最悪な箱

【最悪な箱】



「くっそ、なんだよこれ。」


傘を片手に佇んでそう零した。


家の前に置かれている段ボール。

その中の小さな毛の塊は毛布の上で縮こまって震えている。

ひとつ、にゃあと鳴いてその目を開いた塊の黄色い吸い込まれそうな瞳に少し後ずさる。


段ボールにはご丁寧にこの塊の名前まで書かれている。そして「この子をよろしくお願いします」とも。


よちよちとこちらに向かってくるその塊は自らの可愛さ等を自覚しているのかいないのか。


その塊の隣にあった紙切れには動物病院での診断結果や予防接種、その他の処理等の記入がなされていた。どうやらこのまま飼うだけでいいようにしてあるようだ。



「くそっ…最悪だ…」


そう吐き捨てながらもその箱を抱え込んだ自分はお猫好しなのか、それともただの馬鹿なのか。


まずは濡れそぼった猫を乾かすことが先決だろうか。


まったく、最悪な箱を拾ってしまったもんだ。

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