第3話

家に上げた直後。

母親がおもむろに冷蔵庫を開けた。

「なに、勝手に冷蔵庫開けてるんですか!」

「ん?今日の晩御飯なに作ろうかなーと思って。でも、なんにも入ってないね」

「はい 、僕は、極力最低限のものしか買ってきませんので………ってそんなことはどうでもよくてですね、なぜ勝手に開ける」

母親は、俺の言葉に聞く耳を持たず、

「じゃあ、買い物行こっか」

「うん!いく!」

これは、チャンスなのでは、買い物に行かせて鍵を閉めてしまえば…

六花りっかはどうする ?」

「行かない」

「そう。っじゃ行こっか優薫ゆうか

「うん」

そして、母親と優薫と呼ばれた女の子は家を出ていった。

そこからは、沈黙の嵐だった。

なにせ、さっきのやりとりからして六花と呼ばれた少女が、俺のことを嫌っているのは明白なわけだし、それなのに俺が声を掛けるのもどうかと思うしね。

「…………………………」

「…………………………」

やばい、この沈黙が怖いよ。このあとどうなるのだよ。もう、この際だ。勉強というなの現実逃避をしよう。

そして、俺は、鞄の中から勉強用具をだす。

(そういえば、この問題あと少しで解き終わるところまで言っていたな)

俺は、集中する。

俺は、集中すると途端に周りのことが見えなくなる。

だから、俺の隣に六花という女の子がいたということにも、全く気づかなかったが、問題を解き終わって集中力が切れると、六花という女の子が隣にいたことに気づくのだ。

「っえ!いつからそこにいた」

「貴方が、その意味がわからない問題を解き出したところからです」

「あ、そう。……ごめんなにか用事でもあった。六花さん?」

「六花さんとかやめてください。気持ち悪いので」

「じゃあなんと呼べば」

「六花と呼んでください」

「わかりました」

「それと、どことなく敬語を使わないでください」

「えーと、わかった?」

「何故疑問系なのですか」

「なんとなく」

「そうですか。では、これからは、敬語を私に使わないでくださいね」

「わかった」

そして、また沈黙になるのだった。

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