分解系女子

和田

分解系女子

-7時40分-


「きゃー、遅刻ー遅刻ー!!」



 私はひたすら同じ場所を走っていた。女の子なら一度は夢見る運命の人。その人との角でぶつかるためひたすらに走っている。ターゲットは決まってる。今日転校してくる転校生だ。転校生の登校ルートも時間も調査済みの私に死角はない。転校生とぶつかる資格しかない。


「きゃー、遅刻ー!ちこっ。」


 どったーん☆ぽーん☆ごろごろ☆

 

 少女漫画特有のかわいい効果音が聞こえた。遂に、道の角で人とぶつかったのだ。

目の前には転校生(と思われる)男子が倒れている、はずだった。が、目の前にあったのは、自分のパンツだった。なるほど首が取れちゃったのか。


「っっっっ!!」


 声にならない声が聞こえた。それは頭上からだった。上を向こうとするが首から下がないのでせめて、目線だけでも頭上に送ってみる。そこには転校生(と思われる人)がわなわなと震えながらある場所を凝視していた。


 ちょうど私の首の辺りか。


 これはまさか、


 私に一目惚れしたのではないだろうか!!(確信)


 多分そうだ。というかそれ以外思いつかない。私の首の形に惚れたんだ。私の首の形は国宝物だからね。ほんとうにこれは誇れる。


 ってそうじゃない。早く首を元の位置に戻してもらわなければ。


 私は男子が好きそう(私調べ)な控えめな女の子を装ってこう言った。


「あの、もしよければ、私の首元の位置にもどしてもらってもいいかな?一人じゃうまくもどせなくて…」


 こうして私たちは出会った。



-8時30分-


 完璧だ。転校生の席は私の隣になった。まだ転校生も先生も来てないが確定した。だって隣に空き席があるし。


 朝早く来た私は席を変わってもらった。いちばん前の席からいちばん後ろの窓際の席になった。いや、この際位置はどうでもいい。転校生の隣の席になったということが重要なのだ。あと余談ではあるが、元この席だった女子は私が優しく脅すと怯えながら快く席を替わってくれた。やったね。



-8時45分-


「はーい、みんなー今日は転校生を紹介するぞー。」


 いつもは全く聞いてないみんなも興味があるのか先生の話を静かに聞いている。というか、先生の台詞凄いテンプレート感すごいね。


 私は心の中でほくそ笑んだ。だってみんなより一足先に転校生に会ったから。しかも、首を優しく戻してもらうというオプションつき。おっ、転校生が入ってきた。


「はじめまして、遠くからきました。アグレットです。これからよろしくお願いします。」


 私はボケ要員なのでツッコミはしないつもりだったので転校生の挨拶に特に異常は無し。普通の人みたいにアグレットって何っ!?ほどけにくそう!!みたいな反応はしないのだ。


「嘘です。アグレットじゃないです。佐藤です。」


 クラスメイトは適当すぎるボケにドン引きしてるみたい。でも好都合。だって私だけ運命の人だからね。そして先生に言われて転校生は私の隣の席に着いた。よろしくね、と言うと目を大きく見開い驚いてる。それはそうだろうな。だって朝惚れた女の子が隣にいるんだもん。


 転校生がこちらをちらちら見てくる。やっぱりこんな美少女の隣じゃ気になっちゃうよね。ごめんね。なにも反応しないのもどうかだからとりあえず聞いておくかな。


「あの、さっきからこっち見てるけど、私に何かついてるかな?」


 ここまで言って思った。もしかしてもしなくても、転校生は私の首の形に惚れてしまったのではないだろうか。私自身ではなくあのすばらしい首の形に。これはどうにかしなければ。転校生はもごもごと何か言おうとしているが言葉になっていない。あとでちゃんと聞こう、そう思いながら残りの先生の話を聞き流した。

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