第63話 ジョイス、シンシア、ヤーニン、そしてカンザとの別れ
「おいマナ、あんたにこれをやる」
ジョイスがマナに手渡したのは、自分が持っていた小型通話端末だった。
「陸軍に指名手配されてるあたしらがあんたの近くにいたら、迷惑かけちまうかもしれない。だから、ひとまずお別れだ。でも罪滅ぼしと恩返しは、後生だからさせてくれ。もしあたしらに役立てることがあったら、これで呼んでくれれば、駆けつけるからさ」
「分かった。三人とも、気を付けてね」
ジョイス、シンシア、ヤーニンは、かわるがわるマナと握手し、駅へと歩いて行った。
「あいつら、汽車なんかで移動して平気なんっすかねぇ……?」
パンクの隣でザハが「まさか」と軽く笑う。
「平気なはずはないよ。恐らく汽車の屋根の上にでも乗って一つか二つ先の街に行ったら、車か何か盗んで逃げるんだろう」
「えぇ? でも足を洗うって言ってたじゃないっすか」
「現実はそう簡単にはいかないよ。いきなり完璧にやるのは無理だろう。まあ、しかたないさ」
ジョウが「うーん」とうなった。
「でも、盗まれる側の身になると、ちょっとな」
「ふむ……私ならさほど気にしないが、ジョウ君はアーマー職人だったね。車に対する気持ちが人一倍強いからじゃないかい?」
「ザハさんが物へのこだわりがなさすぎるんだよ」
ジョイス達と入れ替わりに、リズが帰ってきた。リズはすぐにマナを呼び、ヒビカに言われたことをマナに報告。マナは「うーん」と悩みながら地図を広げた。
「次はラグハングルに行こうと思ってたんだけど……」
ラグハングルは巨大なジャングルの中にある樹上の街。連合国内である上に、陸軍基地も近い。
マナの頭の上からコッパが言い聞かせた。
「霊獣に会う順番なんかどうでも平気だろ。ヒビカに言われた通りにしろよ」
「うん……そうだね。じゃあ、次はここに行こう」
マナは地図の端の方を指さした。
「遠いね。連合国外だし、今のあたし達には、おあつらえ向きだ」
マナの後ろから「ゲッ」と言ったのは、いつの間にか覗き込んでいたカンザだった。
「そんなところに行くのか?! 俺は寒いのは苦手だからな。ここでお別れすることにするぜ」
「マナ、着く前にオイラのコート、作ってくれよ」
「うん。とびきりあったかいの作ってあげる」
マナはそう言ってコッパの鼻をくすぐった。
次の目的地は南極付近にある、溶けない氷でできた恒久氷河の街、『イッラン』。そこには、氷の中を泳ぐペンギンがいる。
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