理やり立ち上がろうと力を込めても、手も脚もガクガクと震え、動けない。ハシビロコウも全く同じ。するとその横を駆け抜けて、川に飛び込む者がひとり。



「コツメカワウソ!?」



はかせから漏れる驚愕の声。目覚めぬジャガーに涙していた彼女も、イリエ出現による異常たる雰囲気を察し、じょしゅ救出へと体が動いた!



「じょしゅを助ければいいんでしょ!? 任せて、泳げるから!」



水中を捜索。しかし水中に目が慣れるより先に水飛沫をあげて水上に現れたのはイリエだった。その勢いのままコツメカワウソを吹き飛ばし、瞬時に陸地へ上がる。その速度を殺さないままアードウルフへと迫る。



「うああっ!」



コツメカワウソの悲鳴、そしてアードウルフは悲鳴のひとつもあげる間もなくイリエの右手に頭を鷲掴みにされた。



「ぅぐ!」



「私のサンドスターを分け与えてあげる。そうすればあなたは完全なカロ・セルリアン。ジャパリパークのみんなを幸せにする為に私と働きましょう?」



かがやき。それを送り込まれるアードウルフ。もちろんただのサンドスターではない、セルリアンのエネルギーも内包したサンドスター。アードウルフはもはや叫ぶのみで、抵抗することなど……。



「嫌、だ……私は、フレンズとして、ハシビロちゃん、リカオンちゃんと、出会えたの……セルリアンなんかになってまで、思い出を守りたくなんかないよ!」



そう言うと自身の肉体に刺さったイリエの羽を抜き取り、それをイリエの右手へと突き刺した。



「なッ!? あ、うぐアアァ!!」



その強烈な一撃にイリエはアードウルフを手放して仰け反り、自身の腕に突き刺さったキンメフクロウの羽を睨みつける。次第に右手からはかがやきの光が無くなり、それどころか右手は黒ずんでしまった。



「こ、の、恩知らずがぁ!!」



イリエは尻尾の一撃をアードウルフの体に撃ちこみ、アードウルフは吹き飛ばされてあんいん橋の柱に打ち付けられて気絶してしまった。



「もしかしてあいつの黒ずんだ右手……力が弱まった証ではないですか?」



はかせがそう言うと、川からコツメカワウソがじょしゅを担いであがってきた。じょしゅは気絶。



「な、なんとかじょしゅは持ってこれたよ、でも、もう、私、しんじゃう……!」



陸に這い上がってくると共にコツメカワウソもぶっ倒れてしまう。



「この手じゃしばらくフレンズは助けてあげられない。一旦引くか」



「ま、待つのです!」



はかせの言葉も虚しく、イリエは川へと飛び込み逃げる。右手からしかサンドスター(+セルリアンのパワー)を流し込んだりできないのであるなら今のうちに倒しておきたいというのもある。しかし、逃げられてしまってはもう、いつどこでフレンズが犠牲になるか分からない。



「念のためにとジャパリまんをひとつ持ってきたのです、これで補給をして奴を追いかけることが出来るフレンズは……」



ジャパリまんを取り出して辺りを見回すはかせだが、意識があるのはハシビロコウ、リカオン、そして自分、飛ぶ速度で考えれば自分が行くのが1番だと判断。急いで食べようとするはかせの手を誰かが掴み上げる。



「お前は……」



「任せて」



彼女はそう言うとジャパリまんを一気に貪り、水中へ飛び込んでイリエを追う。一方のイリエ、川の中をグングン進んで行きみるみるはかせ達から離れていく。



「羽根がひとつ刺さっただけでここまで壊れちゃうなんて、私の体もまだ不完全なのか? まあいいさ、頭も冷えた、はかせのやつを倒すのは後回しだね、パーク中のフレンズを助けてあげないと」



「一体あなたがなんなのかは全然わからない、けど」



「え!?」



イリエの背後からの声、ワニのフレンズの特性を活かした水泳能力に追いつくフレンズ! それは!



