第11話 過去の時間軸へと~1

 「ああっ!」


 「やらせるか!」


 斬夢を無視し、まず、アムルへと迫っていく魔の少女アズマリア。斬夢がその攻撃を防ごうと、進行方向へと飛び込んで塞ぎ、カッティングを試みる!


 ガギィッ!


 斬夢によるカッティングは成功。魔の少女の右手から発せられた碧く輝く光の剣は、斬夢の持つ剣の刀身により受け止められた。

 

 「お見事。良くぞ防いだわねワンちゃん!」


 「誰が犬だ! 狼だぞお!…って、何だ⁉」


 クルッ! タッ! クルッ! タッ!


 斬夢に止められた魔の少女。楽しそうに斬夢をワンちゃんと呼び次の攻撃に移ろうと、ターンを交えて2ステップする。


 ゴッ!


 その時、アズマリアの居場所とは別方向から、強力な力の波動が発せられてきた。


 「うっ!?」


 パッ!


 「あら?」


 パッ!


 斬夢が異変に気付いて距離を取るべく後退。魔の少女アズマリアも、それに合わせて身を引き、一旦動きを止める。

 

 「この感じ…何?」


 「わふっ! 感じたよ!」


 「ふむ…」


 大樹の楽園が存在する異空間への入口方向で生じ、現世にも届いた時空波動。その波動を感じ取り、アムル、斬夢が驚愕の叫びを上げた。妙見もまたそれを感じ取り、納得したかのように肯く。


 「…大質量の物体が遥かな過去…有史以前の時間軸に跳躍とばさせられたな。魔の総領よ、貴様の仕込みか?」


 「ええ。私の半身、アレクサンドラの仕業よ。これで大樹の楽園の聖少女たちの介入は阻止したわ」


 妙見の質問に応じて、表情一つ変えずにそう返答するアズマリア。


 この様に彼女が終始無表情ポーカーフェイスなのには訳があった。


 実は、アズマリアは魔術師たちの身柄を引き取るべく、ル・シフェル………いや、アムル、斬夢と、これから交渉する心算なのである。

 先程、攻撃を仕掛けて見せたのは、そのための牽制の意味があった。交渉がまとまらない場合、武力行使もありえるぞと、事前に脅し、示した形だ。

 

 自分有利に。


 それも、できるだけ邪魔の入らない状況を整えて交渉したい。


 そんな思い故の、魔の総領娘によるお芝居染みた行動であった。


 大樹の楽園で相方のアレキサンドラが、聖少女たちを介入を阻止したのもその一環である。


 それ故に、アズマリアが見据えていた対象は、七人の魔術師たちに勝利した聖魔少女ル・シフェルこと、アムルと斬夢であった。


 (この子…)


 (何が目的なのかな?)


 対するアムルと斬夢も、アズマリアを鋭く見据え、その実力と内心を窺い知ろうと努める。

 アムルと斬夢にしてみれば、魔の少女アズマリアは未知の存在。それも妙見の言動から察するに、時空間を操る存在だろう。

 そんな相手がなぜ自分たちの前に現れたのか?


 まったくその意味が解らなかった。


 「さて、早速だけどアムルさんに斬夢さん、私はアズマリアと言う魔術師です。あなたたちにある提案をするために姿を現しました。聞いてくれます?」


 臨戦態勢のアムル、斬夢に対し、自分にだけ都合よく場を整えたアズマリアが自己紹介をはじめ、交渉を開始を宣言する。


 (あれ? 私追いてけぼり?)


