コートジボワール在住の人魚

最近私の家に、瓶に入った手紙が届く。

全く身に覚えがないが、その手紙入り瓶は毎回ポストにぽつんと置かれている。

今では既に日常に紛れ込んでいるのだが、それが逆に不気味である。

…とりあえず初めてその手紙が届きた時に好奇心に負けてその手紙を取りだしたあの時の自分の頬を1発打ちたい。



大体その手紙は数週間に一通届くのだが、なんせ返事もしていないので、いつ届くのか、中身がどれくらいの長さなのか、毎回さっぱり予想がつかない。


その手紙の差出人の名前は「コートジボワール在住の人魚」で、どうやら日系人魚のようだ。


ある日はまだ乾き切ってないワカメが瓶に添えられていたり、ある日は手紙が星の砂に埋もれていたり、ある日はかわいいビーチグラスが手紙に添えられていたりする。


基本的に手紙の始まりはこうだ。


『ヤッホー!久しぶりだね!どれくらいぶりか分からないけど、とりあえずこの手紙書いてる間に10枚くらいは手紙を海水でお釈迦にしちゃったよ★』


とか。


「こんばんわ!あ、もしかしたらそっちでは朝かもしれないし昼かもしれないけど…。

海の中って真っ暗だから体内時計狂うんだよねぇ〜。ま、なんでもいっか!」


とか。


「久しぶり〜!そっちでは梅雨なんでしょ?なんか、日本って湿気多くていろいろ大変って海流の噂で聞くけど、海の中に比べたらましじゃんっていっつも思うんだよねぇ。

めっちゃ髪の毛ガシガシになるよ。…いや、マジでほんとに。」


とか、まあ、その他もろもろふざけた内容が多いのだが。


基本的には手紙の内容は明るく、洒落の効いた内容になっており、なかなかどうして、日本の人間よりも日本語が上手いんじゃないかと思うほどである。



それまでは、だいたい郵便物はために貯めてた自分だが、今では仕事帰りにポストの確認をすることが日課となっている。


これも、コートジボワール在住の人魚さまさま、というやつだろうか。

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