白いファブリーズ

「白いファブリーズ」



カランカランカラン、と無駄に響くその音は、ことごとく運の悪い自分にとって、人生で聞くことはないだろうと思っていた、その音だった。


「お客様、おめでとうございます!

こちら、特賞の限定品ファブリーズ、一年分でございます!」


そうして少し恥ずかしい思いをしながら持ち帰った「限定品ファブリーズ1年分」と書かれているその箱は、少し重くて、どこか軽かった。


家に帰って包み紙を破り捨て、その箱を開ける。

その中身は、真っ白なデザインのフィルムに包まれた4本のファブリーズだった。


そのただただ白いその容器には、いつものフォントでただファブリーズと書かれているだけで、他にはなにも書かれていない。


そして一番肝心な、どんな香りなのかさえも書かれていない。


これは、無臭なのか…?

白いからそう考えるのが妥当であるが…いや、もしかしたら今流行りの奇を衒った商品かもしれない。


こうやって悩んでいても埒が明かない。

それに、福引きで特賞にされるほどの商品だ。

ハズレなわけが無い。


覚悟を決め、そのファブリーズを空に吹きかけた。



自分はとことん運が悪いと思い知ることが出来た、そんな出来事だった。

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