第14話 約束しよう。これからの未来を

「ああ、約束しよう。裏切らないよ」

迷いなく生田くんはそう言った。

誰にでも平等に笑うあの笑顔で。

「だって奥さんを心配にさせる旦那なんてカッコよくないじゃん」

本気なのだと理解する。

いくら、’仮‘の関係だとしても


「じゃあ、帰ろうか、羽純《はすみ》


いや、繭《まゆ》」

 気づけば、2人しかいない教室は夕焼けの赤色に染まっていた。

海は乱反射してキラキラと瞬きをしている。

「あ、私の名前」

「夫婦だから、別に名前でもいいだろう?」

「っうん、そうだね」

家族以外に久しぶりに呼ばれた名前は、なんとなくむず痒く不思議な感覚があった。そして差し出された手を取って歩き出す。


 今日からはもう寂しく1人では無いのだと

期待と嬉しさを噛みしめながら。


生田いくたくん」

「秋人」

「え?」

「俺、秋人あきとって言うんだ、下の名前」

「だから、秋人あきとって呼んで欲しい」


秋人あきとくん」

「どうしたの?まゆ


「これから宜しくね」

「うん、これからよろしくね奥様?」


くすりと小さく笑う

どうか、この小さな幸せが続きますようにと

繭と秋人は同じことを思いながら笑い合っていた。


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