特別な微生物

鳴り響いたインターホン。

適当に上着を羽織ってパジャマ姿を隠す。

ドアを開くとセールスマンがいて、訪問販売にかち合ってしまった、と思い少し気を張る。

笑顔が爽やかで、人畜無害そうな好青年に見えた。


何を押し売られるのかと思ったら、唐突に玄関で何かのフリップを取り出した。

カラフルに彩られ、テープも捲りやすく折り曲げられているそれは、テレビのニュース番組でよく見るようなそれだった。


『これは、特別な微生物です。その名も、SNN。これを粉末状にしたものを自分の食べるものに振りかけて、体内に摂取すると、あら不思議。あなたの身に、とても不思議なことが起こります。』


なんでも、微生物が摂取した人間に直接働きかけるらしい。


『今なら、ワンコインで販売いたしましょう。』


つまらない人生をただただ消費していた毎日に飽きていたというのもあるだろう。

500円という安価なものであったというのが大きいと思うが、何かわからないようなそんな微生物と説明された粉を買ってしまうなんて、だいぶ頭が逝ってしまっている。


そんなことを自覚しながらも購入した粉の入った瓶を眺めて、セールスマンの言葉を思い出す。


『SNN、それは特別な微生物。「シアワセ ニ ナレール」です。』

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