 「何事?」


 「話に置いて行かれた気がするずじゃなーい!」


 「ううむ………」


 妙見を除いたそれ以外の者たちと言えば、先の戦いを終えたばかりである。これから何をすべきか指針がないため、ただ、その交渉の様子の見守るだけであった。


 そもそも、レムも悪魔七人衆も、未知の存在アズマリアに対しては行動指針がないので、そうするしかないのである。

 大人しく困惑している以外、選べる行動の選択肢がなかった。


 「提案によります…もし、そこの七人を見逃せなどと言うのなら、聞けません」


 「わふっ! その通りだ!」


 一方、アズマリアに名指しされたアムルと斬夢は別である。黙っている訳にもいかず、意を決して魔の少女との会話を試みるのだった。


 「ふふ。その通り正解です。そこの魔術師七人衆の身柄を、私に預けて貰いたかったのですが、駄目ですか?」


 そんなアズマリアの返答に、アムルと斬夢の表情が硬くなる。


 「そんな要求聞けません!」


 「わふっ! 駄目だよ!」


 「どうしても?」 


 「どっ、どうしてもです。その提案には乗れません。私たちはそちらの魔術師たちと命懸けで戦い、勝利しました。そんな勝利者の権利を、訳もなく第三者に渡す理由がありません。また、少女を力尽くで攫おうとする者達を、理由なく見逃す理由もありません」


 「わふっ! 同意! その線は譲れないね! 君が魔術師の仲間なら戦うだけだ!」


 怒りを込め、そう早口に宣言するアムルと斬夢。

 実際、誘拐犯狩り、悪の魔術師狩りを目的に行動してきた二人には、正体不明の相手に対し、「はあ、そうですか」と引き下がる理由がない。


 趣味の延長である遊戯狩スポーツ・ハンティングりをしていた訳でもないのだ。獲物を渡せと言われて「はい。そうですか」と渡せるはずもない。


 そんなアムルと斬夢の様子を見て取り、肩を竦めるアズマリア。だが、この結果はある意味、アズマリアの予想通りの反応でもあった。


 (酷い誤解がある………いや、ないか。確かに私たち魔術師あくまは、真理の探究のためには非道を行うときもある。実際、七人衆は聖少女を攫うべく動いていた。下手な言い訳での説得は無理なのよね)


 何も言い返せず、黙ってしまうアズマリア。その様子を見て、イライラを募らせるアムルである。


 貴女がここにいる意味が解らない。悪魔の味方として仲間を助けに来た?


 それなら、始めから仲間に非道なことなんてやらせなければ良い。今さら仲間がピンチになって都合が悪くなったからって、ここぞとばかりに出てくるな。


 今更何の心算なのよ?


 そちらの理由なんて知ったことじゃない! 


 基本、思考が幼く、真直ぐなことを好むアムルとしては、そう思わざるを得ないのである。


 「…そもそも、あなた方悪魔の目的は何なのです? 私は一度ならず誘拐されて、その後もここ水府まで追い掛けられてきたのですが?」


 怒気を含むアムルの声。


 「あらコワイ…少し誤解を解くための時間をくださらない? 彼等七人衆は、私の母親の真理の探究が、人類全体の共通の利益になると信じて行動していたのよ。あなたの聖石を奪おうとしていたのも、それが原因なの…」


 そう聞いて、さらにイライラを募らせるアムル。一方、少し離れた場所で話を聞いていた七人衆が、アズマリアの言動を聞いて「ええええっ????」と、大混乱に陥っていた。 


 「…だから少女誘拐が許されると? その真理とやらは、幼い少女の人生より重いとでも?」


 「それは…許されませんね…ごめんなさい」


 「…あなたに謝られても意味ないです」


 「わふっ! そうだそうだ!」


 「…いや、それでもですね…」


 当初の凛とした雰囲気はどこへやら。アムルの鋭い指摘に対し、次第にしどろもどろになって、自分の行動を弁明し始めるアズマリア。

 自分に理が無いと自覚していると、流石に胸が痛い。ちょっと涙目になるアズマリアであった。


 その、ちょっと情けなくも可愛らしい幼女たちの言い争う姿を、他の物たちは呆然として聞いていた。


 いまだレムはどの様な指針の下に行動すれば解らなかったし、金華をはじめとする七人衆といえば、アズマリアの言葉に、自分たちの師である人物らしき者の内容が出て来て、動揺を隠せなかった。

