第168話 ロベシード




 アキツ国から飛行機で連合国首都ジャンガイへ。その後、汽車を乗り継いで四日間。連合国北西に位置する、針葉樹林に囲まれた村『ロベシード』。ここが、マナの故郷だ。


 そこにマナとコッパ、ジョウとリズの四人がたどり着いた。

 そして、村から少し離れて山道を登り、やって来たのは霊園。


「おいマナ、場所覚えてるか?」

「通路からは遠かった気がするんだよね……」


 コッパとマナが先導し、ハウの墓を見つけた。ジェミルが暴いた後、警察への通報や政府の調査等が行われ、もうすっかり元の通り綺麗になっている。


 マナは他の三人と共に手を合わせて祈った後、ジョウに「お願い」と合図した。ジョウが持っていた大きなカバンから取り出したのは、新しいランプ。


 これはハウの遺した設計図を基にジョウが作ったものだが、霊獣の力を使う事はできない。できるのは、もらった灯を灯しておくことだけだ。

 ジョウの指示に従って新しいランプに灯を分けると、マナは古いランプをハウの墓の前に置いた。


「今までありがとう。さようなら」


 マナがランプに手を置いて念じると、グレーの灯が強く輝いた。トトカリの力で開いた異次元空間への窓は、ランプを飲み込み、閉じて消えた。

 ランプが消えると同時にガチャリ、とマナの手足のアーマーが外れた。リズがマナを抱き起して車いすに座らせ、押して行く。


 この後行く場所も、もう決まっている。




               *




「トゥルモ」


 ボックスボールの練習場でマナに名前を呼ばれたトゥルモは、口をぽかんと開けて固まった。マナが手を振ると、やっと車いすを走らせてこちらにやって来た。

 フェンス越しに「久しぶり」と挨拶をかわす。


「マナ、お前……」とトゥルモが、車いすに乗ったマナの姿をまじまじと見る。何を言ったらいいのか分からないらしく、口を少し開けたまま、やはり固まった。


「見ての通り、元に戻ったの」


「そうか……何があったんだ?」


 マナはコッパやジョウ、リズと笑いあった。

「たくさんありすぎて……。どうしてもトゥルモに会って、一言謝りたかったの。私、ハウと結婚しようとしてた頃は、自分が幸せすぎて浮かれてあなたの気持ちをきちんと考えてなくて……きっと傷つけちゃったと思ったから」


「いや、俺は……。うん…………」





 マナとトゥルモを二人だけにして、コッパとジョウとリズの三人は、運動場の端にあるベンチでリンゴを食べていた。


「マナさん、本当によかったのかなあ。ランプをなくして、手足もなくして……」

「あのランプがあると、他の人間が自分達と同じことを繰り返すって事だろうね。自分の手足と引き換えに世界を救ったんだよ。マナは」


 ジョウとリズは、マナとトゥルモを遠目に見ながらリンゴをかじっている。コッパは珍しく、リンゴをかじらず持ったままマナを見ていた。


「なあジョウ、リズ。オイラ、マナが心配なんだ。二人とも……たまに会いに来てくれよ」


 リズがコッパを抱き上げて「もちろんだよ」と頭を撫でた。



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