売れない色

私が通学のために毎日通るその商店街にある雑貨屋さんは、街の人に愛されているお店だ。

老若男女とわず、毎日だれかが訪れているのを私は知っている。


そのお店は外観こそ普通だが、店の中に入ってみると店全体に売り物が並んでおり、壁や天井にまで魅力的なものが所狭しと陳列されている。


私は週に一回そのお店に行くのが日課になっている。金曜の夕方、人々が我が家を目指して街を行き交う時間に、私は寄り道をしてその店に行く。


「いらっしゃい、まおちゃん。」

「こんばんわ、アキさん。」


店の主人は不思議な雰囲気の女性。

真っ直ぐで綺麗な黒髪はとても羨ましいとおもう。

年齢は30代くらいだろうか?美人でとてもそれ以上には見れないが、実際はどうなのだろうか。

名前は分からない。

でも皆がアキさんとかアキちゃんと呼ぶので私もそれに習ってアキさんとよんでいる。


「ちょうど今日の朝面白そうなものを見つけて、そこに並べておいたから良かったら見てってね。」

「うん、ありがとう。」


いつものようにのんびり店内を見て回る。


この店には毎週新しい商品が入ってくるが、売れ残りの商品も当たり前のように店内のどこかにひっそりと配置されている。


私がここに通い始めてずっと気になっていたものがある。


ターコイズブルーのアクセサリーがこの店にはいくつかある。


ネックレス、ピアス、イヤリング、ブレスレット、リング、髪飾り…もしかしたら他にもあるかもしれない。

いくつあるのかもまだ分からないそれらは落ち着いた雰囲気の店内で妙に輝いて、私の目に付くのだ。


壁や天井にも商品があると言っても、ぐちゃぐちゃした雰囲気ではなく、落ち着いた森の奥の秘密基地のような雰囲気があるこの店には、離島の海を体現するその色はやけに眩しい。


昔から気になってはいるのだが、どうしても手に取ることができない。


こんな人が多く来る店であんな綺麗なものが売れないはずが無いと、私は思う。

なのにあの青はずっとこの店で輝き続けている。


そしてなにより、去年の春先にアキさんの長い髪から透けて見えたターコイズブルーのイヤリングが目に焼き付いて離れない。



きっとこの先もあの青が売れることはないんだと思う。

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20分ワンドロ詰め 海月∞ @kasokura_0

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