頭の悪い飲み物

朝起きて、眠気眼をこすって机に座る。

ボーッとしながらスマホを弄る。

しばらくそうしていると台所から自分を呼ぶ声がするので、ふらつきながらと声のする方へ向かう。


「はい、朝ごはん!」


いつも元気で笑顔が素敵な母さん。

母さんは毎朝僕に朝ごはんを作ってくれる。

仕事もあるのに、毎日笑顔でご飯を作っている。

1度気になってしんどくないのか、と聞いてみたことがあったが、その時母は


「ぜんぜん辛くないわよ!ご飯作るの楽しいし、なによりあんたのためだもの!」


それを聞いた時、少し泣きそうになったのは秘密である。


そんな母が、だ。


「…これ、なに…?」


「ん?これは、野菜をミキサーにかけた飲み物よ。」


朝ごはんとして手渡してきたのはどろどろした謎の液体。

色味もいいとは言えなければ、香りもなかなか独特な香りを発していた。


「体にいいらしいから作ってみたの!」


いや、いやいやいや、野菜を入れただけでこんなことにならないだろ、普通。


「え、と…なにいれたの…?」


恐る恐る聞くと、母はいつもの素敵な笑顔で答えた。


「えっとね、トマトと、ほうれん草と、ミカンと、リンゴと、いちごと、たまねぎと、しょうがと、ゆずと、ごぼうと、ねぎと、ドラゴンフルーツと、にんにくと、あとはね…」


それから暫くその内容を聞き流していたが、どう考えても明らかに何も考えずに野菜を放り込んだだけだった。


明らかに頭の悪いその液体。



味は、まぁ、うん、意外とイケた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る