かえるくんと雨の日のともだち
月夜野眼鏡
第1話
かえるくんと雨の日の友だち
かえるくんは、最近この森に引っこして来ました。前に住んでいたところは、小さな池のそばでした。そこでかえるくんは池の学校へ行っていました。でも少し大きくなったので、森の学校に行くために、友だちと別れて、ひとりでここへやって来たのです。
明日から、この森の学校へ行きます。どんな学校かな。友だちが早くできるといいな。かえるくんの、期待はふくらみます。
「明日の天気はどうだろう」
かえるくんは、天気を予想するのが、得意です。窓を開けて、空気のにおいをかいで、夜空をながめました。明日は良い天気になりそうです。かえるくんはベッドにはいると、すぐに眠りにつきました。
次の朝、雨が降っていました。かえるくんの大好きな天気です。
学校へ行くと、緊張しながら教室に入りました。でも中はがらんとして、誰もいません。
「雨の日は、他の生徒はお休みだよ」
と、先生は静かにおっしゃいました。
かえるくんはがっかりしました。
これでは学校に来ても、友だちはできないかもしれない、と思ったからです。
かえるくんは、算数の問題を考えて、答えを黒板に書きました。音楽の時間は、ひとりで歌いました。体育の時間には、マットの上で宙返りをしました。先生は、大きな拍手を、して下さいました。
学校のろう下には、けいじ板がありました。
『図書室からのお知らせ 「魚くんの大冒険」はいりました』
『給食室からのお知らせ
スプーンが一本足りません。間ちがえて、持って帰った人は返してください』
かえるくんは、自分も「お知らせ」を書いてみようと、考えました。
『転校生のかえるです。学校ではみんなに会えないので、遊びに来てください』
文のあとに、地図も書きました。その紙をけいじ板にはりつけてから、家に帰りました。
次の日の朝は、お日さまが強い光をはなっていました。空気はとても乾いています。
かえるくんは、学校をお休みすることにしました。こんな日に外に長くいると、具合が悪くなってしまうからです。学校で誰かが、ぼくの『お知らせ』を、見てくれているかもしれない。そう考えて過ごしました。
次の日はくもりでした。前の学校は池のそばだったので、くもりの日も外にでて遊びました。もちろんお休みしたりはしませんでした。
でもこの森では雲の合間から時々強い日がさします。
どうしよう、かえるくんは迷いました。学校に行ってみようかな。でも・・・。
結局かえるくんは玄関から部屋へ戻ってしまいました。
そしてあくる日はどしゃぶりの雨でした。
「なんていい天気だろう」
かえるくんは、歌いながら学校へ行きました。もちろん教室へはいる前に、けいじ板を見に行きました。かえるくんの『お知らせ』の下に、小さな紙がはってあります。
「日曜日に天気がよかったら、あそびに行きます。早く会いたいです」
かえるくんは、それを何度も読み返しました。
今日もほかの生徒はお休みです。かえるくんは、ひとりで授業をうけました。さみしくなると、もうすぐ会える友だちのことを考えました。
日陽日、かえるくんは、うんと早起きをしました。窓の外は小雨です。
かえるくんは、部屋をていねいに掃除しました。それからサンドイッチとドーナツを作って、お茶の用意もしました。テーブルには、アジサイの花を飾りました。
「早くこないかな。どんなひとかな」
でもお昼になっても、誰も来ません。
三時になっても、誰も来ません。
「どうしたんだろう。用事ができたのかな。もしかしたら、道に迷ったのかもしれない」
心配になったかえるくんは、家の外に出てみました。霧のような雨がしっとりとかえるくんを包みました。
かえるくんはふと気がつきました。ぼくが学校を休んだ日に、『お知らせ』を見てくれた人は、雨の日にお休みする人です。その人にとっては、雨は良い天気ではないのです。
かえるくんは、泣きだしました。顔に降りかかる雨といっしょに、涙が流れました。
「ぼくには友だちができないんだ」
かえるくんの心の中は、悲しみでいっぱいでした。
もう誰も来ないと、あきらめたかえるくんは、家の中に戻ろうとしました。
その時です。優しくきれいな声がしました。
「かえるくんだね、遅くなってごめんね」
水色の小鳥さんでした。小鳥さんは、ブナの木の、葉っぱと枝で作った傘を、持っていました。
「雨で羽がぬれるから、傘を作っていたんだ。難しくて時間がかかったよ。」
小鳥さんはにっこりと笑いました。かえるくんは、今は嬉しくて泣いていました。
「はじめまして。雨の日に、来てくれてありがとう」
かえるくんは、おもてなしの用意ができている家に、小鳥さんを案内しました。
さあ、お茶会の始まりです。
かえるくんと雨の日のともだち 月夜野眼鏡 @Tukiyono-Megane
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