「他のフレンズの子みたいな、良い子じゃないってことは分かる!」



ジャガー! ネコ科の中でも泳ぎを得意とする動物の特性を活かし、先ほどのジャパリまん即席補給のエネルギーで復活! 爪をイリエの尻尾に突き立て、しがみ付く!



「な! ジャガーか、くそ、離せ!」



「そうはいかないよ、コツメカワウソをずいぶん痛めつけてくれたよね!」



そのまま尖った歯をイリエの首に突き立てる! ジャガーの顎の力を活かした必殺の一撃。



「うあアア!」



もはや泳いではいられないほどの強烈な力に叫びを漏らし、イリエは自身の体全体をばねのように活かして川から陸へとジャンプ。当然食らいついているジャガーも一緒に!



「私がワニ『だけ』ならあんたの勝ちだった、かもね!」



着地して地面を転がる2名、それと共にイリエは羽を伸ばし、羽そのものを槍のように活かしてジャガーの眉間を狙う。



「うわ!」



ジャガーは身を逸らしてそれを避け、瞬時に腕の爪でイリエの胸を切り裂く。



「がはっ! 速い!」



「なっ……これは」



裂かれ、はだけた服から見えたイリエの胸、その谷間に光る石。それはセルリアンの石。そしてそれを囲むように無数の小さな目があり、ひとつひとつがギョロギョロと視線を動かしていた。その異質さに視線を奪われたジャガーは、気がつけばイリエの尻尾を顔面にモロに受け吹っ飛んでいた。



「ぐはッ!」



その勢いのまま木に激突。その衝撃で木は真っ二つにへし折れ、ジャガーは地面に倒れ伏せた。



「げほっ、ごほっ、ダメだ、もう、力入んない……くっ……はかせ、ごめん」



「セルリアンの石が見えたとこで油断したってところかな? ハンターには向いてないかもね、あんた。じゃあ、ひとまず元の動物に戻りなよ、この右手が治ったらフレンズに戻してあげるからさぁ!」



そのまま羽を広げ、まるで孔雀のように展開された巨大な羽からいくつもの羽弾丸をジャガー目掛けて撃ち出す。



「ウゥっ……!」



強く目を瞑り、死を覚悟したジャガーだが、羽弾丸が辺りに突き刺さる轟音のあと、次に辺りには静寂が訪れ、ゆっくりと目を開ける。



「ハンターか……お前みたいな不気味な奴にも果敢に挑む、ジャガーなら向いてると私は思うけどな」



「ヒグマ、それは私も同意見です」



ジャガーの前に立ちふさがる2人のフレンズ。ヒグマ、キンシコウ、それぞれ自慢の武器で羽攻撃を完全に弾き飛ばしていたのだ。



「立てる? ジャガー」



「あ、ありがとう」



キンシコウに手を引っ張られ、なんとか肩を借りて立ち上がるジャガー。ヒグマは武器をイリエに向け、睨みつける。



「さあ、お次は私の番だな、戦ってもらうぞ」



「……なんでここに駆けつけられたんだ、あんたら」



「まあ、ちょっと呼ばれたといいますか、ね?」



イリエの疑問に、キンシコウは答える。するとじゃんぐるの木々の茂みの中から小さなものがテクテクと歩いてやってきた。



「サバンナ付近にキケン反応、リカオン、ハシビロコウ、アードウルフが狙ワレテイルヨ、サバンナ付近にキケン反応、リカオン、ハシビロコウ、アードウルフが狙ワレテイルヨ」



そう喋りながら、目を赤く光らせ、体をピカピカ、音をビービー鳴らしながら落ち着きなく続ける『ラッキービースト』がそこに居た。ヒトも居ないのにここまで騒ぐラッキービースト、只事ではない。



