第十一章 ジャングルの樹上都市ラグハングルと、湿地の開拓者、農耕カタツムリ ピンゴ
第88話 ラグハングル到着
「よしっ! 取りあえずこれで!」
ジョウは大きな剣を持ち上げて、ヒビカに渡した。
「……っ! なかなか重いな」
「ごめん。ありあわせの部品で作るとどうしてもね。あと俺は刃を磨ぐのはできないから、これは剣と言うよりこん棒に近いかも」
「相手の剣を受けることができればそれで十分だ。それにしても、揺れるパンサーに乗りながらこれだけのものを作るとはな」
パンサーはラグハングルへ向かっていた。ジョウは目的地に着くまで、武器をなくしたヒビカとシンシアにそれぞれのアーマーを作っていたのだ。
「シンシアにはこれだ」
ジョウがシンシアに渡したのは、片手で扱うのは難しそうな大きさの銃だった。
「悪いけど、私の腕力だともう少し……」
だが、受け取ってみるとかなり軽い。驚いたシンシアは無言で銃をくるくる回してあちこち確かめる。
「軽いだろ? これは金属の弾じゃなくて、空気を撃つ銃だ。銃弾を補充しないで無限に撃てる。百メートル離れても、ガラスを割るくらいの威力はあるはずだ」
「なるほど。音は?」
「あー、どうだろう。それは撃ってみないと分からないな。でも普通の小銃よりは小さいと思うよ」
「そう。ありがとう」
「待った。お前にはもう一つある」
ジョウは続けて小型の拳銃を渡した。
「これは、コード付きの弾を撃って相手の体に電気を流す銃だ。どんなに筋肉を鍛えてるやつでも、これで動きは止められる。射程は二十メートルくらいかな」
「おおー!」とヤーニンが覗き込む。
「シンシア、早く撃ってみたいでしょ」
シンシアはいつものすました顔のまま「うん」とうなずいた。
「さてと、これでひとまず俺は、タブローラーの製作に専念できる」
ジョウがそう言って座り込むと、ヤーニンが「なになに?」と隣にしゃがんだ。
「それひょっとして、私のアーマー?」
「いや、俺の二機目の飛行機に不可欠な部品なんだけど、どーにも上手くできないんだよ」
「なーんだ」興味を失ったヤーニンはすぐにジョイスの隣に行って寝転がった。
操縦席でパンサーを運転するリズが、助手席のマナに言った。
「見えてきた。あれがラグハングルだよ」
マナの目にも、地平線の近くにいくつもの塔が写っている。
ラグハングルは円形に配置された五つの『補助塔』と中心に位置する一つの『中央塔』から成っている。
どの塔も円錐形で高さ五百メートルを超える巨大な物だ。それぞれの塔の足元にはジャングルが広がっており、そこに寄生するように現代人が作った街がある。
「もう着いちまったな」
マナの耳元でコッパが少し嫌味っぽく言った。理由は分かっている。以前『ラグハングルに着くまでにハウの事をジョウとリズに話す』とコッパに宣言したにも関わらず、結局まだ何も話していないのだ。
運転席からリズが声を上げる。
「ひとまず、一番近い塔のそばにパンサーを降ろすよ。みんな、席に着きな!」
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