第153話 第四区画 パンク、ギョウブ 前編
第四区画。敵の気配を早くに感じ取ったギョウブが、パンクをコックピットに一番近い、訓練室のような大きな空間に連れて来ていた。
「ギョウブ様……本当に、ここで待ってれば来るんっすかぁ?」
「うむ。向こうもワシらに気付いておる。ここが一番闘いやすいからな」
「敵って、何人っすか?」
パンクがそう聞くと、ギョウブは黙って入り口の扉を指さした。ガチャリと扉が開き、二人の男が入ってきた。
一人は不気味な丸い仮面と大鎌を携えた男。そしてもう一人は、バンクだ。
「バンク! お前……いつまでこんな事続ける気だよ」
パンクの呼びかけにバンクは答えずに、腕のツマミをいじり始めた。
「あの仮面がガム・ファントムか?」
ギョウブの質問にパンクは「はい」とうなずいた。
「よし。パンク、お主はあの小僧とやれ。あの仮面はワシがやる」
ギョウブはそう言うが早いか法衣の中から
「アヒヒヒ。アキツ四賢人のギョウブ様ですね? お手合わせできるとは、恐悦至極でございますよぉ」
ガムが走り出すのに合わせて、ギョウブも走り出し、大鎌と朝星棒で切り結んだ。
「バンク! お前、この城が何に使われるか、本当に分かってやがんのか?!」
パンクはまだ金砕棒は構えず、バンクを見つめている。バンクはアーマーになった腕をギュルギュルとうならせながら、パンクに近づいてくる。
「分かってるよ。世界中の犯罪者を一掃して、清く正しい人々を守るためだ」
「そんなわけねぇだろが!」
パンクはついに金砕棒を手に持ち、バンクへと突っ込んだ。
「犯罪者に付き従っている君にそんな事を言われる筋合いはないよ」
パンクが振る金砕棒をバンクは腕で受け止め、蹴りを放った。パンクはそれを体をそらせていなし、もう一度金砕棒を振るった。
バンクには当たらない。しかし、金砕棒をよけるバンクのスピードは、あの丸腰の片目のキンとは比べ物にならなかった。パンクの口から自然と笑いがこぼれる。
「俺はもう、お前にゃ負けねぇぞ。バンク!」
風のように速く襲いくるガムの大鎌を、ギョウブは紙一重でよけつづけていた。朝星棒はただ持っているだけだ。
「防戦一方っていうのは、この事ですよねぇ。ひょっとしてアキツ四賢人って、眷属がいなきゃ何もできないお方なんですかぁ? アヒヒヒ」
あざ笑うガムに、ギョウブは眉一つ動かさない。
「僕が君に勝てないって?」
少し距離を置いたバンク。腕のツマミをさらに回して、腕に風をまとわせていた。
「君はどうせそこにいる狸にでも修行してもらったんだろう? ちょっと力を付けたくらいで、僕を倒せるなんて思い上がっていると、痛い目を見るよ」
「フン、痛い目を見るのはお前……」
パンクが言いかけたところで、バンクが飛び込んできた。拳を金砕棒で受け止めようとしたが、パンクの拳は急にスピードを上げ、パンクの顔面を直撃した。
「うぐっ! ……な、何だそりゃ?!」
次々に繰り出されるパンチをパンクは金砕棒で防ごうとしたが、とても追いつけず、手から弾き飛ばされてしまった。
金砕棒が床に落ちるのと同時に、パンクも床を転がってバンクと距離を取った。
「風アーマーでパンチを加速させてるって事か?」
バンクは「フッ」と見下すようにパンクを笑った。
「昔より少しは察するようになったね。正解だよ」
パンクの頭に、ジョイスと一緒に燃やしたラバロの棺がよぎる。
「お前、自分の腕を……そんな物使い続けて、どうなるか分かってんのか?!」
「黙れ!!」
またバンクが殴りかかってきた。パンチのスピードは、とんでもなく速い。だが、やはり片目のキンとは違い、単純で直線的な動きだ。
パンクは体を倒しながら、下からバンクの拳を蹴り上げた。さらに、それによってバランスをくずしたバンクの腹に膝蹴りをお見舞いし、顔を殴り飛ばす。
バンクは倒れ込みながらパンクから離れた。
「どうだバンク! もう俺は、お前に……」
「生意気な口きくなあっ!」
バンクが再び殴りかかった。こんどはパンクの顔にパンチが入り、パンクが吹き飛んでいく。
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