「まさか……はかせとじょしゅだな、あいつら、私を追いかけながらラッキービーストに伝えさせてたのか」



「そういうことだ。胸にある石がお前をセルリアンだと示してくれて、敵が分かりやすくて助かったよ、さあ、私と戦ってもら……」



ヒグマがそう言い終わらないうちに、突如背後で爆音、振り向いた瞬間に木々が押し寄せてきて、その後ろには巨大なセルリアンが居た。



「なッ……セルリアン!?」



「おっとぉ!」



同じく、イリエの背後からも大量の小型セルリアンが押し寄せてやって来て、イリエは飛んでそれを避ける。



「くそ、キンシコウ、ジャガーは頼んだ!」



「ええ!」



ヒグマはキンシコウ達を押し退け、自分1人で武器を構え巨大セルリアンと倒れてくる木々をせき止める。この巨大セルリアン、じゃんぐるの中をバカみたいに木々をボコボコに破壊しながら直進でここに向かって来たと言ったところだろう。ヒグマがせき止めている隙にキンシコウはジャガーを抱えながら飛んで安全な方へと着地。



「くッ……武器は……もうダメか!」



ミシミシと悲鳴をあげる自分の武器を察知し、棒高跳びのように武器を利用して真上へと高く飛ぶヒグマ。そのまま無事な大木の枝に着地し、セルリアンの攻撃から逃れる。武器ごと飲み込んだセルリアンは勢いそのままにイリエへと向かっていく。



「わーるいねぇ、言ってなかったけど私、かなりセルリアンどもに恨まれててさあ、めちゃくちゃ狙われちゃうんだよね! 飛べるから怖くもなんともないけど!」



ケラケラと空中で笑うイリエの真下に、セルリアンは群がり集まり、全員がイリエを凝視して蠢いている。表情こそ無いが動きから感じられるその執念には狂気を感じざるを得ない。



「くそ……飛ばれちゃどうしようもない、うわ!」



ヒグマの立つ木に衝撃。下にはセルリアンが木の根元でヒグマをじろりと見て待ち構えている。落ちてこないかなとでも言わんばかり。イリエが狙われやすいと言っても、フレンズを狙う習性は変わっていない。ヒグマ達こそピンチに陥っているのだ。



「うおおーー! くらえー!」



するとヒグマを狙うセルリアンに、飛び蹴りをぶちかますフレンズが。



「あっ……リカオン! 何してるんだ!」



「ヒグマさん! 今助けますよ! あ! ハシビロちゃん、石見せたよ!」



「うん! はあーっ!」



ヒグマを助けに来たのはリカオン、そして連携でハシビロコウが空中から槍の一撃で突っ込む! 攻撃してきたリカオンへ視線を移してしまってるセルリアンは隙だらけ、その石を確実に貫いた!



「や、やった! 討伐数1!」



セルリアンを撃破して喜びの声と珍しい喜びの表情を浮かべるハシビロコウ、空を飛んでるのも相まって、正に「浮ついた」状態に。そのおかげで空中でバランスを崩してしまう。



「わ! わ!」



「ハシビロちゃん! そっちに突っ込んだらセルリアンに食われちゃう!」



「全く……!」



叫ぶリカオンとは裏腹に、ヒグマは冷静に後ろ髪を撫でて木から飛び降りる。そのついでにハシビロコウを空中で抱き抱えて着地、危うくイリエに群がるセルリアン軍団に突っ込むところだった。



「あ、ありがとう……」



「まったく、褒めてやろうと思ったらこれだ。でも、助かったよ、ありがとう2人とも」



ハシビロコウを抱き抱えたままセルリアン達から距離を取り、リカオンのところへとやって来るヒグマ。ハシビロコウを地面に降ろし、リカオンの頭をくしゃっと撫でる。



「へへ……助けにきてくれてありがとうございます、ヒグマさん」



「とんでもないことに巻き込まれてたんだな、リカオン、ハシビロコウ」



こくりと頷くリカオン、ハシビロコウ。ヒグマは振り返り、イリエを睨みつける。



「悪いがセルリアン並みにパークを荒しまわるお前は許して置けない、倒させてもらうぞ」



「できるかな? そんなこと……」



するとイリエは頭の羽根から弾丸を、真下に群がるセルリアンに撃ち出す。避ける間も無くセルリアンの数匹に直撃し、消滅。その際周りに散らばる細かなキューブ状の物体。それが空を舞い、イリエの肉体へと吸い込まれていく。



