第16話 ちいさな二人の世界

「おはよう」

「まーゆーさーんー??」

「おーきーてー」

遠くで声が聞こえる。聞いたことあるこの声は、、

べりっと効果音が付くように布団が剥がされた。

寒い、眠い。


「お兄ちゃん、、もう少し寝かせてよ」


「俺は、お兄ちゃんじゃないけど??」

その薄く笑った声にようやく私は覚醒した。

バチりと目を開け、飛び起きる。


「おはようまゆ

「おはよう、秋人あきとくん」

ちょっとぎこちなく挨拶したのはちょっと恥ずかしいからだ。きっとそうだ。見慣れない男の人にドキドキしてるなんて言えるわけないもの。


まゆ?」

「ひゃい!」

「朝ごはん出来たよ」

ことんとワンプレートのお皿が2つ、ダイニングテーブル…代わりのダンボールの上に置かれた。

このダンボールはお互いの家から必要な物を送られてきた時のダンボールである。

布団はあれど家具は無い。

その為、ダンボールがせいぜいのテーブル代わりというわけなのだ。


朝ごはんはバターが塗られたアツアツのトーストに卵焼きとベーコン、そしてスープとサラダ。

ワンプレートに盛られたご飯は喫茶店のモーニングの様。


「ありがとう、、作って貰っちゃって申し訳ないです」

ぎこちなく敬語のまま、そう言った。


まゆ俺といる時は敬語禁止」

メッと言うように少ししかめ面をして秋人あきとくんは小さく私の言動を嗜める


「わかり…わかった」


「早く食べよう、冷めちゃうからね」


美味しいものは美味しいうちに食べたいのだと

とても嬉しそうに秋人あきとくんは言う。


「「それでは、いただきます!」」


「「おいしいー」」


ちいさな二人の世界。今の時間は正しく幸せだ。


「ねぇ、秋人あきとくん」

「なに?」

サラダを食べながら私は秋人あきとくんに提案をする。


もぐもぐとパンを咀嚼しながら、秋人あきとくんは答える。


「週末、家具を見に行きませんか?」

「ダイニングテーブルとか、食器とか」


「いいね、2人で色んな家具を見に行こうよ」



このちいさな二人の世界を二人の大好きで埋める為に。


2人で顔を見合せて笑う。

なんだか今日は最高の一日になりそうだ

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