第140話 バタフライ・ルーチェ帰還




 バタフライ・ルーチェが、初めに飛び立ったアキツ国の野原に戻ってきた。砂煙を上げながら着地するところに、ジョウ達が走っていく。

 コックピットが開くと、リズが出てくる前にジョウが駆け上がった。

「リズ、無事か?!」

 リズは、泣いているジョウに面食らいながらも、笑顔でマスクとヘルメットを外した。

「大丈夫だよ。ただいま。何で泣いてるんだよ」


「色々だよ。でも一番は、整備したはずの計器が壊れたのが……本当にごめん。もう少しでお前を……」

「ははは」とリズ。

「もう気にするな。その代わり、パンサーの方は頼むよ」

 ジョウは「うん」とうなずきながら、リズに道を譲った。リズは地面にピョン、と飛び降りる。


「リズ、無事でよかった!」

 マナが抱きつき、コッパが頭に飛び乗る。シンシアもそばに寄ってきた。

「本当にすごかった。あなたは間違いなく世界一の天才」

「ありがとね。でも、あんたが無人機の操作してくれなかったら、多分失神した後墜落して死んでたよ」

 シンシアはカメラの操作ができなかった後ろめたさを感じつつも「うん……」とうなずいた。


「じゃあそろそろ、アンド城に行くぞ。ヒビカとか他のやつらも待ってるはずだからな。急げ急げーい」

 コッパがそう言って、マナの肩の上で手を大きく回した。マナ達が『身渡り印』のある扉へ歩き出す中、リズがジョウを呼んだ。


「ジョウ、ちょっとあたしの足触ってみな」

「足? 何でだよ」

「いいからほら」

 ジョウの手を引き、上げた足の膝のあたりに押し付けるリズ。

「うわっ……ガクガクに笑ってるじゃん」

 本気で驚いた様子のジョウ。リズは笑って震える足を降ろした。


「何で? まさかお前、怖かったのか?」

 となんだかいぶかし気にジョウは聞く。その頭をパシンとリズが叩いた。

「怖いに決まってるだろ。あたしは戦闘機自体は何度も乗ってるし、模擬戦だって軍人時代に散々やったけど、実戦は生まれて初めてだったんだよ?」

 そう言うとリズはジョウを引き寄せて、肩を組んで歩き出した。


「そっか……そりゃ怖いよな。お疲れさん。すごかったよ。流石だった」

「ありがとね。あんたもお疲れさん」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る