「何をやってるんだ……? セルリアンの肉体を吸い込んだ?」



突然の現象。キンシコウ、ジャガー、ヒグマ、リカオン、ハシビロコウはそれを凝視し、そして戦慄する。



「ガハッ……ハァ、ハァ、これやるとキッツイんだけど、ここまでセルリアンに嫌われるのは想定外だったからね……悪いけどみんな、動物に戻ってもらおうか」



イリエの目は何色とも形容しがたい、めまぐるしく変わる発光色を放ちながら笑みを浮かべる。彼女の柔肌には青黒い筋が浮かび上がり、辺りにはサンドスターのエネルギーが漏れ、電気が発生していた。



「嘘だろ……?」



ヒグマから漏れた戦慄の声。先ほどまでイリエに首ったけだったセルリアン達は、ゆっくりとヒグマ達の居る方へと不気味な目玉を向ける。そして完全に焦点をヒグマ達に合わせたのち、全速力で走ってやってきた!



「セルリアンの標的から逃れたのか! クソ! みんな走れ! 10体以上は居る、勝てない!」



「は、は、はい!」



全員即座に振り向いて全速力で走る! 森の入り組んだ地形ならうまくいけば逃げきれる可能性はあった……! しかし!



「しまっ……森はさっきの巨大セルリアンが破壊してる、こんな大きな道を走り続けたって絶対追いつかれる!」



ヒグマはリカオン達の背中を強く押し、振り返ってセルリアン達を見据える。



「え!? ヒグマさん何して……」



「走れ!! 私が時間を稼ぐ!」



武器も持たず万全ではないヒグマ1人で無数のセルリアンに挑むというのだ。けものプラズムを使って武器を生み出せばサンドスターが消費されてしまう、そうなれば戦闘に使うエネルギーが枯渇する。素手で挑むしか……!



「と、ところで、リカオンにハシビロコウ、どうして動き回れるんだ? お腹が空いてたはずでしょ」



ふとキンシコウにおんぶしているジャガーが呟いた。そういえばハシビロコウもリカオンも瀕死だったはず、立ち上がる体力すら尽きていたはず。なのに……。



「それは、平原から助けに来てくれたから……」



ハシビロコウがそう言った瞬間、迫り来る無数のセルリアンが地面に落ちていた何かを踏んで転倒。なおも走って来た勢いで突っ込んでくるが、ヒグマの前に3人のフレンズが立ちふさがる。



「よよよ……!」



「この程度、防いで見せますわ!」



「群れとしての力、見せるとき、ですぅ〜!」


その3人が攻撃を防ぐ隙に、全速力で武器を構えて突撃する者が。



「やあやあ私はヘラジカだぁ! 全員まとめて相手してやるぞぉ!」



勢いに乗せた巨大武器の薙ぎ払いの一撃! 地面を抉り取る威力のそれはセルリアン十数匹をまとめて吹き飛ばす!



「いやぁ〜、マキビシの術でセルリアンを転ばせて、拙者のおかげで作戦成功でござる〜!」



「えぇ〜私だってセルリアンをせき止めたよ!」



「私の防御も役に立っていましたわ!」



「もう疲れた、ですぅ〜」



やいのやいの、そんな言い合いをする4人。そして大声をあげるものが1人。



「みんなよくやってくれた! これも私の立てた作戦のおかげだな!」



「いや、ヘラジカ様以外のみんなで考えた作戦でござるよ〜」



「そうだったか?」



「ヘラジカ様の考えた作戦はいつも通りの「全員で突進」でしたわよ」



「たしかそうだったな! すまん!」



そんなやりとりをする5人の助っ人。それは平原をナワバリとする、ハシビロコウの仲間たち! ヘラジカをリーダーとするパンサーカメレオン、アフリカタテガミヤマアラシ、オオアルマジロ、シロサイのチーム! 彼女たちもハシビロコウがピンチだと聞いて駆けつけてきたのだ!



