第132話 …………




 ランプで黄色い灯が強く輝く。マナはジェミルに向けて雷撃を放った。命中し、体から黒い煙を噴き出しながら、どたっと人形のように倒れる。


 愛するあの人の墓を暴いた報いだ。むしろ、この程度ですんでしまうなんて納得がいかない。もっと……もっと痛めつけて、苦しめてやる。

 そう思いマナは、倒れたハウに駆け寄った。狙った心臓の部分が黒く焦げ、もう息はない。あの人の墓を暴いたくらいで、ここまですることはなかったかもしれない。

 自分はまさかハウを殺してしまったんだろうか。


 コッパがハウの体を引っ張っていく。そっちに墓を用意しているのだ。マナは、ハウを自分が殺したことを言えず、黙って後を追った。


 真っ黒な丘の上にハウの遺体をうずめ、コッパは去って行った。マナは周辺に誰もいないことを確認し、そっと土の中に手を入れた。

 ハウの遺体が埋まっている場所をまさぐり、何かを見つけて引っ張り出した。頭蓋骨だ。


 突然、マナの肩に手が置かれた。大きい男の手だ。マナが驚きのあまり肩をすくめると、頭のすぐ後ろで優しい声。


「驚いた?」

 ハウだ。驚いたマナの様子を見て、楽しそうに笑っている。


「驚くに決まってるじゃん、もう」

 マナも笑ってそう言い、立ち上がった。二人で手を繋いで太陽の方へ歩き出す。夕日に映える麦畑が眩しい。


 だが、マナの心に不安がよぎった。自分がこのまま去ったら、埋まっているハウの遺体はどうなるのだろう。

 慌てて振り返るマナ。ハウを埋めた墓が、闇に飲まれようとしていた。すぐに戻ろうとすると、繋いでいる手を引っ張られた。

「待って! 放して!」

 手をふりほどいて、ハウの墓へ走る。もうマナの足元も闇だ。


 なぜこんなことをしてしまったんだろう。ハウの手を振り払い、ジェミルが埋まっている墓に走るなんて。あのままハウと行っていれば、幸せになれたのに。

 もう少しでハウの墓にたどりつこうという時、体は倒れた。当たり前だ。自分には、足はない。

 もう自分の目の前には墓しか残っていない。コッパも、マナを見捨ててどこかに行ってしまった。

 マナは一生、ここで一人ぼっちなのだ。






 がばっ、と体を起こしたマナ。手も足もちゃんとある。パンサーの中で寝ていたのだ。コックピットの方を見ると、フロントガラスの向こうに青い青い空。そして真っ白な雲。

 操縦席にはリズ、助手席にはジョウが座り、二人で楽しそうに談笑している。


 マナの旅がきっかけで出会った二人は、こんなに仲良しになってくれた。そしてずっとついて来てくれている。嬉しくて涙がこぼれた。頬をつたうその涙を、コッパがぺろりと舐める。くすぐったくて、マナはそのままコッパにほおずりをした。




 ずっとこうしていたいのに。










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