第134話 決戦へ
ジョウとリズを見つけ、パタパタとこちらに走ってくる人影。髪の毛は栗色のミディアムヘア。マラコの貸し出したランプの他に、色とりどりの灯が瞬くランプを持っていた。二人にニコッと笑いかけ、手を振っている。
「マナさん!」
「マナ!」
二人とも自分のランプをほっぽりだして、マナに駆け寄った。
「ジョウ君、リズ、心配かけてごめんね。マメさんとか他の人達に、二人がここにいるって聞いたから」
リズがマナを抱きしめたり、ジョウが繰り返しよかったよかったと言っている間、マナは二人の顔を代わる代わる見ていた。
「二人とも泣いてたの?」
二人が恥ずかしそうに笑う。リズが「うん」とうなずいた。
「ちょっとね。喧嘩してたから」
マナの肩で虹色が渦巻き、コッパが現れた。
「お前ら、仲直りできたのか?」
今度はジョウが「うん」とうなずいた。
「できたよ。それにしてもマナさん、よくここまで来られたな」
マナが指を持ち上げると、茜色の蜻蛉がすうっと飛んできて、指先にとまった。
「この子、アカネって言うの。霊獣の赤蜻蛉。半径五千里なら、閉じられた空間以外はどこでも見ることができるんだって。この子が二人を見つけて、私達を案内してくれたんだよ」
*
アンド城にゴロウと四賢人、そしてカザマ国防大臣達が集まっていた。
「『モス・キャッスル』の現在位置は特定できました。まだ私達からは遠いですね。事前の予想通り、ここまで来るのには一か月半から二か月はかかるでしょう」
ジャオがジェミル達の操る古代兵器『モス・キャッスル』の説明をしていた。
「本来は宇宙空間まで上昇して、プロトンレーザーや反物質砲を放つ兵器です。古代衛星を利用することによってこの星のいかなる場所でも、同時に二万カ所攻撃することが可能です」
「そんな兵器相手にどうやって戦えばいいんだ。現代人の兵器では太刀打ちできない」
そう言うカザマ国防大臣にジャオが「ご安心ください」と手を軽く持ち上げて振った。
「あれは現在、大砲や爆弾、機関銃といった通常兵器しか使う事ができません。古代兵器のエネルギー源となる『灯』がありませんからね。その間に撃沈すればよいのです。さらに、連合国から奪った自動操縦兵器のコントロールもモス・キャッスルによって行なっていますから、撃沈すればジェミル軍はほぼ無力化されます」
ゴロウがなるほど。と腕を組んだ。
「『モス・キャッスル』を撃沈する、というのが最終目標か。そのためには何が必要なのだ」
「内部に入り込まないとどうしようもありません。しかし、モス・キャッスルの周りは六隻のデメバードが守っています。一隻落とせば守備範囲に切れ目ができますから、乗り込むことが可能になりますよ」
「そして、モス・キャッスルを落とすまで、ジェミル軍から連合国とアキツ国を守らなければならない、という事だな」
ゴロウにジャオが「ええ」とうなずいた。
「地上での戦争の方はゴロウ、あなたとカザマ国防大臣にお任せします。モス・キャッスルの方は、情報を一番持っているのは私ですから、私にお任せください」
*
「私は、世界統合政府初代大統領レオハンヒ・ジェミルである。連合国中央政府は我々の要求を無視し、自ら交渉の扉を閉ざした。これは、我々に対する宣戦布告である」
連合国首都ジャンガイ、そしてアキツ国アンド城で、アードボルトやゴロウ達がジェミルによって配信されている映像を固唾をのんで見守っていた。いよいよ、戦争が始まるのだ。
「我々はこの一ヶ月の間に三つの国家、及び連合国内の二つの自治政府を従わせた。世界各国首脳に告げる。連合国側か我々側どちらにつくか、三日以内に返答せよ。どのような道を選んでも、連合国は数ヶ月以内に我々に降伏することになるだろう」
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