一章 9 伝説級の武器?

「!?なんでですか!?」


メアリーが声を上げる

クリスティアもウェルキンを見つめている


『理由を聞いてもいいでしょうか?』

「簡単な事だ。我々に付いてくれば確実に目をつけられる。万が一我々が失敗した時、関わった者は命を狙われるだろう。一時の関わりで一生命を狙われたくはあるまい。幸い話を聞く限りでは幹部まではコタロー殿の情報は行ってないように思える」

『・・・』

「それに伯爵に会うとなった時、面識ないコタロー殿は怪しまれる。警戒心が強い伯爵の事だ。最悪それで寝返られてもかなわんからな」

『なら、街で待機はどうですか?さすがに伯爵が味方と安心できない内は自分も帰れません。ここまで来て敵でした、捕まって殺されましたじゃ悔やんでも悔やみきれません』

「それはこちらとしては助かるが、いいのか?危険がつきまとうぞ?」

『すでに最初に王女様達を助けた時点で敵には逃げられてますし、少なくとも存在は知られていると思いますから』

「そうか、ではよろしく頼む」


再びウェルキンは頭を下げる


「後少しよろしくお願いします」


続いてクリスティアも頭を下げると一同狐太郎に頭を下げる


『ちょ・・大袈裟です。頭をあげてください』


言われてようやく顔をあげる一同に狐太郎はそうだ!と1人つぶやきポシェットを漁り始める


「どうしたのだ?」

『いえ、ここまできたら隠すのも何だと思うし、みなさんに武器をあげようと思いまして』

「な、なんだと!?」

「本当かコタロー殿!?」


もの凄い食いつきを見せたのはウェルキンとロイザードだ

ウェルキンは狐太郎の刀を羨ましそうに見ていたし、ロイザードに至ってはメアリーから直に見せて貰ってたと言うのもあるだろうが、未知の装備に研究意欲が沸き上がっている

その中で1人冷静なデュラインが口を開く


「良いのですか?我々は助かりますが」

『恐らく街ではまともな武器は手に入りませんよ。それなら少しでも戦力増強しなきゃと思いまして。王女様の安全度も上がりますし』

「ありがとうございます」

『で、ですね。とりあえずは前衛のウェルキンの武器ですね。前見た武器に似てるのは・・これなんかどうですか?』

「これは大剣か?刀身が見ようによっては薄く赤く見えるのだが・・?」

『火の精霊の加護が付与されてるからです。打ち合った場所を中心に任意で弱いですが衝撃波を飛ばします。それと火耐性が付きます。後は刀身から炎も飛ばせるから多少離れていても攻撃は可能ですね』

「そ、そんな武器を俺に譲っていいのか?」

『?扱える技量はあると思うし、刀身はオリハルコンが挟んであるから強度も文句なしだと思います』

「ななな、なんだと!?オリハルコン!?」

『あれ、ダメですか?じゃあ・・』

「まま、待て待て!!」

『ちょっと振ってみますか?でも炎は出さないでくださいね』


ウェルキンは狐太郎から手渡された大剣を恐る恐る受け取り、ジーッと眺める

そして集中し、剣道の素振りの容量で上から振り下ろす

ブンッと唸り声をあげて振り下ろした瞬間、衝撃波と熱気で熱風が発生する

ウェルキンは火耐性で平気なようだが周りの温度が少し上がったようだ

ウェルキンはしばらく素振りをしていたが、ピタリとやめて狐太郎の方へ戻ってきた


『どうですか?扱いづらいですか?』

「いや、手に馴染むし重さも申し分ない。もう1度聞くが本当に譲ってくれるのか?」

『えぇ、それでよければ』

「問題などあろうはずがない。一生大事に使わせてもらう」

『はい』


ウェルキンはさっそく離れで素振りを開始している

慣れようと必死なのだろうが、顔は楽しそうだ


『じゃあ次はデュラインさん。片手剣でいいんですかね?』

「・・・ええ、あまり凄くない奴でお願いします」


ウェルキンに渡したのが規格外過ぎて唖然としている

次いで狐太郎がデュラインに渡したのは刀身が緑がかった片刃の剣だ


「コタロー殿・・これは・・・!?」

『風の精霊の加護が付与されてる剣です。殺傷力は低いけど鎌鼬を発生させる事ができるんで前衛も中衛も行けると思います。デュラインさんは身軽さを武器にしてるので刀身は軽銀で作られてます』