 それも母親と言っていた。

 その聞いた話によれば、アズマリアと名乗る魔術師は、母親の真理の探求に関連して行動している様子なのだ。


 こしょこしょこしょこしょと、小声で話し出す七人衆。


 「そう言えば、アズマリアって、マリアの子って意味だよな?(小声)」


 「マリアさまは、氷の柩に自らを封印していたはずだ。何時、どうやって子供を産んだ?(小声)」


 「それは兎も角、あたしたちを助けにきてくれたのかしらん?(小声)」


 「★私は考るのをやめた★(小声)」


 「不思議ね(小声)」


 「とにかく、彼女の動向を見守ろう(小声)」


 「確かに、今は事の成り行きを見守るべきかもしれん(小声)」


 七人衆はそんな感じで、混乱しながら小声で話し合っていた。そのため、積極的に動き事態を変動させることなど、できる訳もなかった。


 その頃、アズマリアと言えば。


 (泣きそう。まっ、拙いわ。仕切り直さないと)


 「こらー! しっかりしやがれなのです! 強気で行けー! なのです!」


 ⁉


 すると、そんなアズマリアに対し、何処からか風に乗って少女の叱咤激励が聴こえてきた。


 「ああ…アレクサンドラ。解っているわよ…ルッフェ(噛んだ)、ル・シフェル! とっ、とりあえず、お詫びの品をお渡しします。これを受け取ってください!」


 パートナーからの激励で冷静さを取り戻したアズマリア。ちょっと噛みながらも、用意していた交渉の切札ジョーカーを何処からともなく取り出した。


 ポーン、テンッ、テンッ、コロコロコロ…


 アムル、斬夢の眼前の空間に突如現れ、重力に引かれて地面に転がったのは、古びたサッカーボールだった。 


 (??? ⁉ ⁉⁉⁉)


 「なしてサッカーボール???」


 気付いて、かつてない程に双眸を見開き驚愕するアムル。そして、その意味がまったく解らず首を傾げる斬夢であった。


 「まあ、私の提案があなたたちに断られることは予想していたわ。だから交渉のカードは別に用意してきたの」


 「…さか…まさか…あなたは!」


 ゴウッ!


 そんな激しい突風が、アムルの意識に合わせて周辺に吹き荒れる! 


 「⁉ アッ、アムルちゃん、なっ、何をっ!」


 「きゃあっ!」


 昏い憎悪の波動を発し始めたアムルに驚愕し、斬夢も狼狽して声を掛ける。精神的に繋がっているレムも、その昏さを感じて悲鳴を上げた。

 一体、アズマリアが持ち出したサッカーボールが何の意味を持つと言うのだろうか?


 「勘違いしないで。私は。魔術師七人衆を私が引き取る代わりに、あなたがとある一人の少女を助けるということで、お互い手打ちにしない?」


 ちょっと引き気味に、そう提案するアズマリアであった。


 「わふっ、アムルちゃん、どういう事?」


 「…」


 斬夢が荒ぶるアムルに質問するも、無言でアズマリアを睨み付けているアムルである。

 肩を竦めて見せたアズマリアが、斬夢のその質問に答える。 


 「ワンちゃん、私が答えてあげる。あのボールの持ち主は沙門寺双葉と言うのよ。これで聖少女殿と記憶を共有した魔術師狩り殿も、その意味を理解できるでしょう?」


 「⁉ そういうい事か!」


 ザワワッ! ヒュンッ! ザッ! シュッ! ピタッ! 


 双葉の名がアズマリアの唇から発せられ、斬夢が事態のあらましを理解するまでに、水府のリングはアムルの殺気で完全に満たされていた。

 そのリング内をアムルは高速移動し、かつてない速度での踏み込みを見せてアズマリアに接近すると、そのポーカーフェイス目掛け、右ストレートを高速で突き出した………寸止めではあったが。


 「あなたはっ! 双葉ちゃんの死をっ! 汚い取引で穢す気なのですか!」


 怒髪衝天の勢いのまま、韋駄天ストライダーの如く間合いを詰めたアムルが、魔の総領娘に真意を問う。


 斬夢、妙見、レム、魔術師たちと言えば、そのやり取りをハラハラドキドキしながら見守る以外になかった。 

 しかし、そんな外野の者達とは対照的に、アズマリアはアムルが寸止めすることを知っていたかのように、涼しい貌をして質問に応じる。


 「…汚い取引とは侵害ね。私はただ一人の少女を救うチャンスを示しただけ。ところで、あなたの想い人の死は、過去において確定されていたかしら? されていないでしょう? 彼女の切り取られた腕は発見されたけれど、腕だけよね? 他の部位は見つからなかったのでしょう?」


