溺愛の米

私は米が大好きだ、いや、むしろ愛してる。

ご飯じゃない、米が好きなのだ。


真っ白で艶のある、あの米が。


いままで大半の時間を割いて生活の糧のためせっせと働いてきた。そして得た金の大半は様々な米との出会いに消費されていった。


しかし、運命の出会いはまだ訪れていない。


今の主食は、生きるため仕方なしに購入した日本中の米から厳選したブランド米だ。

しかし、これは私の運命の相手ではないのだ。

私と米が出会うその時まで、私をこの世に留めてくれる要素の一つでしかない。


私は苦悩した。

もしかしたら運命の出会いは存在しないのかとさえ思った。


しかし、ある日思い立った。





米がないなら、作ればいいじゃない。





その日から、私の人生は変わった。


まずは職場に辞職届けを出した。

そして田舎に土地を買った。

なんとか気合いで宝くじを当て、資金を得た。

米作りのいろはを学び、そして毎日を米作りに費やした。


全ては、運命の出会いの為だった。



そして、あの日から10年。

私はようやく運命の出会いを果たした。



ようやくだ。

ようやく、私は運命の米に出会えた。


それからは、幸せ続きの毎日だった。


人としての運命の出会いにも恵まれ、そして子宝にも恵まれた。

愛しの米はブランド米として瞬く間に世間を騒がせ、大家族が生活に苦しまない程度には儲けている。


愛しい妻と可愛い子供達と、年に1度のキャンプ。

もちろん米は飯盒で炊く。

これもキャンプの醍醐味だ。



「おーい、そろそろ、出来合いだぞ〜。」

「「「「「はーい」」」」」



今日も変わらず、米は美味い。

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