第74話 ヒビカとの再会
ジョイス達とも無事合流し、仕事が終わったトロラベと一緒にヒビカが住む村へ向かう。もう辺りは暗くなっており、地元の人間でなければ迷ってしまうだろう。
先頭は自転車を押しながら歩くトロラベと、リズ、マナだ。
「明日になったら、パンサーも村の方に移動しないとね。なあトロラベ、村の近くに飛行機が降りられるような広い場所ある?」
リズが聞くとトロラベはまた、口をたらんと開けたまま「ああ……」と考える。
「ヒビカが手伝いをしてる牧場は広いんで、そこのご主人に頼んでみてください」
ジョイス達三人とパンク、ジョウは少し遅れ気味で続いていた。
「なぁ、あのトロラベってヤツ、なぁんか頼りなくねぇ?」
パンクがジョウにそう言うと、ジョウより先にジョイスが反応した。
「さっき会ったばっかりのヤツにもう陰口なんて、相変わらず陰険なヤローだね」
「チッ」と舌打ちして黙るパンク。しかしジョイスの攻撃は止まらない。
「あんたみたいな口先だけ威勢のいいガキなんかより、トロラベの方がよっぽど頼りになりそうだけどね。自分の事棚に上げてよく言ったもんだよ」
「その辺にして」とシンシアが止めて、やっと静かになった。
村に着くと、殆どの家からはすでに明かりが消えていた。そのはるか奥の方、山の斜面にちらりと明かりが見える。
「牧舎に明かりが点いてますね。あそこにいるかもしれません。じゃあ、僕はこれで」
トロラベはそう言って、自転車にまたがり走って行った。
マナ達はそのまま牧舎の明かりを目指して歩き続けた。村の中にも関わらず、道はでこぼこしており、歩きづらい。もう真っ暗であったため、足元に気を付けながらゆっくり進み、牧舎に行くまでだいぶ時間がかかってしまった。
「ねえリズ、今晩はどうしようか。パンサーに食べ物置いてきちゃったよね?」
マナがそう言うとリズは「いや」とポケットから缶詰を取り出した。
「これ持ってきた。ジョウとパンクにも持たせてあるから、今晩はそれを分けよう。それより寝る場所だよ。ヒビカさんに会えたら相談しないと」
やっと牧舎にたどり着き、リズが小さめの声で「ヒビカさん、いますか?」と呼びかけた。だが、聴こえるのは牛の鳴き声だけだ。
ザハが牛に近づき、頭をなでる。牛は草をはむ口から長い舌を出し、ザハの手をべろりと舐めた。
「マッソホルスタインだ。この牛の乳は、脂肪分が少なくてスッキリしている。甘みも控えめで、人間が飲むには最適だよ」
ジョウとパンクも、ザハを真似て牛をなでる。牛は人間に慣れているようで、二人の手も同じように舐めた。
「ヒビカさん、いませんか?」
リズがもう一度、声を大きくして呼びかけると、牧舎の奥からガタンと物音がし、スカートをはいた背の高い一人の村娘が現れた。
「……お、お前達、こんなところで何をしている」
ヒビカだ。似合わない恰好をしていたため、全員気付くのが遅れてしまった。ヒビカの方もマナ達の突然の訪問に戸惑っている様子で、熊手を持ったまま立ち尽くしている。
その沈黙を、ジョイスの笑い声が破った。
「あっはははは! ヒビカさん、何その恰好!」
ジョイスはヒビカに駆け寄り、スカートを引っ張った。ヤーニンもそれに続いて袖を引っ張る。
「あのヒビカさんがこんなスカートはくなんてねー。軍服の方が似合うよ」
「お姉ちゃん見て! こっちの袖、まくってるけどフリルついてるよ。カワイイ!」
ヒビカは二人の手を振り払うと、足元にあった小さな藁束で二人を叩いた。
「私の服はどうでもいい! 何をしているのかと聞いてるんだ!」
マナが藁やバケツをまたぎながらヒビカに近づいた。
「ヒビカさん、ちょっと頼みが……」
「私に? ……力になれるかは分からないが、話してみろ」
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