 「!? そっ、それはっ…」


 「だったら、過去に戻って助けてしまいなさい。その時間軸には私が聖魔時針を撃ち込んであります。この方法での救出なら、世界を騙して彼女を助けることができます。せっかくの機会を逃すのですか?」


 「う…ううっ???」


 「あなたは、癒しの息吹の術法で他人の精神を癒すこともできるし、パートナーと融合することで、ある程度はぽっかり空いた精神の穴を埋め合わせることもできる。でも、それだけでは癒せない精神の傷を、あなたは負っている…」


 「…ああ…あ…」


 アズマリアの話を理解し、急速に殺気を霧散させていくアムルであった。魔の少女アズマリアの囁きは、まさしく悪魔のそれ。

 相手の痛いところにダイレクトアタックする、甘美で抗いようのない態案であった。 


 「…その愛しい人を奪われた哀しみと怒りを、永遠に癒すことができないはずの精神こころの傷を、癒すことができる唯一のチャンス…それを見ない振りをして、あなたは逃げ出すのですか?」

 

 「れっ、歴史が変わってしまう…そっそんな…そんな罪深いことが可能…なのですか? やってしまって良いことなのでしょうか…???」


 アズマリアの甘美な囁きに負け、ぽっきりと心が折れてしまうアムルさんであった。よしよしと、内心ほくそ笑むアズマリア。 


 「それをできるのが聖魔師なのです。あなたの想い人は、未来からやって来た聖魔少女に助けられ、未来で生きることとなった。それを正史とすれば、時のバタフライエフェクトは発生しないでしょう。深く考える必要はないのですよ」


 「…ああ…私…私は…」


 助けを求めるように、斬夢、妙見、レムと順番にその視線を彷徨わせるアムルである。そして再び視線をアズマリアに戻す。

 そんな視線のやり取りは、もう一度斬夢へと移り、最終的にそこで止まった。


 結果的に、今のパートナーに、そうして良いのかと問うために。


 「わふっ! アムルちゃんがそうしたければ、私は異論がないよ!」


 善悪の判断ができずに、思考の迷宮に迷い込んでしまったアムルを、そう言って斬夢が救い出した。


 過去に赴き、不孝な最期を迎える少女を救うというなら、斬夢にとって別に文句はない。使役していた怨霊に捧げる供物も、七人衆の代りに、何か別のモノを捧げれば問題はないだろう。


 それに、何というか斬夢は、聖魔少女として融合するパートナーのアムルが、こうも狼狽している姿を周囲に晒しているのは、自分も狼狽している姿を晒しているようで、冷静に見ていられなかったのだ。

 そんな思いも含め、したいようにすれば良いと背中を押すことにした斬夢であった。


 「…良いの…本当に?」


 そう弱々しく聞き返すアムル。


 「わふっ! 世界中の私以外のすべての者が敵に回っても、私はアムルちゃんの味方だ。時を遡り、少女を一人助けるのが罪というのなら、私も一緒に断罪されるよ! 心配すんな!」


