第5話 初見、他妖精。

 目が覚めたら木の上で仰向いて寝てた。

 寝ぼけて猫かきしていたけど飛んでない。ほっ。落ちなくて良かった。

 そーっと起き上がってしっかり爪を立てて枝を移動する。今日は何しようかな。何も命令されないっていい気分。

 とりあえずお腹すいたからご飯。目についた虫を猫パンチでしゅしゅっとゲット。簡単に食べられる虫いいわー。見た目グロいけど味はチーズバーガー。カブトムシはチーズバーガーだった。ごちそうさまでした。

 小腹は満たしたけどできれば初の鳥肉を所望。それか、蛙。鳥っぽいって聞いたの。ワニも鳥っぽいって聞いたけど、ワニは大物過ぎる。いつかのジャイアントキリングね。楽しみにしとく。じゅるり。

 私は獲物を探すため移動を開始する。木から壁へ、羽ばたきプラス猫かきで移動。まだおぼつかないけど昨日のよちよちよりはスムーズ。…スムーズ。


 空を泳ぎ、壁を小走りに移動。どこかに向かって。どこに向かって?知らない。ここがどこかも知らないもの。美味しそうな匂いがする方、かな。勘だけど。

 つまり、鳥を探して三千里、だ。見つかるかはわからない。でも鳥肉を食べたいのでどこまでも行く。他にすることもないよ。

 時々飛ぶ練習もする。

 小腹が減ったらその辺の虫をつまむ。アリはクッキーみたいだった。おやつ味。そういえば水を飲んでない。猫ってエジプトが起源だっけ。たくさんは要らないけど全然飲まないのはちょっと心配だ。

 ふんふんと空気の匂いを嗅ぐ。水っぽい匂いはどっちかな。なんとなくあっちかなと見当をつけて、適当に歩いた。

 誰かが呼んでる気がする。………人間じゃなければ良いな。


 しばらく歩いて壁を降りる。崩れたところはないからジャンプして降りた。二回伸身宙返り捻り降り!ちょっとこけた。でも平気、猫だもの。

 ぴぴっと足を振って、更に歩くとちょろりと流れる僅かな水があった。少ないけどこのくらいのが飲みやすいよ。最初にあった水溜まりなんか大きすぎて危ないよ。水泳はノーサンキューなの。

 舌を丸めて水を掬うようにして飲む。うーん、美味しい。味は前世で飲んだ水と同じだけど湧き水みたい。新鮮で美味しい。

「当然よ、わたくしの水なのだから!」

「………あにゃた誰」

 突然の声にまばたきした。目の前に浮かぶ小さな女の子は胸を張っている。

 人間は嫌い。ちょっと警戒する。でもこの子人型だけど下半身が魚だ。そして全体が薄い青色。私の顔に身長が納まる小さい体。つまり人間じゃない。

「わたくしは水の妖精だから!あなたが水を飲みたがっていたのだから呼んだのだから!」

「…そうにゃの?ありがと」

「水を与えしはわたくしの勤めなのだから!」

 お礼を言うと嬉しそうに頬を紅潮させますます胸を張る。あ、ひっくり返った。………何事もなかったようにまた胸を張って空中に留まってる。羽もないのに浮かぶなんて器用だね。

 そういえば私の言葉、にゃーじゃない。日本語?

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