第138話 空中戦




「リズ、後ろから四機来るぞ!」

「オッケー、大丈夫。見えてるよ」


 前の三機を落とし、後ろからの銃撃をきりもみ上昇しながら交わして、四機の上から攻撃。一度に三機落とした。


「すごい……」とつぶやいたのはシンシア。自らも飛行機を操縦できるため、バタフライ・ルーチェの性能だけでなく、リズがどれほど天才か、よく分かるらしい。


 リズは近付いてきたミニワスプ十四機を全て落とし、デメバードへと突っ込んでいく。デメバードからの銃撃を海の上を縫うようにかわしながら、急上昇と同時に後方エンジンに銃撃を浴びせた。そのままデメバードの上空へ登り、モス・キャッスル側へ一度離脱する。


「どうだ?」と聞くリズに、ジョウがモニターを覗き込んだ。デメバードの後方エンジンにまだ大きな変化はない。


「ダメだ。もう一度攻撃しろ」

「オッケー。だけどちょっと待った。コイツら片付けてからだ」


 バタフライ・ルーチェめがけて数十機のミニワスプが集まってきていた。しかも、ありとあらゆる角度から一直線に突っ込んでくる。

「なんだありゃ? まさか……捨て身か?!」とジョウ。


「無人で自動操縦だからね。ぶっ壊れても構わないってわけだろ。上等だ!!」

 そう言ってリズは、バタフライ・ルーチェを加速させた。バン! という音が、無人機を通してこちらにも伝わってきた。これは……


「幻だ!」

 思わずマナが声を上げた。使う事は分かっていたが、リズの現在位置が一瞬でも分からなくなるのはかなりの恐怖だ。

 幻に突っ込んでお互い衝突し、墜落するミニワスプ。マナはそれをそっちのけで、モニターの中でバタフライ・ルーチェを探した。


「いた!」

 また思わず声を上げ、モニターを指さす。みなマナの指の先にバタフライ・ルーチェを見つけた。ミニワスプがどんどん集まってくる。


「リズ、またミニワスプが突っ込んでくるぞ! 幻まだ使えないか?!」

「もうしばらく寝かせないとダメだ。ゲージが三までしか上がってない」


「えっ、幻って一回使うとすぐには使えないの?」

 無意識のうちにジョウの肩を握りしめるマナ。ジョウは「ああ」と一言だけ。


 デメバードが誘導弾を放った。五発の誘導弾と十機以上のミニワスプがバタフライ・ルーチェを取り囲む。

 マナはジョウの肩をいっそう強く握った。

「大丈夫……?」

 ジョウは何も返事をしない。

「ねえ、大丈夫なの?!」


「リズ、ダメだ! 脱出しろ!」

 ジョウがそう叫んだ。しかしリズは

「いや、いける!」

 そう言って海面から垂直に上昇し、螺旋状に八の字を描くようにミニワスプの間をすり抜けた。ミニワスプと誘導弾が誘爆し巨大な爆発が巻き起こる。

 シンシアがつぶやいた。

「人間業じゃない……」


 バタフライ・ルーチェはひっくり返った状態でデメバードから遠ざかっていた。

「リズ、誘導弾が一発残ってる。追いつかれるぞ!」











 返事がない。


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