 「!? はっ、はい!!!」


 差し出された斬夢の腕を握り、双眸から涙を流す聖少女であった。


 「さて」 


 そんなアムルと斬夢の間に、アズマリアが空気を無視して割って入った。


 「交渉は成立かしら? それなら聖魔少女へと再融合しなさい。そうすれば、どの時間軸に跳躍すれば良いか理解できるわよ」


 「…あの一つ聞いてよいですか?」


 「どうぞ」


 目元に掛かった前髪を右手で掃い、そう返す魔の総領娘。髪をいじっている理由は、内心、交渉が纏まって安心していることを悟られないためである。


 「双葉ちゃんを襲ったのって、どんな相手なんです?」


 「妥当な質問ね。そいつは、そこの天狗さんや我々魔術師の仲間が過去に取りこぼした魔獣よ」


 「魔獣?」


 「そう、魔獣。日本でも各地に人型以外の強力な妖怪が語り継がれているでしょう。そんな一匹よ」


 「でも、どうして双葉ちゃんが?」


 「質問が二つになってる…まあ良いわ。彼女、聖少女に覚醒し始めていたの。あなたと同じに」


 「⁉ 双葉ちゃんが!」


 「そう。それで無意識に使っていた力で、地の底に隠れていた蟷螂カマキリの魔獣を刺激してしまったの。冬眠状態になって、私たちに居所を探らせないようにしていた、ずる賢い奴よ」


 「…双葉ちゃん、変態ロリコンの誘拐犯や、犯罪組織に狙われたんじゃなかったんだ」


 「いいえ。あの蟷螂は似たような存在だったわよ。定期的に人間の子供を襲って食べていたみたいだし、変態を操って自分の奉仕者にしていた………ところで確認だけど、交渉は成立よね?」


 「あ! はい。もうそちらの魔術師のみなさんの命と寄越せとは言いません。ですが、もし私や、他の聖少女たちをまた狙うというなら、話は別ですよ!」


 「それは安心して。聖石を無理矢理奪っても、時空を操る術法は発動できない。魔術の真理には到達できない。そう言い含めておきますから」


 そうなのかと怪訝な表情になるアムル。そうよと涼しい貌をして、それを肯定する総領娘アズマリアであった。


 「それなら、文句はありません…斬夢さん!」


 「わふっ!」


 アズマリアとの交渉を終えたアムルが斬夢の手を取って、役目を果たし終えたベイオウルフの身体から発せられる、理力の吸収を開始した。

 残された理力を吸収して自分たちの力をチャージし、再び聖魔少女へと融合する心算である。


 カアッ! 


 そうして後、再び輝きが奔る。


 その中心で二人が一つとなり、翼持つ狼少女の姿となって現れた。この姿こそ、聖魔少女ル・シフェルである。


 「早速だけど、行ってくるわ!」


 そう妙見やレムに言い残し、ル・シフェルは時の彼方…すなわち、沙門寺双葉が殺されるはずだった時間軸へと旅立っていった。



 そして、アズマリアと、七人の魔術師たちが残された。 



 「さて。次はあなたたちの番だ。悪魔六芒星七人衆の諸君」


 ル・シフェルが消えた虚空を、その場の者たちが見詰めていると、おもむろにアズマリアが悪魔たちへとそう語り掛けた。

 そうされた悪魔たちと言えば、魔の総領娘に対し、ちょっと腰が引けていた。

 

 「助けてくれたことは、素直に感謝します…しかし君は…本当に我等のマリアさまのお子様なのですか?」


 「どうやって? どこから来た? 俺たちは、君のことを何も知らん」


 「君もその、あの二人のように聖魔の力を持っているのか?」


 「魔術、その他は、一体誰に師事したんだ?」


 「我々を助けたのは、一体何の目的があってのことだ?」


 「★できれば、お聞かせ願いたいわ★」


 「難しいことはあたし解らないから、分かり易く教えて欲しいのよーん!」 


 その一方、魔術師あくまたちは、自身の疑問を解き、好奇心を満たすべく、ここぞとばかりにアズマリアに対して質問を開始した。しかし、それにアズマリアは容易くは答えず、質問が途切れることを待った。


 そして。

 

 「それらのことを知りたいのなら、ついて来て貰いたい処があります。そこで質問に答えます」


 そう自分の要望を伝えた。色々知りたければ、大人しく私の指示に従えということである。


 「それは何処です?」


 とはいえ、魔術師あくまたちと言えば、別に拒む理由もない。そこは流して何処へ向かうのかと聞き返した。


 「数万年前の過去。我々が使用する魔の術式。その始まりの瞬間にあなたたちを招待するわ」


 魔術師あくまたちをの代表して「何処に行くのか?」と聞く金華に対し、魔の総領娘はそう答えたのだった。

 

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