雨の日の遊園地
小さな、少し古びた遊園地にしんしんと雨が降り注ぐ。
そこには人は居らず、まるで、ここにいる僕だけが世界に取り残された様な錯覚にさえ陥る。
傘をさして、雨の中も回り続ける観覧車を見上げる。
たった一人、馬鹿みたいに。
もう、君はいないのに…。
こんな僕を見たら、君は笑うかもしれない。
馬鹿だ、って。
そんな事してるから彼女出来ないんだよ、って。
それでも僕は、見上げる。
いつも君と乗った観覧車を。
小さい頃に決めた約束。
僕の誕生日には二人で観覧車に乗る。
それは所詮子供の口約束に過ぎなかったが、だが、今年まで決して破られることなかった大事な約束だ。
少しずつ大人に近づいて、少しずつ想いを募らせて、確実に積もっていったそれは、確かに本物のそれだった。
だから、今年は伝えようって、思ったのに。
「…どうして…」
視界が滲んで、観覧車が霞む。
上を向いていられなくなって、俯いた。
そしてこらえ切れなくなった嗚咽を雨に掻き消してもらう。
頬を伝ったのは、雨かそれとも…
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