「さあ、あの飛んでるやつがイリエとかいうやつだったか、はかせ!」



「そうなのです。ヘラジカ」



イリエを見上げて睨みつけ、ヘラジカは叫ぶ。その横にはかせ、そしてじょしゅが飛んできて降り立った。



「ヘラジカ、お前たちがじゃぱりまんを持ってきてくれたおかげで助かったのですよ、ありがとうなのです」



「気にするな! それにじょしゅ、私じまんのハシビロコウのピンチを知らせてくれてありがとう!」



「ふん、おまえならすぐに助けに来ると思ってたのですよ、まさか5人も揃って来るとは思わなかったですが」



「平原のことならライオン達に任せてある、安心だ」



じょしゅに向き直し、礼を言うヘラジカ。少し前、イリエを追いかける飛行中に墜落したじょしゅだったが、たまたま落下地点にいたラッキービーストを『ちょいちょい』して音声を録音、助けに来るであろうフレンズの居るへいげん、ハンター達の居るちほーのラッキービーストに拡散させたのだ。



「気にするなです。おまえがじゃぱりまんを持ってきてなかったら全員やられていた、礼を言うのはこっちなのです、ヘラジカ、あと他のやつ」



「扱いが軽い、ですぅ〜」



「じ、じまんのハシビロコウだなんて……」



ヘラジカのセリフに照れを隠せないハシビロコウ。顔を赤くして俯いていると、パンサーカメレオン達が寄ってきた。



「ハシビロコウ殿、見てたでござるよ!」



「あんな大きなセルリアンを倒すなんてすごいじゃん!」



「かっこいい、ですぅ〜」



「フフ、私たちも負けてられませんわね」



「あ、ありがとう、みんな……!」



「ここからが本番って感じのようだな、見ろみんな、どんどんセルリアンが集まっているぞ!」



ヘラジカが指差す方向、遥か彼方からもセルリアンが押し寄せて来るのだ! 振動、破壊音、そしてイリエの高笑い。それが辺りに響く。



「当たり前じゃない、はかせみたいなやつが長なんかやってるこんなジャパリパーク、一度滅ぼすって決めたんだ。セルリアンはみんな私の味方。おまえらなんか食われちまえば良いんだ! アハハハハ!」



巨大化した翼、牙、尻尾を光らせ笑う。サンドスターとセルリアンの力の相乗作用。しかし所々には亀裂が入り、パラパラとサンドスターが零れ落ちている。



「みんな、群れとしての力を見せるときですよ、野生解放のときです!」



エネルギーの大量消費と大量吸収を繰り返している身体構造、それがイリエ、つまりカロ・セルリアン完全体の実態だ。命を焦がしながら、ジャパリパークそのものへと宣戦布告を仕掛ける!



「ジャガー!」



「ぅわっ!」



一方、あんいん橋からかけ走ってきたコツメカワウソがジャガーへと抱きつく。そしてヘラジカ達から貰ったであろうじゃぱりまんをジャガーの口へとねじ込んだ。



「むがむぐ……」



「無事で良かった! 無理しちゃダメだよ、そんなボロボロになって……ばか!」



「ごくっ……ご、ごめん。でも今ので回復したよ、私たちの力、見せてやろう」



「うん! いくよー!」



迫り来るセルリアン、そしてイリエ。皆は目を光らせて野生解放。持つ力全てをかけて対峙する! はかせ、じょしゅ、ヒグマ、キンシコウ、リカオン、ジャガー、コツメカワウソ、ハシビロコウ、ヘラジカ、パンサーカメレオン、アフリカタテガミヤマアラシ、オオアルマジロ、シロサイ。13人のフレンズに、ジャパリパークの未来は託された!

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