第18話 言ったじゃん、合唱部入ればって

そうして、私は遅れてアパートを出た。

秋人くんから貰ったこの部屋の鍵が、鞄の奥へことりと音を立て沈んでいった。


 iPodから流れる一昔前の洋楽を聴きながら、

電車に揺られること数十分。そこから少し歩けば、私と秋人くんの通う高校がある。

今日の天気は晴れ。海も穏やかだ。


港ケ崎。《ミナトガサキ》ここは海と生きる町。

港ヶ崎高校でまた1日が始まる


「おはようまゆ

「おはよう生田いくたくん」

 私の顔を見た瞬間、パッと顔を輝かせ

秋人君はそうやって、私の名前を呼んだ。

 朝、一緒にいた時と同じ笑顔に引き寄せられるかの様に、私も釣られて笑う。


「羽純が笑った、、」

 私が笑ったことは相当驚いたようで

クラスの皆が、あの羽純が

と、、ざわざわと騒ぎだした。

「羽純って笑うんだ」


「私が笑うのって、そんなに可笑しい?」と

ぼそり、ひとりごちると

まゆが笑うのなんてレアだからだよ」

秋人くんはそう、小さく笑った。


「ってか生田いくた羽純呼び捨て?」

「どう言う関係??」

あっ、やっぱりそうなりますよね、、。


「どういう関係かなんて、

お前たちに言う義理ねーよ」 

鼻で笑うように秋人くんはそう吐き捨て、私のレア(とされる)笑顔の件は終了となったのだった。



閑話休題


まゆごめん、終わったら残ってて」


「?わかった」


「連れていきたいところがあるんだ」

そう手を引かれ、連れてこられたのは



〜♪ 

「綺麗な声、、、」


「どうして、生田いくたくんは私をここへ?」

 合唱部の活動する音楽室だった。


「ほら、俺、前言ったじゃん、合唱部入ればって」



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