「・・・・・」


もはやどう突っ込んでいいかわからず苦笑するしかない

渡された片手剣を眺めるデュライン


『最後はロイザードさんですね。ロイザードさんには魔導師なので王女様達と同じローブと・・』

「なに?本当か?」

『はい、それとどちらかと言えば補助系が得意みたいなのでそっち系の杖を・・効果は・・すでに自分でチェックしてますね』


すでに懐から鑑定用モノクルを取り出しスチャっとかけて鑑定モードのロイザード


「どれどれ、杖は・・・ま、魔力ブーストに支援魔法効果アップ・・・総魔力量アップ・・・」


効果にびっくりし掛けたモノクルがポトリと落ちる


『やっぱり攻撃メインの杖のがいいかな・・・』

「コタロー殿!!!!これでかまわない。いや、これを譲ってくれ、ください」


掴みかからんばかりの勢いで接近してくるロイザードに狐太郎は圧倒され若干後ずさりする


『ああうん、気に入ってくれてよかったよ・・』

「絶対生き残ってこの礼は必ずする!!」


力いっぱい宣言するロイザードに狐太郎はコクコク頷くことしかできなかった

ウェルキンに渡したのが魔剣ファラム炎の剣、デュラインに渡したのが魔剣フェオン疾風の剣、ロイザードがシャッテンスキアー幻影の杖である

ちなみにクリスティアはエクラルミエール光の杖、メアリーがアクアクリティア水流の杖である


「これはコタロー殿から頂いた事はもちろん秘密にしなければいけませんね」

『後は魔法袋なんですが、クリスさん達と同じ物をお渡しします』


言いながら3人に魔法袋を手渡していく

受け取った3人は三者三様の表情を見せる

驚愕の表情のウェルキン、もはや苦笑いしか出ないデュライン、驚きと歓喜のロイザード

ウェルキンは狐太郎がクリスティアを敬称略した事にも気づかない

そんな3人を尻目に、クリスティアが狐太郎に改めて礼を言う


『いえ、俺としても戦力アップは必須でしたから。それと俺がいなくなってもうまくいくようにですかね』


クリスティアは一瞬寂しそうな表情を覗かせたがすぐに引っ込める


「絶対にクーデターを阻止して改めてお礼に伺いますわ」

『はは、うん。楽しみにしてます。シェリー達もまた会えるのを楽しみにしてると思う』


相変わらずウェルキン達3人はテンション高めで武器談義をしている

やはり男児と言うのは武器が大好きなのだろうか

村の倉庫を見せたらどうなるだろうか

ロイザードなんか数ヶ月は余裕で篭もりそうな気がする

そんな事を思っていると何故かフラフラしながらメアリーが話しかけてきた


「コタロー様ー、食べ物ありませんかー・・?」

「メアリー、さっき食べたでしょう?」

「美味しい食事がしたいです・・」


相変わらず平常運転なメアリーに狐太郎は笑みを浮かべる


『ああ、あるよ。俺もちょうどお腹が空いていたんだ。野営も今日で終わりだから全部出しちゃおうか』


明日には街に着くし、そこからすぐ伯爵領だ

言いながらポシェットからアグニスお手製料理が次々出てくる

歓喜の表情のクリスティア達、クリスティアは若干控えめだが

その匂いに気づいたのか武器談義をしていた3人がダッシュで戻ってきた

5人でラット2匹ではやはり足らなかったらしい

仲間で食べる美味しい食事と言うのは暗い気持ちを吹き飛ばす効果があるのだ

少し前までの暗いムードはどこへやらだ

ウェルキンとデュラインは今後に向けて話し合い、ロイザードはメアリーに武具の性能とどれだけ凄いかを語っている、ロイザードが一方的にだが・・

メアリーが幾分鬱陶しそうにしてるのは見なかったことにしよう


そしてクリスティアはそんな周りを満足そうに眺めながらチーズケーキとショートケーキ、あんみつを幸せそうに食べている


「あー、それとだな。1つお前に言いたいことがある」


ウェルキンがなぜがバツが悪そうな顔をしながら話す


『なんでしょう?』

「俺達に敬語はいらん」

『えっと・・?』


狐太郎が返答に困っているとデュラインが助け舟を出す


「対等でいいって事ですよ。もうコタローさんは仲間ですから」


にこやかに言うデュライン


「うむ、そうですな。それにコタロー殿がいなかったら間違いなく全滅していたであろうからな。遠慮は無用ですぞ」

「そういう事だ・・」


ウェルキンだけは若干恥ずかしそうに顔を背けている


『ありがとうございます』

「おい!」

『あ、ごめん。つい癖で・・・』

「早急に直せ!」


ウェルキンに怒られ『がんばりま・・がんばるよ・・・』と小さくなる狐太郎

まぁまぁとたしなめるデュラインにロイザード、楽しそうに会話するクリスティアにメアリー達



狐太郎はそれを見ながら、協力して良かったなと思ったのだった


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