第3話 本当は…好き

羽純 はすみ まゆ

クラスの中でも目立たない部類の羽純はすみは俺にとって、すごく気になるやつだ。


席は隣。

授業をいつも真面目に聞いていて、図書委員で出席番号は23番。どこから学校に通っているのかは知らない。最寄り駅も知らない。

センセーから出席簿を借りて読んだから、自分のクラスの奴は一応全員覚えたから羽純はすみの出席番号も多分あっている、はずだ。

…多分。


羽純はすみは真面目に授業を聞いているけど、時々教室から見える海を見ていることがある。

その横顔からきっと、海が好きなのだろうなと思うけれど、天邪鬼な俺の口からは彼女が本当に海が好きなのか聞き出すことが出来ない。


…本当は話したい。羽純はすみと。

女子と話すとなんだか、恥ずかしいようなむずがしいような感じになる。


俺が羽純はすみに話しかけるのは迷惑だろうか?と思いながら、

思い切って話しかけたら、「は?」と冷たい目を向けられてしまった。

その時初めて羽純はすみと目があった。

「綺麗な歌声じゃん」と言っただけなのだが。

「は??」

「というか、私の名前…」

「名前ぐらい知ってる、羽純繭はすみまゆだろ?」

「え、本当になんで知ってるんですか、

気持ち悪い」

「同じクラスなんだから当たり前だろ?」


名前は知ってるに決まっている。

なんなら彼女の名前の漢字も知っている。

羽純はすみの名前はずっとずっと俺の脳裏に焼き付いて離れなかった。

「…知ってるに決まってるだろ」

思わず、小さく呟いたが、聞こえなかったようで安心した。

でも、気持ち悪いと言われたのは流石に凹む


「(同じクラスだから、当たり前だろ…

かぁ)」

我ながらキザなことを言ったなぁと思う。

隣の羽純はすみを見れなくて、前の席の男子とたわいもない話をしながら授業に再開したが、俺の心はドキドキと、煩かった。


本当は同じクラスだから羽純はすみの名前を知っていたんじゃない。


-俺、生田明人いくたあきとは隣の席の羽純繭はすみまゆが好きだ。


でも羽純はすみと俺を引き裂く出来事が俺と羽純はすみの間で起ころうとしていた。


-月に一度の席替えである。

俺は羽純はすみに席替えまでに告白したいと思っていたが、そんな俺にある知らせが飛び込んできた。


―主文は、羽純繭はすみまゆ生田明人いくたあきとを夫婦とすることを認める。


はああああああ!!??

思わず二度見ではなく三度見をしたのは、国家のプロジェクトとして俺と羽純はすみが選ばれたという内容の書類。

どうやら、俺と羽純はすみは夫婦になるらしい。

俺と羽純はすみが夫婦になることをを知らせる書類には、確かに俺と羽純はすみの名前があった。


羽純はすみと席が離れても一緒に過ごせるというわけか、やったぁ。


いやいや良くない。

羽純はすみ自身はどうなんだ。

グルグルとしながら書類を読んでいたら

妹の咲希さきが来て俺の国からの結婚通知書(※俺にとっては最高だけど)を見ようとしてきた。

咲希さき「何それー?お兄ちゃん?見せてー!」


嫌です。無理です。見せません。

はーー、明日からどうやって羽純はすみの顔見よう。


俺は国から届いた書類で顔を覆った。

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