驕っていたのは
「……なら結構だ。てめえは忍耐力が足りねえな。まあ今年でまだ一八年ぽっちしか生きてねえならそんなもんか。――私もこの町が、破壊されるような事は御免でね。折角いい所なのに。銀って赤猫に、私を狩ろうとやって来た赤嶺の常時帯刀者。その二人を一人でやっているような、常時帯刀者兼赤猫。幾ら安定している土地とは言え荒れるよ。空気がピリピリしてるのが分かる。まあ逆に言えば、そんなおっかない怪物が三人も
つまり今赤嶺さんは、あの赤猫と接触出来ないよう誘導されているという事になる。町の人々は勿論、彼女も人質みたいなものになっているという事か。
「勿論銀って人の方にも、赤嶺さんに向かわせないよう見張ってる。勘弁して欲しいよ久々の里帰りなのに……。あなたもどう出るか気になるでしょ? 一番合戦さんも突然のカミングアウトだし。全く地元民代表として頭が痛い」
「……代表?」
「そこはあなたに話す義理は無いかな。まあだから、新参者達に破壊されかねない故郷を
「何でお前にそんな事……」
「考えてない。か」
飛び出して来たもんね。
そう人狐は、知っているだろうにわざわざ言った。
「あはは。青いねえ。まあ青春と言い換えましょうか。クラスの女の子と上手くいかなくて、学校を飛び出して来るなんて。でもそれじゃあ困るんだよね。そんなぼーっとしてちゃあ、一番合戦さんが泣いちゃうよ。『
「気を遣われた覚えなんて無い」
思わず声を荒げた。
「おや。それはどうして?」
「あいつは嘘をついてたんだ。正体がバレないよう、自分が生き残る為に」
「まあ元は動物だからね。人間みたいに邪魔だからとか趣味だからで他を傷付けない代わりに、食べる為や生きる為なら何でもするよ。ていうかあの人、そんなに勝手? 元はと言えばそちらの所為でしょ?」
「それは当時の話で僕は……!」
言いかけてやめる。何だかすごく勝手な気がして。
確かに僕は直接の原因じゃない。でも、同じ鬼討で。
そういう悲劇を生まない為に、鬼討とはあるのだ。
当然幕府も悪い。でも、幕府だけが悪じゃない。だっていたじゃないか。誰しも無理だと思っていても、たった一人で是正を訴え続けた鬼討が。
その皺寄せを受け、何の罪も無い猫が死んだ。
大昔の事だからって、無かった事なんて出来やしない。風化とは軽んじられていくだけで、何の解決にもなりはしない。かの剣豪、枝野
これは悲劇ではなく、罰なのだ。知っていながらも手をこまねいて、幕府の暴走をいつまでも止められなかった鬼討達への。
でもだからって復讐を認める事も、騙した事を許す気にもなれない。
君はまだ八回も長い人生があるかもしれないけれど、僕にとってはこの一度きりで、半百鬼となったこの人生は、死んだってやり直せないんだよ。
「分かり合えないものだよねえ。人間と百鬼とは」
人狐は言った。
しみじみとしているがどこか軽薄で、からかっているのか、本心で言っているのかは分からなかった。
騙す奴の
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