分解系女子 転校生目線
「っっっっ!!」
声にならない声をだしてしまった。これはどういう状況だろう?俺は今日転校初日で急いで学校に向かっていたはずだ。そして曲がり角で誰かにぶつかった。そこまではまだいい。問題はそのあとだ。ぶつかった女の子の首が取れた。なんてことだ。転校初日に殺人を犯してしまうなんてついてない。とりあえず隠蔽でもしなければ、とまわらない頭がおかしな思考をする。
「あの、もしよければ、私の首元の位置にもどしてもらってもいいかな?一人じゃうまくもどせなくて…」
落ちていた首から声が出る。生きていたんだ、よかった、とまわらない思考のまま首を元の位置にもどす。女の子はありがとうと礼を言うとそのままどこかに走り去ってしまった。
俺は変態ではないが、女子高生の制服を調べることが好きだ。だからぶつかった子の制服は俺が転校した学校の制服だということが分かった。学年色も俺と同じ赤だったから同じ学年か。同じクラスにならないよう祈りながら俺は学校に向かった。
あんな子がいる学校だ。クラスで居場所を作るにはインパクトが必要だろう。絶対。あの女の子のように俺は首が取れたりしないので俺は自己紹介で差をつけよう。そう思いながら下を向いたとき靴紐の先が見えた。よし、自己紹介でアグレットと名乗ろう。首が取れる女の子がいるんだ。俺がアグレットと名乗ったくらいでクラスメイトに引かれたりはしないだろう。
「はーい、みんなー今日は転校生を紹介するぞー。」
担任のあとをついて教室に入ると教室はとても静かになっていた。クラスメイトの視線が集まる中、俺はこわばった声でこう言った。
「はじめまして、遠くからきました。アグレットです。これからよろしくお願いします。」
言えた、と思いクラスメイトの反応を見るとみんな引きつった笑いをしていた。なんでだよ。教師に目を向けると、ちゃんと名前を言えと目で訴えられる。
「嘘です。アグレットじゃないです。佐藤です。」
そう言ったときにはもう遅かったのかもしれない。クラスメイトは俺のことを心底引いた目で見ていた。クラスメイトの引いた目にさらされている俺に教師から席に着けと助け船を出された。助かった。そう思い席に着いたところで隣の女の子からよろしくね、と声をかけられる。こんな俺に声をかけてくれるなんてなんて優しい子なんだ。そんなことを思いながらよろしく、と返事をしつつ声をかけてくれたこの方をいたとき俺は思わず目を見開いてしまった。
なんと言うことだろう。今朝ぶつかった子が隣に座っていたのだ。
驚きのあまり二度見した。どう見ても今朝の子だ。この子がいるクラスなのに転校生の適当なジョークは受け入れられないのか。なんて理不尽。考えながらどうしても隣に座っている今朝の子をちらちら見てしまう。教師が転校生の紹介も終わり他の話もしている中、彼女はしびれを切らしたようにこう聞いてきた。
「あの、さっきからこっち見てるけど、私に何かついてるかな?」
ちらちら見ていたことがばれていた。困った。思わず言葉にならない言葉をもごもごと発してしまう。彼女はHRのあとにもう一回聞くね、と言って教師の方を向いてしまった。どうしよう。俺はこのあと何を話そうか考えることに必死で教師の話なんて耳に入らなかった。
分解系女子 和田 @amatooooo
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