第三章 宝石砂漠の街アルラディーンと、結晶の騎士、重装甲サイ ペッドゥロ

第14話 アルラディーンへ向かう、とある三人




 アルラディーン近くを砂埃を立てて走る車。そこに、黒髪、金髪、赤毛の三人の女が乗っていた。


「宝石砂漠かあ。ねえ、お姉ちゃん。宝石の砂って、のりでくっつけたらちゃんとした宝石になるかな?」

 オーバーオールを着た小柄な赤毛の女が、後ろの席から助手席に座る短い黒髪の女の肩を叩いた。


「のりィ? ヤーニン、あんた底なしにバカだね。のりでくっつけたら、ただのベチャベチャの石でしょうよ。そんなに簡単に大きな宝石になるなら、もうみんなやってるって」


「えー、意外と盲点で誰もやってないかもしれないじゃん。ねえシンシア」

 運転している長い金髪のシンシアはボソッと一言だけ。

「やらなくても分かる」

「やってみなきゃ分からないじゃん! 私やるからね!」


 怒り出した赤毛のヤーニンに「勝手にしな」と笑いながら助手席の黒髪女。「そんなことより」と続ける。

「今度は上手くやらないとダメだよ。この前は成果ゼロの上に、飛行機までダメにしちゃったんだからね」


「お姉ちゃんが依頼内容間違えるからじゃん。私おったまげたよ。あんな間違い方するなんて……」


 黒髪女がヤーニンの顔に裏拳を喰らわせ「あ痛っ!」とヤーニンが鼻を押さえる。

「うるっさい! あっちがあんまり『霊獣』『霊獣』って繰り返すから、霊獣そのものを連れて来いって事だと思ったんだよ。普通そう思うだろ?!」


「思わないでしょ。っていうか間違えないでしょ?! 霊獣じゃなくて、『霊獣を探してるヤツが持ってるランプ』を持って行かなきゃいけなかったのに。おかげでこの前は死にかけたよ」

 シンシアも付け加える。

「どうせ話を最後までちゃんと聞いてなかったんでしょ。ジョイスはいつもそう」


 黒髪のジョイスは助手席から手を伸ばし、シンシアとヤーニンの頭をはたいた。

「あんたら二人ともうるっさい! アルラディーンでそいつを探して、ランプを頂けばすむ話でしょうが!」

「でもさあ、どうやって探すの? この暑い中、街中延々と歩き回るなんて私嫌だよ」

 ヤーニンはそう言いながら、持ってるラムネ菓子を前の二人に一つずつ分けた。


 ジョイスはほいっと口に放りこんだが、シンシアはカリッと一センチたらずのラムネを二つにかじった。

 残った片方は手に持ったまま一緒にハンドルを握る。

「そんな探し方するわけない。あそこは何万人も人がいるのに。顔も知らないんだから」


「もちろん」とジョイス。

「霊獣の所に先回りして待ち伏せするんだよ。博物館に、霊獣の住処を記した古い本があるから、まずはそれを盗みに行くよ」


 ヤーニンは「はーい」と返事をした後、後ろの席にもたれかかり、歌を歌い始めた。



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