第2話 クラスメイト

「は??」

この人は何を言うのだろうと思った。

ざわざわ、さらさらと鳴く海を見ていた私に授業という現実へと引き戻した彼へ

私は思わずこう言ってしまったのだ。

うん、悪くないと思う。


 「綺麗な声してんじゃん、合唱部にでも入れば?」

私を授業という現実へと引き戻した彼はそう続けて言った。


「はい??」

「というか、私の名前…」

「名前ぐらい知ってる、羽純はすみ まゆだろ?」

「え、本当になんで知ってるんですか、気持ち悪い」

「同じクラスなんだから当たり前だろ?」

羽純はすみ綺麗だし、合唱部でも入れる…」

「同じこと何回も言わなくていいですから!」

私は静かにしていたい。

合唱部なんかに入っても私は…

思わず下をむいてしまった。


「…知ってるに決まってるだろ」

「…え?」

もう、話し掛けて来た隣の席の彼、生田いくたくんは前の席の男子と笑いながら、授業を聞いていた。

さっき小さく何かを言ったような気がしたけれど、、、


 「…」

ただ話しかけられただけなのに、どきっとしたのは何故?


私はきゅっと軽く拳を握ったあとシャープペンを手に取り、自分も授業を聴くことを再開した。

(「同じクラスなんだから当たり前だろ?」)

私に話しかけてくる人なんて、ほとんどいないと思っていたのに、生田いくたくんは真っ直ぐに私を見て、ただ何でもない事のようにその言ったのだ。


「(同じクラスだから、当たり前だろ…かぁ)」

キザな人だなぁと思う

でも、どうしてだか、話しかけられてもいつもは男の人は怖くて、怯えてしまうのに、彼、生田いくたくんは怖くなんか無くて

地味な私に対しても優しかった。


クラスの人気者でスポーツ万能で、優しい。

私には届かない人だなぁと思いながら、私は海を眺めるのを止め、彼にバレないように、

生田いくたくんを眺めていた。

生田いくたくんに綺麗と言われたことも忘れて。

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