第129話 アキツのアーマー職人マラコ
ジョウの二機目の飛行機、仮称『バタフライ』には、ロストテクノロジーである『フライ・バイ・ワイヤシステム』が必要だ。
ロストテクノロジーを備えたアーマー機構は、古代のアーマーを掘り起こす鉱山でしか手に入らない。
ジョウ、リズ、クロウの三人は、アキツ国のアーマー鉱山イワミに住む、アキツ国唯一のアーマー職人、マラコの家に来ていた。
「マラコさん、いらっしゃいますかー」
クロウが土間から呼ぶと、ふすまを開けてマラコがやってきた。
「若様、いらっしゃいませ。御屋形様からご連絡頂いてましたよ。お付きのお二人も、どうぞお上がりくださいませ」
マラコは、簡素な着物に細い手足。皺だらけの顔はニコニコと笑っており、好々爺という言葉をそのまま体現しているような人物だ。
「こちらのジョウさんが、飛行機に必要なアーマー機構を探してるんです」
クロウがジョウを紹介すると、マラコは「おやおや」と何やら嬉しそうにジョウへ歩み寄った。
「ジョウさん? あなたさんはひょっとして、連合国のアーマー職人ですかい?」
「え……うん」
「ありゃあ! そりゃありがたいご訪問だ。是非色々教えて頂きたいね。乗り物に関するアーマー機構なら、採掘品を二の倉庫に置いてありますから、どうぞご覧ください。なければ、鉱山に捜しに行くしかありませんがね」
ジョウはマラコに倉庫の場所を教えてもらうと、一人で向かって行った。
「お嬢さんはいいんですかい?」とリズに聞くマラコ。リズは一瞬返事を迷ったが、ジョウと二人きりになる気まずさに耐えられず、結局首を横に振った。
「あたしは……行っても分かりませんから」
「じゃあ、若様とご一緒にここでお待ちなさいませ。今お茶を淹れさせますんで」
*
二千年以上生きる
「この泉には、仙亀だけでなく、様々な亀達が集まってきます。泉に沈んでいる甲羅の中から、仙亀の物だけを拾い上げてください」
イヨは持ってきた見本の仙亀の甲羅を「これです」と見せた。
ザハはメガネを直しながら一瞥すると「首元の反りが特徴的だな」とすぐに腕まくりをし、捜索にかかった。
「見分けつかねえな」と言うカンザをじとっとした目で見るイヨ。
「あなたは薬がご専門のお医者様なんでしょう? よく知ってるはずじゃないですか」
「俺みたいな街医者が世界中でアキツ国でしか手に入らない貴重な亀の甲羅なんか、扱える訳ねえじゃねえかよ」
「またそんな嘘ついて。王宮付き医師なんだから、どうせ毎日手にしてたんでしょう?」
そう嫌味を言いながら、イヨは泉から突き出た大きな岩に手をつき、足元の泉の底を探っている。
「なあイヨちゃん、もう勘弁してくれよ。表現が悪かったってさんざん謝ってるじゃねえか」
「あなたは私に嘘をついてたんです」
カンザを見ようともしないイヨ。カンザはイヨの肩を持ってぐいっと立たせると、岩に押し付けた。驚いて怪訝な顔でカンザを見るイヨ。
「な、何ですか? 私はあなたが自分で嘘をついていたって認めるまでは……」
カンザは何も言わずに急に、イヨの唇に自分の唇を押し当てた。
五秒ほどそのまま動きを止めた二人。イヨはカンザの胸に手を当て、ゆっくり押して体を離させた。
「認めるよ。俺は嘘をついていた」
カンザがそう言った。イヨはぽかんと放心状態で手も持ち上げたまま、
「お前さんの気持ち、全部受け止めさせてくれ。その代わり、俺のこの気持ちも……」
イヨの手の前でゴギュッと音をたてて、黒く光る球体が出現した。その周りでパチパチと何か弾けるような小さい音が鳴る。
「この
バァン! という爆発音を秋大寺の塔で聴き取った、片目のキン。すぐに塔の窓を開けた。地平線の奥で、地表から繰り返し黒い稲妻が立ち上がり、爆発音を立てている。亀帰楽泉の方角だ。
「イヨめ……またあの男と何かやっちょるな」
キンはそうつぶやいて窓を閉めた。
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