共同生活編

第15話 未成年者特例婚姻法

「あ、まゆ今日から、俺たち早速共同生活だから」

一緒だよ嬉しいねー!!とばかりに、

手を繋いだまま秋人あきとくんはブンブンと手を横に振る。

残像?幻覚?尻尾と耳が見える気がする。



「えっ!!?」

突然の共同生活はいくら私でも想定外なことで、

私は思わず声を上げた。

キラっと効果音でも着きそうなくらい爽やかに秋人あきとくんは笑う。

夫婦になるとはいえ、住処まで与えられ共同生活とは国も手が込んでいるなぁと私は感心する。


2人で暮らす共同生活の場所は実に良くあるアパートの一室だった。

それほど広くはないけれど2人なら十分だろう。

築15年、2DKのこれからの私たちの場所。


ちいさな二人の世界。


まゆこれ、読んでおいて」


部屋に入り早々に私は冊子を渡された。

今回の婚姻にあたっての注意事項などだろう。

だが、読み進めるにつれ、この文書を

真面目に読むのは無謀だったことを知る。

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未成年者特例婚姻法 

第一章 総則

第一条 この法律は、日本国憲法第二○○条に規定する理念に基き、国が未成年の国民に対し、必要な保護、教育を行い、選考された未成年の男女に際し一定期間の共同生活を共にし、婚姻関係を発展させることを奨励するものである。

なお、国は一定期間の共同生活の際、最低限度の生活を保証する。

(無差別保証)

以下略、、、。


「あの、…難しすぎるのですが」

未成年者特例婚姻法は生活保護や福祉をベースに作られているそうだが、あまりにも要項が長い

私は活字は嫌いではなかったが、卒倒しそうだった。


「頭脳明晰 まゆくんでも難しいと思うよ」

同時に同じ冊子を読んでいたのに、早々に

読むことを諦めた秋人くんはそう言った。


「でも、一定期間の共同生活ってどれくらいなんでしょう?」


「3ヶ月」


「…へ?」


「3ヶ月共同生活をするんだって」


「よろしくね、お嫁さん?」


これから先不安すぎる3ヶ月が始まった。

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